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降圧剤(レニン・アンジオテンシン抑制薬)によるクレアチニン上昇について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ARBとクレアチニン.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
血圧の薬による腎機能低下のリスクについての論文です。

ACE阻害剤とARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、
カルシウム拮抗薬と共に、
最も広く使用されている血圧降下剤です。

カルシウム拮抗薬と比較すると、
腎臓保護作用などの臓器保護作用があることが、
ACE阻害剤やARBの利点であると考えられています。
こうした薬の主な作用は、
アンジオテンシンⅡという物質の働きを抑制することで、
アンジオテンシンⅡは腎臓から出る輸出細動脈を収縮させて、
腎臓の糸球体の圧力を上げ、
それが高血圧による腎機能低下の、
主な原因だと考えられているからです。

ACE阻害剤やARBを使用することにより、
輸出細動脈が拡張するので糸球体の内圧が低下し、
高血圧による腎機能の低下を予防することが期待出来るのです。

ところが…

ACE阻害剤やARBの使用開始後に、
腎機能が比較的急激に低下することがあることが知られています。

これは薬剤の臨床試験の時には、
ごく僅かな頻度でしかなかった有害事象でしたが、
実際の臨床で薬を使うようになると、
その報告は急増して大きな問題となったのです。

何故、腎保護作用のある薬で、
腎臓が悪くなるようなことが起こるのでしょうか?

一応次のように考えられています。

高齢者などで見た目より実際には腎機能が低下していて、
腎臓の糸球体の血流量が低下しているようなケースでは、
輸出細動脈が広がることにより、
更に腎血流が低下して、
血流低下による腎障害を来しやすくなるのです。
こうした薬の腎保護作用は、
高血圧で糸球体の圧力が高いことが前提になっているのですが、
実臨床では意外にそうでないケースがある、
ということかも知れません。

更には利尿剤を併用していて脱水があったり、
それ自体腎血流低下作用のある消炎鎮痛剤
(ロキソニンなどの痛み止めなど)を使用していると、
相乗効果でそのリスクが高まると想定されます。

そこで現行のイギリスのガイドラインにおいては、
ACE阻害剤やARBの使用開始後に、
腎機能の指標であるクレアチニンの数値が、
30%以上増加した場合には、
薬の中止を検討するべき、
という方針が示されています。

こうした方針があると、
クレアチニンが30%上がらなければ、
少し上がっても問題はないようにも読めますが、
その根拠はそれほど明確なものではありません。

そこで今回の研究では、
イギリスの大規模な医療データを活用して、
ACE阻害剤もしくはARBの使用後、
2か月以内に測定されたクレアチニン値の変化と、
その後の腎障害の進行などとの関連を検証しています。

対象となっているのは、
ACE阻害剤もしくはARBを開始した患者、
トータル122363名で、
このうち1.7%に当たる2078名では、
血液のクレアチニン値が開始後に30%以上増加していました。
30%以上クレアチニンが上昇するのは、
女性、高齢者、心血管疾患罹患者、
非ステロイド系消炎鎮痛剤やループ利尿剤、
カリウム保持性の利尿剤(スピロノラクトンなど)の使用者に、
多く認められました。

そして、クレアチニン値が30%以上増加した患者は、
そうでない患者と比較して、
末期腎不全になるリスクが3.43倍(95%CI;2.40から4.91)、
心筋梗塞になるリスクが1.46倍(95%CI;1.16から1.84)、
心不全になるリスクが1.37倍(95%CI;1.14から1.65)、
総死亡のリスクが1.84倍(95%CI;1.65から2.05)、
それぞれ有意に増加していました。

ただ、クレアチニンの増加率を、
もう少し細かく検証すると、
末期腎不全になるリスクは、
クレアチニンの増加が10%未満と比較した場合に、
10から19%の増加でも1.73倍(95%CI;1.41から2.13)、
20から29%の増加でも2.58倍(95%CI;1.87から3.56)、
と増加していて、
総死亡のリスクも同様に、
10から19%の増加でも1.15倍(95%CI;1.09から1.22)、
20から29%の増加でも1.35倍(95%CI;1.23から1.49)、
と有意に増加が認められました。

つまり、
クレアチニン濃度が使用前の30%増加で線引きをすることには、
一定の意味はあるのですが、
実際にはそれより軽度の増加でも、
腎不全や総死亡のリスクには差が付いていて、
軽度の増加であれば問題ない、
というようにも言い切れません。

いずれにしても、
ACE阻害剤やARBを使用する際には、
使用開始後2か月以内に、
一度は必ずクレアチニンを測定し、
10%を超える上昇傾向が認められた場合には、
薬剤の中止を含めた検証が、
必要だと考えられます。
特に高齢の女性であったり、
消炎鎮痛剤を継続的に使用していたり、
利尿剤と併用している患者さんでは、
よりリスクが高いと考えて、
慎重に使用する必要があります。

一時期には、
ACE阻害剤やARBの使用開始後に、
一時的に上昇するクレアチニンは問題ではない、
というような見解が、
専門の先生から示されていたことが、
あったようにも記憶しているのですが、
今回の検証などを見る限り、
そうした考え方は危険であるように思われます。

ACE阻害剤やARB(特にACE阻害剤)が、
血圧のコントロールや心疾患の管理において、
非常に有用性の高い薬剤であることは間違いがありませんが、
以前想定していたよりその腎機能に与える影響は大きく、
腎機能が低下した場合の予後に与える影響も大きいので、
その点には慎重な判断が必要なのだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

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もろみ

はじめましてこんばんは。先生は原発性アルドステロン症にお詳しいですか?
最近、AVSを受けて結果が出なかったと言う残念な結果になったばかりです。
by もろみ (2017-03-24 20:32) 

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