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NODA・MAP「足跡姫」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
足跡姫.jpg
NODA・MAPの第21回公演として、
亡くなった中村勘三郎に捧げると明記した、
江戸時代を舞台にした作品が今上演されています。

と言ってもいつもの野田ワールドであることに違いはなく、
江戸時代が舞台とは言っても、
衣装は着物と洋服のコラボみたいなものですし、
言葉も特別時代掛かっている、という訳でもありません。
最近の野田さんの作品はいつもそうですが、
政治色の強いテーマを除けば、
そのスタイルはかつての遊眠社時代に回帰している、
という感じがあります。

ラストになってみると、
なるほど、これだから勘三郎へのオマージュなのか、
と思われるところはあり、
かなり直接的にそれを示す台詞もあります。
また初代勘三郎が生きた時代を、
物語に取り込もうと工夫をされた部分が、
随所に感じられます。
ただ、それでも結局は政治的アジテーションが顔をもたげる辺りが、
良くも悪くも今の野田さんの芝居ということなのだと思います。

以下ネタバレを含む感想です。

作品は初代勘三郎が猿若と名乗っていて、
猿若舞を江戸城で披露したという記録があり、
それが丁度由井正雪の乱が起こった時と、
ほぼ一致していた、
という史実を元にしています。

妻夫木聡さんが演じるサルワカは、
宮沢りえさんが演じる女歌舞伎の役者の弟で、
かつての遊眠社芝居の主役のように、
夢想と妄想に生きる若者なのですが、
ストリップまがいの芸能であった女歌舞伎が、
姉に「足跡姫」という一種の芸能女神が取り憑いて、
モダンな藝術へと姿を変えます。

時は由井正雪の乱が鎮圧された直後で、
盗み出された古田新太さんが演じる由井正雪の死体が、
何故か息を吹き返して、
サルワカの幽霊小説家(ゴーストライター)として、
歌舞伎台本を世に送り出します。

彼らの歌舞伎は一世を風靡して、
遂に江戸城に招かれ、
将軍様の前で歌舞伎を披露するまでになるのですが、
由井正雪の乱の残党が、
それを隠れ蓑にして城内に攻め入り、
御簾の奥にいる将軍を刺すと、
それは実は由井正雪で、
数年前に将軍は由井正雪に刺されて死に、
由井正雪がその身代わりを務めていたことが明らかになります。

足跡姫に取り憑かれた女性は死に、
最後にサルワカは、
自分が初代の歌舞伎役者となって、
400年後まで芸の命を伝えることを誓います。

藝術は権力にどう立ち向かうべきか、
という辺りが作品の主なテーマで、
こうしたテーマは「贋作罪と罰」でもありましたし、
遊眠社時代の多くの作品も、
今から思うとそうしたテーマが隠れていた、
というような気がします。
御簾内の権力者を藝術の刀が差し貫くと、
それはかつてのテロリストが成り代わった亡霊だった、
というのも、
野田戯曲のクライマックスに、
これまでにも何度か登場した印象的な場面です。

実際に今の野田さんは、
権力者の前で芸能を演じるような立場になっているのですから、
野田さんの今後の実際の活動を、
今回の作品は暗示しているのかも知れません。

個人的にはあまり賛同はしませんが、
興味深くは感じます。

その一方で勘三郎の芸の原点に何があったのか、
という歴史ドラマとしての趣向は、
最後の長台詞でやや言い訳的に語られるものの、
あまり作品の中で大きな位置を占めていたようには思いませんでした。

キャストは核となる主役3人は、
皆生き生きとして演じていて、
まずは及第点であったように思います。

演出としては歌舞伎の囃子方を招いて、
効果音を時々演奏していましたが、
あまり効果的に使われてはいませんでした。
歌舞伎界から中村扇雀さんが、
伊達の十役人という、
「伊達の十役」をパロッて、
1人で10人の役人を演じさせるという趣向がありましたが、
浅野和之さん当たりが演じたら、
如何にも楽しかったろうという感じで、
あまり面白くはなっていませんでした。
こうした感じでは、
「ああ、歌舞伎役者は詰まらないな」
というような印象しか残らないので、
扇雀さんにはあまりこうした客演は、
して欲しくなかったな、
というのが正直なところです。
正統派の女形としては、
なかなかの部分のある役者さんなのですから、
歌舞伎の道に精進して欲しいと思いました。

最近のNODA・MAPとしては水準点の作品で、
政治的なテーマなんてなくていいのに、
というのが一貫した僕の感想ですが、
比較的まとまりには難が少なく、
観やすい作品には仕上がっていたように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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