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生活改善のテロミアへの効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
テロミラーゼと生活改善効果.jpg
2013年のLancet Oncology誌に掲載された、
生活改善のテロミアに対する効果についての論文です。

テロミアというのは、
複製されるDNAの両端にある、
染色体の末端を保護するような構造です。

こちらをご覧下さい。
テロメアの構造の図.jpg
テロミアの構造を示した画像です。

左上にある青いXの形をしている構造が、
DNAの折り畳まれた構造物である染色体です。

この染色体の両端に赤く図示されているのが、
テロミアという構造で、
染色体という紐の両端に付いたキャップのように見えます。

これをほぐしてみると、
そこにはTTAGGGという6個の塩基が、
繰り返しの配列を作っています。
その先端にはループ状の構造があり、
テロミラーゼという、
テロミアの繰り返しを合成する酵素が存在しています。

細胞は分裂を繰り返していて、
その時に遺伝情報であるDNAは複製されます。

ただ、その複製の時に、
完全に全てのDNAが複製はされず、
テロミアの部分のみが少し短縮します。

従って、分裂を繰り返す毎に、
テロミアは短縮してゆき、
テロミアの構造がなくなって、
複製されるDNAがむき出しになると、
もうその細胞は分裂が出来なくなります。

これがその細胞の一種の寿命と考えられます。

ただ、出生時のテロミアの長さはおおよそ11000塩基対あり、
90歳での平均のテロミアの長さが6000塩基対くらいですから、
通常の人間の寿命の中で、
細胞が分裂不能になる、
という事態は通常は起こらないのです。

テロミアの先端にはテロミラーゼという、
テロミアを合成して伸ばすことの出来る酵素が存在しているのですが、
それが機能しているのは、
生殖細胞や血液の細胞の元になる造血幹細胞など、
一部の細胞のみで、
多くの体の細胞では、
テロミアは短縮することはあっても、
再び伸びることはありません。

さて、そのメカニズムには不明の点がありますが、
テロミアが異常に短縮するという病態があり、
再生不良性貧血などの造血系の異常や、
肺線維症、肝硬変などにおいて、
遺伝子異常に伴う、
血液細胞におけるテロミアの短縮が認められます。
その多くにおいて、
テロミアに関連する遺伝子の変異が確認されています。

このようにまだ不明の点は多くありますが、
テロミアの長さと細胞の老化との間に、
一定の関連のあることは確かです。

そして、メカニズムは不明ですが、
ストレスでテロミア長がより短縮しているなど、
環境要因によってテロミア長の短縮が見られることもまた事実です。

それでは、
一般的な生活改善の試みにより、
テロミア長に変化が認められるのでしょうか?

今回の研究はその点を少数例ではありますが、
厳密な方法で検証したものです。

対象となっているのは、
平均年齢が60歳くらいで、
低リスクの前立腺癌と診断され、
治療はせずに経過観察のみの臨床試験に参加している男性で、
このうちの10名は4項目からなる生活改善プログラムを施行し、
25名はコントロールとして経過観察のみを行って、
5年後のテロミアの長さを測定しています。

生活改善のプログラムは、
脂肪の比率を減らし、植物性の油脂や食物繊維を増やした食事、
1日30分のウォーキングの有酸素運動、
ヨガを主体としたリラックスを目標するストレッチを毎日60分、
そして週1回は専門家による運動やストレス管理のミーティングが行われる、
というような内容です。

その結果、
単一コピー遺伝子との割合で表示されたテロミア長は、
生活改善群では0.06(95%CI:0.02から0.12)
コントロールと比較して有意に増加していました。

これをもって生活改善で細胞寿命が延長する、
というようにも言い切れないのですが、
テロミアの短縮のような、
あまり生活改善などとは結び付かないような指標が、
数年間の生活改善によって変化した、
という結果は興味深く、
今後のデータの蓄積に期待をしたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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