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脳出血急性期の血圧コントロール目標(2016年の介入試験結果) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
脳出血後の血圧コントロール.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
脳出血の急性期の血圧コントロールについての論文です。

脳出血は非常に深刻な影響を身体に与える、
いわゆる脳卒中の一種で、
高血圧などの要因により脳内の血管が破綻し、
脳内に出血の起こる病気です。

この脳内出血の急性期には、
血圧をどのくらいにコントロールすることが適切なのでしょうか?

実はこれは正確には分かっていません。

高血圧は脳内出血の原因でもありますから、
血圧を正常にすることが、
再発を予防するには重要と考えられます。
また、脳内の出血が起こって、
血の塊である血腫が出来ていますから、
それを大きくしないためにも、
血圧を下げることが重要であると思われます。

その一方で、
多くの降圧剤は脳の血管を拡張させるような作用がありますから、
止血がまだ完成していない段階で血管が広がり、
血流が増加することが、
脳内の圧力である脳圧の亢進に繋がり、
患者さんの予後を悪化させるという危惧があります。

また、降圧により逆に脳の血流が低下することも想定され、
そうなると脳の機能低下が進行するという危惧もまた生じます。

概ね降圧剤で血圧を下げた方が、
患者さんの予後は良好であったという報告が、
後ろ向きのデータとしては複数存在しているのですが、
それではどのような薬を使用して、
どのくらいのレベルまで血圧を下げることが、
最も患者さんの予後に良い影響を与えるのか、
というような具体的な事項については、
精度の高いデータは殆ど存在していないのが実際です。

概ね現行のガイドラインにおいては、
収縮期血圧が180mmHg未満を目標にして、
降圧治療を行なうと記載がされていますが、
その根拠もそれほど明確なものではないのです。

2013年のNew England…誌に、
INTERACT2という臨床試験の結果が発表されています。

これはこの問題を検証した数少ない厳密な介入試験で、
症状出現後6時間以内の脳内出血の患者さんをくじ引きで2群に分け、
一方はガイドライン通りの収縮期血圧180mmHg未満を目標とした降圧を行い、
もう一方は140mmHg未満を目標とした降圧を行なって、
その予後を比較検証したものです。
その結果はより低い目標の降圧により、
生命予後には良い傾向が認められましたが、
統計的に有意ではない、というものでした。

この結果を受けて2015年版の日本のガイドラインでは、
「収縮期血圧140未満を目標として降圧を行っても良い」
という改訂を行っていますが、
強い推奨という扱いにはなっていません。

今回の研究は上記のものとは少しデザインを変え、
より多数例でのこの問題の検証を行ったものです。

対象は血腫量60cm3未満の脳内出血を起こした、
発症早期のGCSスコアが5以上の患者さん1000例を、
くじ引きで500例ずつの2群に分け、
一方は収縮期血圧を110から139mmHgとする強化コントロールを行い、
もう一方は140から179mmHgとする標準的なコントロールを行なって、
登録後3ヶ月の時点での予後を比較しています。
治療は発症から4.5時間以内として、
ニカルジピンの静注を行なっています。

その結果…

試験は当初より早く終了となりました。
中間解析の結果として、
強化コントロール群と通常コントロール群との間で、
明確は差はなく、
当初決められた基準に達しないことが明らかとなったからです。
腎機能低下などの有害事象については、
強化コントロールでより多く認められました。

現状では脳出血の発症早期において、
血圧値で140未満を目指すようなコントロールが、
患者さんの予後に良い影響を与えるという根拠は、
現状はないと考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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