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食後血糖管理の目標値について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日は食後血糖の話です。

糖尿病は血液のブドウ糖濃度である血糖値が、
通常より高い状態のことです。

2型糖尿病の場合、
まず食後の血糖値が上昇し、
そのピークが遅れると共にその変動幅が拡大、
その時点では食前血糖は正常範囲なのですが、
その後病状の進行と共に、
食前血糖も上昇する、
というのが通常の経過です。

血糖値は簡単に測定が可能で、
糖尿病の管理にとって、
最も重要な指標であることは間違いがありません。

ただ、その数値は食前後などで、
常に変動していて、
更にはストレスなどの外部環境の変動によっても、
その数値は変動するものなので、
どのような条件で血糖値を測定することが、
最も適格に糖尿病の状態の指標となるのか、
という点については、
まだ議論の余地を残しています。

現在血糖コントロールの状態を把握する上で、
最も広く使用されている検査は、
HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)です。

この数値は大体2か月くらいの平均の血糖値を反映している、
というように考えられ、
血糖値より正確な、
血糖コントロールの指標として使用されています。

しかし、
稀にHbA1cが血糖を正確に反映していないように、
思われるケースもあります。
また、この数値のみで糖尿病の状態を判断していると、
動脈硬化性の病気などは、
必ずしも充分に予防出来ない、
というような欠点もあります。

そんな訳でHbA1cに追加するべき指標として、
食後血糖値を重視するという見解があります。

まだ食前血糖が正常な状態であっても、
食後血糖が高値であると、
心筋梗塞のような心血管疾患は、
増加するという報告があります。

血糖の急激な上昇により、
酸化ストレスによる血管内皮障害が生じることが、
その要因として想定されています。

それでは食後血糖はどのくらいから異常と考え、
治療するとすれば、
どのくらいを目標として考えるべきでしょうか?

この点については、
国際糖尿病連合(IDF; international diabetes federation)が、
2007年に「食後血糖値の管理に関するガイドライン」を発表し、
その改訂版が2011年に公開されています。
こちらです。
IDF食後血糖ガイドライン.jpg
http://www.idf.org/2011-guideline-management-postmeal-glucose-diabetes

これによると、
正常の耐糖能を持っている人では、
血糖値は食事に反応して上昇するが、
そのピークは140mg/dLを超えることは殆どなく、
一般的には食後2から3時間で食前値に戻るとされ、
このため、
食後1から2時間後の血糖値が、
140mg/dLを上回る場合を、
食後高血糖と定義しています。

そして、
この食後高血糖が認められた場合には、
食後1から2時間後の血糖値を、
160mg/dL以下とすることを目標として、
治療を行なうとされています。

ただ、現時点でこの食後高血糖のみを改善することにより、
心血管疾患のリスクが減少するなど、
明確な効果が臨床試験などで実証されたことは、
これまでに殆どありません。

そこでアメリカ糖尿病学会(ADA)の最新のガイドラインでは、
次のような記載になっています。
ADAの血糖のコントロール目標値の図.jpg
これはHbA1cで7%を切ることが目標となり、
そのためには食前血糖を80から130mg/dLとすることを目標とするのですが、
その目標に達していても、
HbA1cが目標に達しない場合に限って、
食後1から2時間の血糖を、
180mg/dL未満とすることを目標とする、
という主張になっています。

つまり、敢くまで食後血糖は、
補足的な意味しか持たないという判断です。

要するに、理論的には食後高血糖は、
単独でも動脈硬化のリスクになる可能性があり、
そうしたことを示唆する疫学データもあるのですが、
その一方で食後高血糖の治療効果は、
臨床的には明確に示されてはいないのです。

食後高血糖の治療には、
糖尿病治療薬の多くが一定の有効性がありますが、
同時に食前血糖も低下させるので、
低血糖などのリスクが生じます。
そのため純粋な食後血糖の改善のためには、
食後の運動や、
GI値の低い食事、
低炭水化物食、
副食を先に取り主食を後にする、
というような生活上の工夫の方が、
より有用であると考えられます。

食後血糖の明確な基準は、
日本のガイドラインでは定められておらず、
IDFのガイドラインが引用されるに留まっていますが、
その真の意味での意義はまだ不明の点が多く、
今後の検証を待ちたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

モカ

石原先生こんにちは。

今回も興味深く拝読しました。
私もHbA1cは正常なのですが、食後血糖値が高いので、ご指摘のように気をつけています。
空腹時血糖やHbA1cが正常だからといって安心出来ませんよね。
by モカ (2016-07-27 13:45) 

fujiki

モカさんへ
いつもお読み頂きありがとうございます。
食後血糖の意義については、
まだ定まっているとまでは言えないようです。
ただ、HbA1cだけでは不十分であることも、
また事実だと思います。
by fujiki (2016-07-28 07:50) 

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