So-net無料ブログ作成
検索選択

ミナモザ「彼らの敵」(2016年KAAT版) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
minamoza.jpg
ミナモザの「彼らの敵」が、
今神奈川芸術劇場大スタジオで上演されています。
昨年駒場アゴラ劇場で再演された作品の、
東京では3演目の上演ということになります。

僕は初演は観ていなくて、
昨年のアゴラ劇場の再演の舞台で初めて観たのですが、
鳥肌の立つような感銘を受けました。

その戯曲の奥の深さと鋭さ、
その世界を具現した6人の役者の見事な演技とアンサンブルに、
文字通り魂を鷲掴みにされたのです。

その時の感想がこちらになります。
http://blog.so-net.ne.jp/rokushin/2015-08-01

今回の上演は昨年と同一キャストによるもので、
舞台が中劇場規模の神奈川芸術劇場であることに、
ちょっと違和感を覚えたものの、
とても楽しみにして出掛けました。

結果としては今回の上演も、
非常に純度の高い素晴らしいもので、
この戯曲が小劇場の演劇史に残る、
素晴らしい傑作であることを再認識するとともに、
唯一無二とも思えるような、
素晴らしいキャストのアンサンブルにも感銘を受けました。

ただ、会場が大きくなったにも関わらず、
演出が全く昨年のアゴラ劇場と同じであったので、
空間に隙間風を感じるような舞台になったことと、
キャストの皆さんが思い入れがあり過ぎて、
全体に「意味のある間」が多すぎ、
不必要に間延びする場面が散見されたことが残念に感じました。

今回の会場は高さがある空間なのに、
床に描かれた大きな円など、
非常に二次元的な演出で、
ダイナミズムがありませんでしたし、
役者さんの移動の導線が長すぎて、
段取りにも支障が生じていました。

たとえば喫茶店の場面があるのですが、
狭い喫茶店のイメージを、
椅子と机で出しているのに、
店に入ってくるのを袖から長い距離歩いて来るので、
非常に間延びして不自然な感じになっています。
舞台上の長い距離を歩くことで、
「広大な空間や時間」などの、
ある種の意味が生じてしまうので、
こうしたところは、
もっと大きな空間なりの、
人の出入りを考えて欲しかったと思いました。

水に映った月を思わせて、
ある種の結界のようでもある床の円は、
面白い発想ではあるのですが、
大きな空間では不似合いで、
平面的な印象をより強くしてしまっています。
ここは蜷川演出のように、
背後のホリゾントに大きな月を出しても、
悪くなかったように思いました。

キャストは皆素晴らしかったと思います。
主人公の屈折を「不器用な迫力」で演じた、
劇団チョコレートケーキの西尾友樹さんも良かったですし、
嫌らしい雑誌編集者を演じた大原研二さんも、
主人公より世慣れした同級生を演じた山森大輔さんも良く、
何より作者の分身のように主人公を詰問し追い詰める、
コケティッシュな小悪魔のような菊池佳南さんが抜群です。
主人公を侮蔑するように見つめるその表情や、
ハッとして振り返るその横顔などを、
見ているだけでもう、
既に元は取ったような思いがします。

ただ、今回は全体に力みと過剰な思い入れも感じられました。

原作の戯曲も今回買って読んでみたのですが、
観劇するより印象はもっとサラッとしています。
特に菊池さんが主人公を追い詰めるところなどは、
意外に普通の会話として描かれているのですが、
実際の舞台では、
ある種デモーニッシュな応酬、
かつての今村昌平映画のような言葉のバトルになっています。
この辺りに原作を膨らませた今回のキャストの技量があり、
作品のカラーがあると思うのですが、
今回は菊池さんの身体に力みが見え、
やや底の見えたような感じがありました。
もう少しサラッとやっても良かったと思います。

嫌らしい編集者を演じた大原さんも、
抜群の芝居なのですが、
今回は間合いが長すぎて、
そこの演技に意味を付けてしまうので、
不必要に芝居が長くなっているのが残念に感じました。
この辺りは、
役者さんを上手くセーブ仕切れていない、
演出の責任であるように思いました。

戯曲は本として読み返しても素晴らしいと思います。
最後の「もう誰も殺さない」というのは、
ちょっと唐突な感じがするのと、
主人公を追い詰めた女性が、
最後に主人公にエールを送るのが、
やや甘ったるい感じがするのですが、
これは捉え方にもよるのかな、
というようにも思います。
タブロイド誌のカメラマンとしての日常と、
パキスタンの人質生活、
その後のメディアとの対峙などを、
交錯させる構造が素晴らしく、
主人公をフリーライターの女性に追い詰めさせたり、
兵士の死を最後に持って来たりと、
意外性も秘めたストーリーも魅力です。
作者としての主張はあると思うのですが、
単一のアジテーションに陥ることなく、
多面的で考えさせる作品となっていること、
その分かりにくさの匙加減も絶妙なのです。

そんな訳でちょっと不満も残る舞台でしたが、
演劇史に残る傑作であることは間違いなく、
同じキャストでの再演はあるかどうか分かりませんので、
ご興味のある方は明日までですので是非。
僕の観た7月22日の夜は、
客席の3分の1も埋まらないような寂しい入りでした。
とても残念です。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(5)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 5

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

メッセージを送る