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一般臨床における糖尿病治療薬と心血管疾患予後との関連 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには出掛ける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
糖尿病の治療薬と心血管疾患リスク.jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
2型糖尿病の治療薬と動脈硬化性疾患の予後との関連についての論文です。

2型糖尿病の薬物治療のあり方については、
欧米と日本とではかなり考え方の違いがあります。

欧米では基本的に第一選択薬はメトホルミンで、
そこに効果が不十分であれば、
他の薬を適宜上乗せすることになっていますが、
日本の場合は複数の薬剤が同列で並んでいて、
患者さんの病態に合わせてそこから適宜選択する、
というガイドラインになっています。

メトホルミンは基本的にインスリン抵抗性を改善するタイプの薬で、
特に肥満に伴う2型糖尿病には有用性が高いのですが、
日本においてはやせ型で、
初期からインスリン分泌も低下するタイプの2型糖尿病が多いので、
欧米のガイドラインをそのまま使用することには問題がある、
という日本の学会や専門の先生の見解には、
首肯すべき点もあるのですが、
実際には「メトホルミンを欧米のように第一選択にしてもいいですよ」
と言外に言っているような中途半端なガイドラインである上に、
日本と欧米の患者さんの病態が異なり、
その薬剤の有効性も異なる、
という点についての根拠となるデータは、
あまり精度の高いものが存在しない、
という点には問題があります。

糖尿病の治療の目的は、
命に関わるような高血糖を回避すると共に、
心筋梗塞や脳卒中、心不全などの、
命に関わるような合併症を予防し、
その進行を阻止することにより、
患者さんの予後を改善することにあります。

上記文献の記載によれば、
中でも生命予後に大きな影響を与えているのが、
心不全の発症で、
心不全を合併することにより、
2型糖尿病の死亡リスクは10倍に跳ね上がり、
5年生存率は、
転移を伴う進行乳癌とほぼ同じ、
12.5%にまで低下している、
というデータがあるようです。

しかし、この心不全の予防と予後の改善という観点では、
これまであまり良い治療データが、
特に最近の治療薬においては得られていません。

インクレチン関連薬のDPP4阻害剤と、
インスリン抵抗性改善剤のチアゾリジン系の薬剤は、
いずれも2型糖尿病の患者さんの生命予後を改善する可能性のある治療薬として、
注目をされた薬です。

しかし、心不全の増悪のリスクについては、
チアゾリジン系の薬の代表であるピオグリタゾン(商品名アクトスなど)も、
多くのDPP4阻害剤も、
いずれもむしろ心不全による入院のリスクを高める、
という期待とは逆の結果が薬剤によっては報告されています。

ただ、これはいずれも発売前などの、
臨床試験での結果で、
実際の臨床でも同じ結果であるとは限りません。

最近SGLT2阻害剤という新しいタイプの治療薬の臨床試験で、
心不全などのリスクを低下させる、
という結果が報告されましたが、
まだこの単独の結果で一般臨床においても、
そうしたことが成立すると考えるのは早すぎます。

そこで今回の研究では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
実際の臨床における2型糖尿病の治療薬の違いと、
その心血管疾患予後との関連を検証しています。

その結果…

25から84歳のトータル469688名の2型糖尿病の患者さんの、
治療と経過のデータを解析した結果として、
未治療と比較してDPP4阻害剤の使用により、
総死亡のリスクを18%、
心不全のリスクを14%、
それぞれ有意に低下させていました。
心血管疾患のリスクについては、
有意な低下を示しませんでした。

一方でチアゾリジン系の薬剤については、
総死亡のリスクを23%、
心不全のリスクを26%、
心血管疾患のリスクを25%、
それぞれ有意に低下させていました。

ちなみに第一選択の治療である、
メトホルミンの単独治療では、
総死亡のリスクを41%、
心不全のリスクを30%、
心血管疾患のリスクを24%、
それぞれ有意に低下させていましたが、
SU剤は総死亡のリスクをわずかながら増加させ、
心不全と心血管疾患のリスクも低下させませんでした。
インスリンの治療は、
総死亡、心不全、心血管疾患、
いずれのリスクも有意に増加させています。

それ以外に複数の組み合わせの治療も検証されていますが、
メトホルミンを主体とする併用療法については、
概ね総死亡のリスクも心血管疾患のリスクも、
低下させる方向に向いていました。

今回の実地診療のデータにおいては、
DPP4阻害剤、チアゾリジン系の薬剤、
いずれも心不全に対してもリスクの増加は来さず、
単剤においてメトホルミンに準じる予後改善効果を示していました。

メトホルミンを第一選択として、
適宜そこにチアゾリジン系とDPP4阻害剤を併用することが、
2型糖尿病の経口薬による治療としては、
現状バランスの取れたもので、
患者さんの予後にも概ね良い影響をもたらすものと、
当面はそう考えておいて良いように思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
論文の画像が本文と違っていました。
コメントでご指摘を受け、
画像を入れ替えました。
(2016年7月23日午後10時修正)
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コメント 2

大阪の勤務医

いつも拝読しております。論文PDFが前報のmicrovascular outcomesの物です。ご訂正下さい。
by 大阪の勤務医 (2016-07-23 10:07) 

fujiki

大阪の勤務医さんへ
ご指摘ありがとうございます。
良く似たテーマでしたのでうっかりしてしまいました。
取り急ぎ差し替えました。
いつもお読み頂きありがとうございます。
by fujiki (2016-07-23 21:58) 

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