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スタチンでコレステロールはどのくらい下げるのが適当なのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
LDLコレステロールの目標値.jpg
今月のJAMA Intern Med誌にウェブ掲載された、
二次予防のコレステロール値は、
どのくらい下げるのが妥当かを検証した論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
その使用により血液のコレステロールは強力に低下します。

スタチンによりコレステロールを下げることにより、
特に心筋梗塞などを発症した場合には、
その再発を予防する効果のあることが、
多くのこれまでの臨床データにより確認されています。

ただ、問題となるのは、
どのくらいコレステロールを下げることが必要なのか、
ということです。

なるべくコレステロールを下げれば下げるほど、
予防効果が高いという考え方がある一方、
コレステロールの数値と予防効果は、
必ずしも関連しない、という考え方もあります。

ヨーロッパの心臓病学会のガイドラインでは、
心筋梗塞後の患者さんの再発予防のためには、
LDLコレステロールの数値を70mg/dL以下にすることが推奨されています。

日本の現行のガイドラインにおいては、
こうした場合のLDLコレステロールの目標値は、
100mg/dL未満にすることが推奨されています。

その一方で2013年のアメリカのガイドラインにおいては、
LDLコレステロールの目標値を設定せず、
高強度のスタチンを使用することのみが推奨されています。

このように、
二次予防としてのコレステロールの目標値は、
それを設定するべきかを含めて、
まだ統一した見解が得られていません。

今回の研究はイスラエルにおいて、
医療サービスの登録データを活用する方法で、
虚血性心疾患の受傷後で、
1年以上スタチンによる治療を継続している患者さんを、
そのLDLコレステロールレベルによって分類し、
コレステロール値と予後との関連性を検証しています。

対象者は30から84歳で、
心筋梗塞、不安定狭心症、心臓カテーテル治療やバイパス手術の既往があり、
1年以上スタチンによる治療を継続している、
トータル31619名の患者さんで、
LDLコレステロール値は、
70mg/dL以下の低値群と、
70.1から100.0mg/dLの中間値群、
そして100.1mg/dLから130.0mg/dLの高値群に、
分類して比較検証しています。
130mg/dLを越える数値の患者さんは除外されています。

その結果、
平均で1.6年間の経過観察において、
心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症、カテーテル治療やバイパス手術、
そして総死亡を併せたリスクは、
70.1から100.0mg/dLの中間群が最小で、
それよりLDLコレステロールが高値では明らかに増加しますが、
70より低くすることのメリットは確認されませんでした。

つまり、今回の結果からは、
心筋梗塞などの再発予防のLDLコレステロールの目標値は、
70から100mg/dLの範囲が適切だ、
ということになります。

こうしたデータはこれまでにあまり類のないものです。
少なくとも心筋梗塞の再発予防においては、
LDLコレステロールは低ければ低いほど予防効果が高い、
という考えが一般的に信じられていて、
そうしたデータが多く発表されて来たからです。

この問題はまだ未解決なので、
今回のデータのみで、
LDLコレステロールの適正値が70から100とは言い切れませんが、
この問題はまだまだ解決までには紆余曲折がありそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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永合 達生

スタチンの効能は2つに分けて議論する必要があると思います。
・コレステロール低下機能
・血管内皮の炎症治癒機能

コレステロール低下機能によるアテローム性動脈硬化に与える影響については、米国で行われているように、頸動脈エコーによるプラークの厚みの変化を経過観察することで評価するのが適切と思います。

血管内皮の炎症治癒機能については、心筋梗塞による死亡者数や入院患者数で評価することはできないかもしれません。

しかしながら、この2つは分けて議論しないと、スタチンの評価が適切に行われたとは言えないことになると思います。

参考情報ですが、リバロの添付文書に次の記載があります。
http://database.japic.or.jp/pdf/newPINS/00062116.pdf
医薬品添付文書 リバロ
(5頁)
4.脂質蓄積及び内膜肥厚抑制作用29)30)
 ピタバスタチンは、酸化LDLを負荷したマクロファージ(マウス単球由来株細胞)においてコレステロールエステルの蓄積を抑制した(in vitro)。29)
 また、経口投与により頚動脈擦過モデルにおける内膜肥厚を有意に抑制した(ウサギ)。30)

(私見)
29) は、”動脈硬化の原因は酸化LDLコレステロールである”、”肝臓でのコレステロール合成抑制とは異なる機序で効果がある”ということを認めている点で重要。
30) は、最近人間では否定されましたが、コレステロールを食事として摂ると血中コレステロールが上昇するとされた根拠が、やはりウサギでした。草食動物に対するコレステロールの実験は人間には当てはまらないという経験を反映しない非科学的な根拠文書です。

by 永合 達生 (2016-10-24 06:48) 

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