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リラグルチドの心疾患疾患予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
リラグルチド.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
GLP1アナログと呼ばれる糖尿病の注射薬の、
2型糖尿病の患者さんの心血管疾患予防効果についての論文です。

2型糖尿病の治療の目的は、
合併症の予防にあります。

そのうち網膜症や神経症については、
HbA1cが7%を切るような血糖コントロールを継続することにより、
その発症は一定レベル予防されることが確認されています。
腎症については、
尿への微量蛋白の発症というような指標を用いれば、
そうしたコントロールにより予防可能ですが、
それで腎機能の低下が抑制されるかについては、
あまり明確には証明されていません。

もっと問題が多いのは動脈硬化の進行に伴う、
心筋梗塞や脳卒中といった心血管疾患です。

心血管疾患のリスクは2型糖尿病により増加しますが、
そのリスクはHbA1cが7%台のコントロールでは、
十分には低下しません。
しかし、それを下回るような強化コントロールは、
今後は低血糖の増加を招き、
却って患者さんの生命予後の低下に結びついてしまうのです。

インクレチンは一種の消化管ホルモンで、
食後のみのインスリン分泌を刺激して、
インスリンの拮抗ホルモンであるグルカゴンの低下作用を併せ持っています。

インクレチン関連薬には、
インクレチンそのものであるGLP1アナログという注射薬と、
その分解酵素の阻害剤である、
DPP4阻害剤の2種類があります。

このインクレチン関連薬は、
血糖値の上昇時のみに働くので、
低血糖のリスクが少なく、
動物実験では膵臓のインスリン分泌細胞を増加させるなど、
これまでの糖尿病治療薬にはない特徴も有しています。

そのためインクレチン関連薬を使用することにより、
心血管疾患の予後が改善することが期待されました。

しかし、
これまでの複数のDPP4阻害剤
(アログリプチン、サキサグリプチン、シタグリプチン)や、
GLP1アナログであるリクセナチドに関する臨床試験では、
その上乗せによる心血管疾患の予防や予後の改善効果は、
確認はされませんでした。

今回の研究はGLP1アナログのリラグルチド(商品名ピクトーザ)の、
心血管疾患の予後に対する効果を検証したものです。

対象は2型糖尿病でHbA1cが7%以上の患者さんで、
未治療の患者さんも、
他の経口糖尿病薬やインスリンなどを使用している患者さんも、
共に対象となっています。
更に50歳以上で1つ以上の心血管疾患に受傷しているか、
60歳以上で1つ以上の心血管疾患のリスクを持っていることが、
その条件となっています。

本人にも主治医にも分からないように、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方はリラグルチドを1.8ミリグラム注射し、
もう一方は偽薬の注射をして、
最低でも42か月間、
最長で60か月の治療を継続し、
中止後は30日は経過を観察します。

患者さんは世界32か国の410の専門施設で登録され、
トータルの例数は9340名です。
観察期間の中央値は3.8年です。

観察期間中の心血管疾患の死亡と心筋梗塞、
および脳卒中の発症を合わせた頻度は、
偽薬群では14.9%であったのに対して、
リラグルチド群では13.0%で、
リラグルチドは心血管疾患をトータルで13%、
有意に抑制していました。(0.78から0.97)

心血管疾患による死亡のみで見ると、
偽薬群よりリラグルチド群は、
死亡リスクを22%有意に低下させていました。
(0.66から0.93)

総死亡のリスクについても、
リラグルチド群で15%の低下が有意に認められました。
(0.74から0.97)

ただ、心筋梗塞、脳卒中、心不全による入院については、
偽薬群とリラグルチド群との間に、
有意な差は認められませんでした。

有害事象としては、
リラグルチド群で腹痛や嘔吐などの消化器症状が多く、
インクレチン関連薬の有害事象として指摘されることのある、
膵炎の発症については、
リラグルチド群での増加はありませんでした。
ただ、有意ではないものの、
偽薬群で5件に対してリラグルチド群では13件と、
膵臓癌の発症はややリラグルチド群で増加していました。

今回の結果では、
インクレチン関連薬としては初めて、
その使用による心血管疾患の死亡リスクと、
総死亡のリスクの低下が認められました。

これはかなり画期的なことですが、
それでは何故これまでの同様の臨床試験で、
それが認められなかったのか、
という点は疑問として残ります。

また、心不全や死亡に至らない心筋梗塞や脳卒中のリスクは、
有意な差がないのに、
死亡リスクのみが差が付いている、
という点の解釈も難しいところです。

1つのポイントとしては、
これまでの研究の殆どでは、
メトホルミンの上乗せで試験が行われていたのに対して、
今回は初期治療で単独の使用の事例も、
含まれているという点が影響している可能性があります。

いずれにしてもインクレチン関連薬で、
こうした心血管疾患の予後改善効果が得られた意義は大きく、
今後の更なるデータの蓄積を期待したいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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