So-net無料ブログ作成

スタチンの糖尿病は予知出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンの糖尿病とそのリスク.jpg
今年のJAMA Cardiology誌に掲載された、
スタチンというコレステロール降下剤の使用と、
その副作用である糖尿病の発症に、
関連する因子を検証した論文です。

スタチンはコレステロールの合成酵素の阻害剤で、
特にLDLコレステロールを低下させることにより、
心血管疾患、特に心筋梗塞の予防に有用な薬剤です。

ただ、この薬には新規の糖尿病の発症を、
わずかながら増加させるという副作用のあることが知られていて、
それは主にこの薬剤の基本的な性質である、
酵素の阻害と結び付いていると考えられています。

糖尿病は強力な心血管疾患の危険因子ですから、
良かれと思ってスタチンを使用していても、
それで糖尿病を発症してしまったとすれば、
心血管疾患の予防効果は、
無効とは言えないまでもかなり減殺されますし、
何より糖尿病の管理という、
大きな負担が患者さんに掛かることになってしまいます。

仮にスタチンで糖尿病が誘発され易い条件なり、
体質なりが、
事前に予測可能であれば、
そうした条件に当て嵌まる患者さんに対するスタチンの使用は、
より慎重に考える、という選択肢が生まれます。

2012年のLancet誌に、
JUPITER試験とよばれた、
スタチンの大規模な臨床試験のデータを、
再解析し、
どのような患者さんで、
スタチンによる糖尿病発症リスクが高まり、
どのような患者さんで、
スタチンの有効性がそのリスクを上回るのかを、
検証した結果が報告されています。

JUPITER試験というのは、
ロスバスタチン(商品名クレストールなど)を用いた、
スタチンについての大規模な臨床試験です。

その結果はどのようなものだったのでしょうか?

まず、
スタチンによる糖尿病の発症リスクの増加は、
糖尿病の一般的な発症リスクとされる、
メタボリックシンドローム、
BMIという指標が30を超える肥満、
血糖コントロールの指標である、
Hba1cという数値が6%(NGSP値)を超える場合や、
食膳血糖が正常よりやや高めの所謂前糖尿病状態の患者さんで、
より高い傾向にあり、
そうした患者さんを除外した検討では、
スタチンによる糖尿病発症リスクの有意な増加は、
認められませんでした。

そして、
糖尿病リスクのある患者さんにおいても、
心疾患や脳卒中の発症を相対リスクで39%低下させていて、
糖尿病の発症リスク増加の28%を差し引いても、
充分有用性は確保されている、
という結果でした。

今回のデータは同じJUPITER試験の再解析なのですが、
最近注目されている、
LPIR(lipoprotein insulin resistance )スコア、
という脂質の指標を用いて解析を行なっている、
と言う点がポイントです。

LPIRスコアというのは、
血液中のリポ蛋白と呼ばれる、
6種類の脂質の重みづけをして数値化したもので、
その数値が高いほど、
インスリン抵抗性が高いと判断されます。

この場合の6種類のリポ蛋白は、
通常サイズのVLDL、HDL、LDL、
そして大きなサイズのlarge VLDL、large HDL、
そして小さなサイズのsmall LDL、
の6種類です。

何故脂質でインスリン抵抗性が分かるのかと言うと、
たとえば、インスリンはlargeVLDLの肝臓での合成を抑制するので、
インスリン抵抗性が増すとVLDLは増加するのです。
このような変化が個々の脂質において起こるので、
6種類の脂質を重みづけとして数値化することにより、
インスリン抵抗性の指標になるのです。

今回の解析によると、
スタチン(ロスバスタチン)の使用により、
LPIRスコアは改善しています。
つまり、スタチンによってインスリン抵抗性は改善しているのです。

そして、
偽薬群でもスタチン使用群でも、
LPIRスコアは観察期間中の糖尿病の発症と、
有意な関連を持っていました。

要するに今回の解析においても、
糖尿病のリスク因子があるほど、
スタチンによる糖尿病の誘発もより多い、
という結果です。
その一方でインスリン抵抗性の高い人では、
よりスタチンによるメリットも大きいのですから、
悩ましいところがあります。

現状はスタチンの使用は、
適応の事例では積極的に行ないながらも、
インスリン抵抗性が高いなど、
糖尿病の発症リスクが高い患者さんでは、
スタチンによる糖尿病の発症にも留意しつつ、
治療を継続する、
という方針しかないように思います。

現状スタチンによる誘発される糖尿病に、
それを予知するような指標はないと、
そう考えた方が良さそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(11)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 11

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

メッセージを送る