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抗うつ剤と心血管疾患の予後との関連について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日は、
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
抗うつ剤の使用と心血管疾患の予後との関連についての、
大規模な疫学データを解析した論文をご紹介します。

うつ病はそれ自体が、
心筋梗塞や脳卒中などの、
心血管疾患の発症リスクになります。

ストレスはそれだけで動脈硬化や炎症、
血栓形成などのリスクになりますから、
ストレスの病気でもあるうつ病において、
動脈硬化に伴うような病気が、
増えることは理屈に合っています。

ただ、それでは抗うつ剤による治療を行なうことにより、
そうした心血管疾患のリスクが予防されるかと言うと、
その点については相反する知見があって、
一定の結論には至っていません。

最も使用頻度の高い抗うつ剤である、
SSRIを使用した13の観察研究をまとめて解析した、
2014年の報告によると、
高齢者におけるSSRIの使用により、
脳卒中のリスクは40%増加が認められましたが、
全ての年齢層での解析では、
そうしたリスクの有意な上昇は認められませんでした。

心筋梗塞においても、ほぼ同様のデータがあり、
65歳以上の年齢層では、
SSRIにより心筋梗塞の発症率の増加が認められた一方、
より広い年齢層を対象とした疫学データでは、
そうしたリスクは認められていません。

日本では使用されていないSSRIであるシタロプラムは、
その高用量(40ミリグラム以上)で、
QT延長という重症の不整脈の原因となる心電図変化を、
来す可能性が指摘されています。
日本で使用されているエスシタロプラム(商品名レクサプロ)など、
それ以外の抗うつ剤でも同様のリスクがあるとする、
ヨーロッパの監督官庁の見解もあります。
ただ、その一方でこうした多くの抗うつ剤の使用により、
不整脈などのリスクは増加しなかった、
という知見もあります。

つまり、比較的短期間の分析に限ると、
抗うつ剤の使用により、
心血管疾患は予防はされないばかりか、
むしろそのリスクが上昇するという知見が多いのです。
ただ、年齢層や患者さんの背景によって、
その結果は様々であまり一貫性はありません。
また、より長期的には抗うつ剤を含むうつ病の治療が、
心血管疾患の予後の改善に結び付く可能性も、
まだ否定は出来ません。

そこで、
「Antidepressant use and risk of cardiovascular outcomes in people aged 20 to 64: cohort study using primary care database」と題された今回の論文では、
イギリスのプライマリケアのデータベースを活用して、
この問題についての、
より詳細でより大規模な解析を行っています。

2000年から2011年に掛けて、
うつ病と診断された20歳から64歳までの、
トータル238963名の患者さんの、
各種抗うつ剤の使用と、
その後5年間の心血管疾患の発症との関連性を検証したものです。

その結果…

5年の観察期間中に、
772名の患者さんが心筋梗塞に罹患し、
1106名の患者さんが一過性脳虚血発作を含む脳卒中に、
そして1452名の患者さんが不整脈の診断を受けていました。

抗うつ剤の種類と心筋梗塞の発症リスクとの間には、
5年間のトータルでは関連性は認められませんでした。
ただ、1年間に限って見ると、
抗うつ剤を使用しない場合と比較して、
SSRIの使用によりそのリスクは42%有意に低下し、
薬剤別に見ると、
フルオキセチン(日本未発売)を使用した場合に、
そのリスクは56%と最も大きく低下し、
その一方で三環系抗うつ剤であるロフェプラミン(商品名アンプリット)使用時には、
そのリスクは3.07倍と有意に増加していました。

一過性脳虚血発作を含む脳卒中の発症については、
その種別を問わず、
抗うつ剤の使用と有意な関連性は認められませんでした。

不整脈の発症については、
5年間のトータルでは抗うつ剤の使用との間に、
有意な関連はなかったのですが、
処方開始後28日以内の不整脈の発症に限ると、
三環系の抗うつ剤においては、
不整脈のリスクは1.99倍有意に増加していました。
そして、フルオキセチンは5年を超える期間において、
不整脈の発症リスクを26%有意に抑制していました。
QT延長との関連が指摘されていた、
シタロプラムの高用量の使用については、
1日量40ミリグラム以上の解析においても、
有意な不整脈リスクの増加は認められませんでした。

要するに、今回のデータの解析結果から見ると、
SSRIの使用により、
5年程度の観察期間において、
20から64歳の年齢層では、
心筋梗塞や脳卒中、そして不整脈のリスクが、
増加するということはないようです。
また、シタロプラムが有意に不整脈を誘発する、
ということもないようです。
ただ、三環系の抗うつ剤は、
短期的に心筋梗塞や不整脈のリスクを増加させる可能性があり、
逆にSSRIであるフルオキセチンは、
そのリスクを低下させる可能性があります。

これは三環系の抗うつ剤の持つ、
抗コリン作用が、
短期的に心臓への悪影響を及ぼす可能性があり、
その一方で重症のうつのような、
ストレスが亢進した状態では、
SSRIによりその負荷が軽減されることにより、
これも短期的な心筋梗塞などのリスクを予防している、
と考えるとまずまず納得のゆく結果ではないかと思います。
長期的に見ると、
心血管疾患の予後には、
継続された抗うつ剤が、良くも悪くも、
あまり大きな影響を持つことはなさそうです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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ひでほ

昨年2度目のAVRを受けました。
ジェイロソフト寝る前にのんでいます。
手術後だと思われますが2連発の不整脈がよく出ています。
ふしぎと睡眠中は出てないです。

情報参考にさせていただきます。
ありがとうございました。
by ひでほ (2016-03-29 13:30) 

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