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ピオグリタゾンによる脳卒中再発予防効果 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診療になります。

では今日の話題です。

今日はこちら。
ピオグリタゾンと脳卒中予防.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
ピオグリタゾン(アクトス)という、
インスリン抵抗性改善剤の、
脳梗塞の再発や心筋梗塞の予防効果を検証した論文です。

その原因はどうあれ、
脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こした後では、
脳梗塞の再発は勿論のこと、
心筋梗塞などの他の心血管疾患の発症率も、
増加することが知られています。

当然その予防のために、
スタチンというコレステロール降下剤や、
アスピリンのような抗血小板剤が使用され、
一定の予防効果はあるのですが、
それでも再発率は高く、
予防として充分とは言えません。

脳梗塞を起こすような患者さんでは、
糖尿病はなくても、
インスリンの効きが悪いインスリン抵抗性があることが多い、
という指摘があり、
それが心血管疾患のリスクを上げる、
1つの要因になっていると考えられます。

そうであれば、
通常の予防的な投薬に加えて、
インスリン抵抗性を改善する薬を使用することで、
脳卒中後の患者さんの、
心血管疾患のリスクは低下するのではないでしょうか?

その推測を検証する目的で、
今回の研究では、
脳梗塞や一過性脳虚血発作を起こした患者さんに対して、
ピオグリタゾン(商品名アクトスなど)という、
インスリン抵抗性改善剤を使用して、
その効果を検証しています。

ピオグリタゾンは、
日本で開発された薬ですが、
日本より海外で評価が高いという、
ちょっと不思議な薬です。

インスリン抵抗性改善剤として、
その評価は確立していますが、
体液貯留を来すので、
浮腫みや体重増加が有害事象として認められ、
心不全の悪化などが報告されたこともあります。
また、膀胱癌のリスクを増加させる、
という指摘もあります。
こうした有害事象のイメージから、
日本では欧米よりも、
この処方は控えられる傾向にあるようです。

今回の研究では、
アメリカを主体とした179の病院において、
登録前の半年間に、
脳梗塞もしくは一過性脳虚血発作を来した、
40歳以上の成人で、
糖尿病はないけれども、
検査値よりインスリン抵抗性が確認されている
(HOMA-IRという数値が3.0以上)、
トータル3876名の患者さんを、
本人にも主治医にも分からないように2つのグループに分け、
一方はピオグリタゾンを1日15ミリグラムより開始し、
継続可能であれば1日45ミリグラムまで増量します。
もう一方はそっくりの偽薬を代わりに使用して、
平均で4.8年の経過観察を行ないます。
抗血小板剤やスタチンなどは、
多くの患者さんで両群共に使用されています。

その結果…

観察期間中に、主要な観察目標である、
致死性を含む脳卒中と心筋梗塞の発症は、
偽薬群で11.8%に当たる228例であったのに対して、
ピオグリタゾン群では、
9.0%に当たる175例で、
ピオグリタゾンの使用により、
脳卒中の再発や心筋梗塞は、
38%有意に抑制されていました。
(95%CI;0.62から0.93)

また、観察期間中に糖尿病を発症した割合は、
偽薬群で7.7%であったのに対して
ピオグリタゾン群では3.8%と、
こちらも有意に52%抑制されていました。

両群の死亡リスクには差は認められませんでした。

有害事象については、
4.5キロを超える体重増加が、
ピオグリタゾン群では52.2%に対して、
偽薬では33.7%と、
明らかにピオグリタゾン群で多く、
浮腫や骨折のリスクも増加していました。

このように、
高度のインスリン抵抗性が認められる、
糖尿病のない患者さんにおいては、
脳梗塞後にピオグリタゾンを使用することにより、
4割程度その後の脳卒中や心筋梗塞が予防されます。
糖尿病への移行も5割は抑えられます。
ただし、体重増加や浮腫は明らかに多いので、
体重管理には厳重な配慮が必要ですし、
有害事象が発症しないかについては、
慎重に経過をみつつ処方を継続する必要があります。

以前に糖尿病で施行された同様の臨床試験では、
心血管疾患の予防効果は、
傾向は認められたものの、
今回ほど明確な差は付いておらず、
おそらく糖尿病を発症したような状態では、
その効果は限定的なようです。

脳卒中の再発は予後の悪いことが多いので、
上記のような条件に当て嵌まる事例であれば、
試みる値打ちはある治療ではないかと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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しんまい

いつも読ませていただいております。乳癌検診について質問させてください。現在36歳三人目が七ヶ月で授乳中です。身内に乳癌はおらず、一人目を26で出産して以来四年おきに出産、それぞれ二年ほど授乳していたので産後二年ほどは生理はきませんでした。肉は好まず166センチ48キロです。自分では乳癌のリスクは低いかなと思っております。それでも現在授乳中ですが検診を受けた方がいいのでしょうか。二人目を授乳中に検診を受けましたは乳瘤を細胞診され、とてもいたい思いをしました。結果乳瘤でした。授乳中はこのようにわかりずらいのではと思い 、今回の検診をままよっております。ちなみに今回の妊娠直前には超音波診断を受け異常なしでした。

そろそろ一年になるのでどうしようかと思っています。
また私のよう状況では乳癌のリスクはきわめて低いと勝手に判断するのは間違いでしょうか。

by しんまい (2016-02-22 13:27) 

しんまい

もうそろそろ前回の検診から一年ではなく二年の間違いです。よろしくお願いいたします 。
by しんまい (2016-02-22 13:48) 

fujiki

しんまいさんへ
30代での乳癌検診は、
今のところその有効性は確認をされていません。
勿論無意味ということはないのですが、
その施行は絶対メリットがある、
とは言えません。
授乳中は偽陽性が多いと思いますので、
授乳は終了してから、
超音波の検査を受けて頂くのが、
個人的には良いのではないかと思います。
by fujiki (2016-02-22 19:46) 

しんまい

そうなのですね。ありがとうございます。偽陽性のときのストレスを考えると踏み切れずにおりました。そうしようと思います。これからもblog楽しみにしております。ありがとうございました。
by しんまい (2016-02-23 01:24) 

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