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甲状腺腫瘍総説(2015年アメリカの知見) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日はクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療には出かける予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
甲状腺腫瘍の総論.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
甲状腺腫瘍についての総説記事です。

格別目新しい知見はないのですが、
この問題について整理をしておきたいと思います。

甲状腺腫瘍は人口の4から7%には存在していて、
そのうちの8から16%が悪性であるという統計があります。
これは何等かの原因により甲状腺腫瘍を疑い、
検査をして見付かる腫瘍の頻度ですが、
超音波検査を全人口で行えば、
19から67%に甲状腺腫瘍が見付かる、
というデータも存在しています。

つまり、甲状腺腫瘍はその気で探せば非常に多く見付かる、
ということが分かります。

特別の場合を除いて、
甲状腺腫瘍を発見することを目的とした検診は推奨されていません。

従って、
ガイドラインにある甲状腺腫瘍が疑われた場合の対処方針というのは、
敢くまで「たまたま」見付かった甲状腺腫瘍を対象としています。

甲状腺腫瘍を診断するための検査として、
最も有用性が高いのは、超音波検査です。

それ以外には、
放射線の治療歴などの病歴と、
癌などの家族歴、
診察所見、
血液でのTSHの測定は必須と考えられています。

これはまず、TSHの測定のみを行なって、
それでTSHの抑制が認められれば、
甲状腺機能亢進症を疑って、
ヨードシンチを施行する、
というのがアメリカのガイドラインのアルゴリズムになっています。
これで放射性ヨードの集積が腫瘍の部位に認められれば、
甲状腺ホルモンを腫瘍が産生している可能性を疑い、
他のホルモン値の測定などを行なうのです。

甲状腺髄様癌という、
特殊なタイプの癌の早期診断には、
カルシトニンの測定が有用とされていますが、
現行のアメリカのガイドラインでは、
その施行は推奨されていません。

日本で使用されているカルシトニンのキットは、
欧米と同一ではなく、
その感度も特異度も欧米の物より劣り、
かつ基準値も大きく異なっているので、
日本でカルシトニンを測定することの信頼性は、
あまりないのが実状です。
馬鹿馬鹿しくも悲しい事実だと思います

超音波検査を施行することにより、
腫瘍の大きさとその形状などの所見から、
腫瘍が悪性であるかどうかの推測を行います。

上記文献にある具体例をお示しします、
こちらをご覧下さい。
甲状腺癌のエコー所見その1.jpg
図のAは非常に典型的な乳頭癌の所見です。
辺縁がややいびつな低エコーのしこりで、
内部エコーは不均一です。

Bは矢張り辺縁が不整な、
癌を疑わせる腫瘍です。

Cは内部エコーが不整の充実性の腫瘍で、
幅よりも厚みが大きいことが特徴です。
濾胞癌を疑わせる所見です。

Dは内部に微細な石灰化があり、
矢張り癌を疑う所見になります。

今度はこちらをご覧下さい。
甲状腺腫瘍のエコー所見その2.jpg
図のAは大きな卵殻状の石灰化で、
通常は良性の所見です。

Bは嚢胞の中に充実性の部分が盛り上がっていて、
その部位に微小な石灰化があります。
これは嚢胞に合併した乳頭癌の事例です。

Cは頸部のリンパ節の所見です。
嚢胞様の構造の中に充実性の部位があり、
通常のリンパ腺の所見とは違っています。
これは甲状腺癌のリンパ節転移の所見です。

Dは嚢胞性の部分がモザイク様に分布しているもので、
基本的には良性の腫瘍の所見です。

このように、超音波所見により、
ある程度腫瘍の良性と悪性とを推測することが出来ます。
こちらをご覧下さい。
甲状腺癌のエコー所見のリスクの表.jpg
超音波所見と腫瘍の大きさから、
次のステップである、
穿刺吸引細胞診の適応を選択します。

充実成分のない嚢胞性の腫瘍は、
ほぼ確実に良性なので、
細胞診の適応にはなりません。

エコーレベルが低くない充実性のしこりで、
微小石灰化などの他の悪性所見がなければ、
大きさが1.5センチを超えた時点で、
細胞診を検討します。

基本的に悪性所見を伴う大きさが1センチ以上のしこりは、
穿刺吸引細胞診の適応となりますが、
それより小さなしこりに関しては、
遺伝性の腫瘍など、
特定の悪性のリスクが高いと想定される場合を除いては、
悪性を疑わせる所見があっても、
積極的な細胞診の対象とはならないのです。

超音波所見とそれを基にした穿刺吸引細胞診の施行は、
日本でも概ね同じ考えで行われていますが、
現行の日本のガイドラインである、
「甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013」では、
これまでの知見の羅列というニュアンスが強く、
明確な所見の重み付けには踏み込んでいません。

今日は甲状腺腫瘍の診断についての総説を、
主に超音波診断に絞ってまとめてみました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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