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小児癌の遺伝子変異について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
小児がんの遺伝子変異.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
小児癌の原因となる遺伝子変異を、
多数例で検証した論文です。

癌が出来るのは何故か、
という疑問に対して、
クヌードソン仮説というものが、
40年以上前に提唱されました。

これは遺伝子の変異が複数積み重なって、
癌の発症に繋がる、という仮説で、
癌の増殖に繋がる変異と、
癌化を抑制する癌抑制遺伝子の変異とが、
ともに起こることが癌の発症に繋がると仮定することにより、
網膜芽細胞腫という癌が、
小児期と成人期で生じるメカニズムを、
説明することに成功したのです。

その後多くの癌遺伝子と呼ばれる、
癌細胞の増殖に繋がる遺伝子の変異と、
癌抑制遺伝子と呼ばれる、
癌化を防ぐ遺伝子の、
作用が妨害されるような変異が見つかりました。

しかし、それで全ての癌の原因が解明されたのかと言うと、
勿論そんなことはありません。

多くの癌の原因が、
まだ不明であることに違いはないのです。

お子さんの時期に発症する「小児癌」は、
環境要因の関与が少なく、
生殖細胞の時点で既に存在している遺伝子変異が、
その主な原因であると考えられています。

しかし、どのような変異が、どの程度の割合で関与しているか、
というような具体的な事項については、
あまり明確なデータが存在していませんでした。

そこで今回の研究においては、
20歳未満で発症した癌の患者さん、
トータル1120例の遺伝子を解析し、
遺伝性の癌との関連が深いとされる60の変異を含め、
癌に関連するという報告のある、
生殖細胞の時点で存在している565の遺伝子変異を、
全て解析してその結果をまとめています。

その結果…

生殖細胞の時点で病原性があるか、
その可能性のある変異は、
小児癌の患者さんの8.5%に当たる95例で検出されました。
癌のない966例の遺伝子解析では、
こうした変異は1.1%しか検出されていませんから、
確かに多いということは言えます。
しかし、遺伝子の変異の積み重ねが、
癌の原因であるという仮説が事実であるなら、
もっとずっと高い比率であっても良さそうです。

検出された変異のうち、
最も多かったのはTP53と呼ばれる遺伝子の変異で、
この遺伝子は癌抑制遺伝子の代表です。
半数の50例にこの変異が認められました。
こうした遺伝子変異が認められた患者さんで、
家族歴に関する情報が得られた58例の聞き取りを行なった結果では、
明確な家族歴が確認されたのは、
全体の4割に過ぎませんでした。

これはどういう意味かと言うと、
生殖細胞レベルで遺伝子変異があり、
それが小児癌の発症に結び付いているとすれば、
そうした癌は家族性と想定されるのですが、
実際には必ずしもそうではない、
ということです。

小児癌の発症に結び付くような遺伝子変異があっても、
家族歴からそのリスクを判断するような現在の手法は、
限界のあるものであるようです。

今回のデータは今後のより精緻な検証への、
たたき台になるという性質のものですが、
小児癌が何故起こるのか、
という問題については、
通常は翻訳されない遺伝子領域の関与などを含めて、
これまでの常識にはとらわれない、
柔軟な思考が必要なのかも知れません。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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