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無症候性尿路感染症に抗生物質を使用してはいけない訳 [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後とも、
いつも通りの診察になります。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
無症候性尿路感染症に対する抗生物質治療の有害性.jpg
今年のClinical Infectious Diseases誌に掲載された、
症状のない女性の尿路感染症を、
抗生物質で使用した場合の弊害についての論文です。

まあ、当たり前と言えば当たり前の内容なのですが、
臨床医の端くれとしては、
再度心に留めておきたいと思います。

特に発熱や頻尿、排尿痛や残尿感などの症状がなくても、
尿の検査を行なうと一定のレベル以上の、
細菌が検出されることがあります。

こうした症状のない尿路感染症を、
どのように考えるべきでしょうか?

症状がないものについては、
特に治療を行わない、というのが一般的な考えです。

ただ、例外は2つあって、
尿路系に関連する外科手術の前と、
妊娠中の場合です。

細菌性の尿路感染症は抗生物質が有効な病気の1つです。

排尿痛のような症状を伴う場合には、
抗生物質を原則短期間使用して、
除菌を図ることが一般的です。

しかし、特に閉経後の女性の場合には、
その再発は非常に多く、
治療に難渋することが稀ではありません。

症状のある尿路感染症を繰り返す人は、
当然無症候性尿路感染症も繰り返しています。

そうなると、
尿に細菌が出ているというだけで、
患者さんもまた症状が出るのではないかと気になりますし、
医者の方でも、
これをそのままにしておけば、
また症状が再発するのではないか、
と気になります。

そんな訳で、
症状がなくても、
おしっこに所見があれば、
抗生物質が使用されることが、
実際には多くなるのは、
ある意味自然なことのようにも思います。

しかし、治療のガイドラインにおいては、
こうした場合の抗生物質の使用は、
やってはいけないとされています。

それは何故で、
そうした処方をすることにより、
どの程度の弊害があるのでしょうか?

それを検証したのが上記の論文です。

今回ご紹介するデータは、
同じ医学誌に2012年に掲載された臨床試験の、
より長期の観察の結果を報告したものです。

最初の研究は、
673名の再発性尿路感染症の女性を対象としたもので、
くじ引きで2つのグループに分け、
一方は定期的に尿検査を行なって、
無症候性尿路感染症が診断されれば、
抗生物質による使用を行ない、
もう一方は診断されても治療は行いません。

それで1年間の経過観察を行なったところ、
症状のある尿路感染症の発症頻度は、
抗生物質を使用したグループの方がより多かった、
という結果になっていました。

今回のデータは、
登録された患者さんの経過を、
更に3年間延長して観察したものです。

ただ、この3年に関しては、
2つのグループとも、
症状のある尿路感染症が起こった時のみ、
抗生物質による治療を行なっています。

つまり、グループの差は延長期間については特にないのです。

ところが…

最初の1年に抗生物質治療をしなかったグループでは、
その後の3年間に症状のある尿路感染の再発は、
37.5%に認められたのに対して、
抗生物質を最初の1年間に使用したグループでは、
再発は69.6%という高率に認められました。

しかも、その原因菌は、
抗生物質未使用群と比較して、
耐性菌が有意に多いものになっていました。

要するに、
細菌が検出された、というだけで、
無症状の尿路感染に対して、
その都度抗生物質の使用を行なうと、
それは症状のある尿路感染症をむしろ増やす結果になるばかりか、
その悪影響は、
抗生物質のそうした使用を中止しても、
少なくとも3年間は持続する、
ということになります。

従って、
症状のない尿路感染症については、
妊娠中などの特別の状況を除いて、
抗生物質を使用しないことが、
何よりも重要なことになるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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