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萎縮性胃炎は20年後にどれだけ胃癌になるのか? [医療のトピック]

こんにちは。
石原藤樹です。

今日は水曜日で診療は午前中で終わり、
午後は別件の仕事で都内を廻る予定です。

明日より診療所は8月17日(月)まで、
夏季の休診となりますのでご注意下さい。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ヨーロッパにおける胃癌への伸展比率.jpg
今年のBritish Medical Journal誌に掲載された、
胃癌のリスクであると想定されている、
萎縮性胃炎や腸上皮化生が、
実際にどのくらい癌になるのかを、
これまでで最も大規模に検証した論文です。

健診などで胃カメラ検査を受け、
「萎縮性胃炎がありますね」
とか、
「腸上皮化生があります」
と言われ、
「それはどういうものですか?」
と尋ねると、
「胃癌になる危険が高いので注意が必要です」
と解けない呪いのような返事が返って来ます。

ピロリ菌の感染が確認されれば、
その除菌があるだけで、
後は予防らしい予防法はなく、
早期発見のために定期的に検査を受けるだけです。

この受け身の感じが、
多くの方にとってはストレスになるようです。

それでは、
実際に萎縮性胃炎や腸上皮化生があると、
ない場合と比較して、
どのくらい多く胃癌が発生するのでしょうか?

それを医師に尋ねても、
あまり明瞭な返事が返って来ることはありません。

それも通りで、
実際にはあまりしっかりしたデータがなく、
その結果もまちまちで一定はしていないのです。

日本でピロリ菌の除菌とその後の胃癌の発症を見た、
有名な研究がありますが、
これは早期胃癌の患者さんの再発を見ているものなので、
健診で見付かった萎縮性胃炎に、
そのまま適応出来るようなものではありません。

大規模で優秀な疫学データの多くは欧米のものですが、
萎縮性胃炎も胃癌もピロリ菌の感染も、
欧米には少なくそれほどの興味を惹かないので、
これまで欧米にもあまり大規模な疫学データが存在していませんでした。

今回の研究は国民総背番号制を取っているスウェーデンのもので、
1979年から2011年に、
悪性の病気ではなく胃カメラで組織の検査を行なった、
405172名の対象者の、
その後20年以上に渡る経過観察を行なっています。

間違いなくこの分野で、
これまでで最も大規模な研究です。

その結果はこちらをご覧下さい。
萎縮性胃炎から胃癌発症のリスクの図.jpg
何も所見がなかった場合に比較して、
所見があった場合には、
経年的に胃癌の発症リスクが増加することが分かります。

何も所見のない方が、
20年以内に胃癌になる確率は256人に1人で、
萎縮性胃炎以外の慢性胃炎のある場合には85人に1人になり、
それが萎縮性胃炎であると50人に1人になり、
腸上皮化生があると39人に1人になり、
その時点で異型性があると、
19人に1人が、
概算で20年以内に胃癌を発症すると計算されます。

言い方を変えると、
正常粘膜に比較して、
萎縮性胃炎以外の慢性胃炎があると2.6倍、
萎縮性胃炎があると4.5倍、
腸上皮化生があると6.2倍、
そして異型性があると10.9倍、
20年以内の胃癌の発症リスクは増加します。

このデータは、
アジアと比較すると胃癌の発症の低いヨーロッパのものなので、
そのまま日本人に適応可能なものではありませんが、
1つの傾向としては同じであることが想定され、
今後の胃癌の予防戦略において、
重要なデータであることは間違いがないと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

ひでほ

萎縮性胃炎はいつもいわれます。
食道静脈瘤の治療後のフォローアップで定期的に胃カメラをのんでいますが、頻度を多くしてもらおうと思いました。
by ひでほ (2015-08-13 17:21) 

yuki

石原先生
はじめまして。こんにちは。
過去の記事へのコメントですがよろしいでしょうか?

2014年5月に内視鏡検査を行い、萎縮性胃炎C-2との診断を受けましたた。またピロリ菌が陽性でしたので除菌を行い成功しています。

昨年の内視鏡検査も問題なくクリアいたしました。

しかし、今年の11月(2016年11月)に内視鏡検査を行ったところ、とつぜん分類がO-3との診断になりました。

ピロリ菌除菌後も、萎縮性胃炎は進行するのでしょうか?
それも1年以内の短い間に急激に軽度から高度萎縮となる理由は何が考えられますか?

担当医からの分類についての話はなく、私が結果報告書を見て質問した状態で、それに対する返答も「C-2もO-3も同じ」とのこと。
胃がん化へのリスクには大きな差異が見受けられると思うのですが…。
来年の内視鏡検査を受けてください、とだけで胸がどうもすっきりいたしません。

こんなに急激に萎縮性胃炎の状態がすすむのであれば、胃がんへの移行は本当にすぐではないかと心配になり、萎縮性胃炎と診断されたときから拝読している石原先生のご意見をうかがいたいとコメントいたしました。

大変ご多忙とは存じますが、お返事いただけましたら幸いです。

by yuki (2016-11-29 15:11) 

fujiki

yukiさんへ
ピロリ菌の除菌もした萎縮性胃炎が、
短期間で急激に悪化するとは考えにくく、
今回のO-3という判断が、
おそらくは大弯に萎縮があるという所見を、
とったのだと思いますが、
やや過剰な診断であったのではないかと思います。
担当の先生がC-2もO-3も同じと言われたのは、
そのことを暗に意味しているように思います。
木村・竹本分類というのは日本独特なもので、
萎縮の範囲を見ている訳ですが、
術者の肉眼所見に頼るものなので、
客観性には乏しいと思います。
たまたま急性胃炎もあり、
それを萎縮性胃炎と誤認することもあります。
いずれにしても大きなご心配はないと思いますが、
気になるようでしたら、
1年後ではなく、半年後くらいに胃カメラを再検されるのが、
良いように思います。
by fujiki (2016-11-29 16:57) 

yuki

石原先生
お忙しい中、こんなに早くしかもとても丁寧にお返事いただき大変感激しております。

実は、検査の1週間前から胃痛と吐き気があったため、逆流性食道炎ではないかという予測の元での内視鏡定期検査でした。
(申し遅れましたが、私は48歳女性です。)

しかし、逆流性食道炎と思われる炎症はなかったようです。
そうなると胃痛等の症状は、先生のご見解にあった急性胃炎の可能性もあり得ますね。

急激な萎縮性胃炎の進行に不安がつのっておりましたが、先生のお返事を拝読し、落ち着くことができました。

先生、本当にありがとうございました。

お言葉どおり半年後に改めて胃カメラを行うつもりです。
by yuki (2016-11-29 19:06) 

お名前(必須)

石原様
以前はありがとうございました。

また、教えていただきたいのですが、
緑茶を良く飲む方はタンニンの影響で萎縮性胃炎が進行しやすいと言っているドクターがいましたが、どう思われますか?

御手数ですが、よろしくお願いいたします。

by お名前(必須) (2017-06-16 12:29) 

fujiki

お名前(必須)さんへ
ざっと調べた範囲では、
緑茶が萎縮性胃炎を進行させるというデータと、
逆に予防するというデータとがあり、
比較的新しい知見は、
予防する(つまり良い働き)というものが多いようです。
お茶が胃を悪くするというのは、
新谷弘美先生が広められた説だと思いますが、
その根拠はあまり明確ではないように思います。
勿論飲みすぎも健康に良いとは言い切れませんが、
ほどほどに飲まれる分には、
問題ないとお考えになって良いように思います。
by fujiki (2017-06-16 12:50) 

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