So-net無料ブログ作成
検索選択

大腸癌の開腹手術と腹腔鏡手術の予後を比較する [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
大腸癌の手術と内視鏡との比較.jpg
今月のthe New England Journal of Medicine誌に掲載された、
手術法による癌の予後を比較検証した論文です。

たとえば大腸癌などの治療において、
腹腔鏡などを使った内視鏡手術と、
お腹を普通に切って行なう開腹手術とで、
どちらが良いかを選択するのは、
患者さんにとっては非常に難しい問題です。

両方の手術法を行なっている病院の場合、
2つの治療法がありますよ、
というような説明はされますが、
これまでにお腹を開けるような手術をしていて、
腹腔橋手術が困難であるようなケース以外では、
概ね新しい治療が勧められます。

医者も口では「どちらの治療も可能ですよ」
とは言いますが、
最初に腹腔鏡手術を勧める時には、
「開腹手術よりも負担が少なく、
傷跡も小さくなりますよ。
今ならすぐに予約をすれば、
1ヶ月以内には手術が可能です」
というような言い方になるのに対して、
開腹手術を希望した場合はどうなのですか、
などと尋ねると、
「私自身は今はあまりやっていないので、
また外来の予約を取り直して、
されている先生と相談してもらうことになります」
というような消極的なニュアンスになります。
(実際に患者さんからお聞きした話ですが、
伝聞なので細部は正確ではないかも知れません)

長い物に巻かれろ、というのか、
矢張り患者としては医者の機嫌を損ねることは得策ではない、
という気分が強く働きますから、
医師の説明のニュアンスを嗅ぎ取って、
勧められる治療の方を、
結果としては選択することが多いのではないかと思います。

以前であれば、
「こちらの治療を私はお勧めします」
と医者は堂々と言ったものですが、
最近ではそうした言い方をすると、
「患者の治療選択の機会を奪った」
というように言われかねないので、
そうした言い方はしません。
これこれの治療とこれこれの治療があり、
どちらを選ぶことも出来ます、
というような言い方になるのですが、
実際にはその一方を選択すれば医者は機嫌が良くなり、
もう一方を選択すれば機嫌が悪くなるので、
患者はそうした言葉や態度のニュアンスに、
敏感になる必要があり、
昔よりそうした点では苦労が増えたようにも思えます。

それでは医者の言う通りに全てを任せれば、
それで問題が何もないかと言えば、
群馬大学の腹腔鏡手術の事件なども報道されますから、
自分の身は自分で守らないといけませんし、
非常に悩ましいところです。

今回は大腸癌の中でも、
肛門に近い部位に出来る頻度の多い癌である、
直腸癌の開腹手術と腹腔鏡手術との予後の比較を行なっている、
文献をご紹介します。

日本の病院のサイトなどを見ると、
もう直腸癌手術の9割以上は腹腔鏡手術で施行されています。

腹腔鏡手術はお腹に小さな穴を幾つか開けるだけで、
そこから鉗子という器具などを挿入して、
手術を行なうものです。
身体への負担が少なく、
入院期間が短縮されるなどの利点が多くありますが、
その一方で術者にはより高い技術が必要とされ、
まだ新しい手技であるので、
その患者さんの予後が、
本当に開腹手術より優れているのか、
そのデータはあまり精度の高いものが存在していません。

そこで今回の研究では、
世界8ヵ国の30の専門施設において、
肛門から15センチ以内の1個のみの直腸癌の病変で、
周辺組織への浸潤や遠隔転移のない事例1044例を登録し、
くじ引きで2対1で腹腔鏡手術と開腹手術とに割り付け、
手術後3年後の時点での患者さんの予後を比較検証しています。

癌の進行度はステージ4は含まれていませんが、
周辺のリンパ節転移のある事例は含まれているので、
3分の1強はステージ3の事例です。
つまり、進行癌も含まれています。

その結果…

術後3年の時点での局所の再発率は、
腹腔鏡群、開腹手術群共に5%で違いはなく、
全生存率は腹腔鏡群が86.7%、
開腹手術群が83.6%、
無病生存率は腹腔鏡群が74.8%、
開腹手術群が70.8%と、
こちらも両群に有意な差はありませんでした。

今回の研究からは、
慎重に診断され施行された直腸癌の腹腔鏡手術は、
3年程度の観察期間においては、
開腹手術と同程度の有用性と安全性を有している可能性が高い、
ということは言えそうです。

ただ、日本においてはリンパ節郭清などのやり方において、
欧米と異なる面があるので、
この結果をそのまま日本での治療に適応することは、
適切ではないことは付記しておきたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

下記書籍引き続き発売中です。
よろしくお願いします。

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

健康で100歳を迎えるには医療常識を信じるな! ここ10年で変わった長生きの秘訣

  • 作者: 石原藤樹
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)





nice!(30)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 30

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

メッセージを送る