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ゴキブリコンビナート「ゴキブリハートカクテル」 [演劇]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日はもう1本演劇のご紹介です。
それがこちら。
ゴキブリハートカクテル.jpg
ゴキブリコンビナートの本公演が、
先日新宿2丁目のタイニィアリスで上演されました。

ゴキブリコンビナートは1994年に結成された、
「遅れて来たアングラ」とでも言うべき劇団で、
密室劇から野外劇と、
通常の劇場で客席と舞台に明確な区切りのある、
所謂「額縁舞台」には一切興味がない、
という現在では珍しいポリシーを貫いている集団です。

演劇公演以外にも活動していて、
それが地下アイドルの売り出しであったり、
神社の見世物小屋の継承であったりするところも、
また面白いのです。

寺山修司が生きていたら、
今寺山演劇を継承していると称する多くの劇団より、
遥かにゴキブリコンビナートを面白がったと思いますし、
土方巽が生きていたら、
上演中の舞台に居座って、
無償で毎回踊ってくれたのではないかと思います。

ともかく、
白日夢の如く面白く、奇怪で、無鉄砲で、
その割にロマンチストで小心で、
不謹慎で最低なのです。

そのゴキブリコンビナートが、
2年前から上演しているのが、
新宿二丁目の「タイニィアリス」という地下小劇場を利用した、
アトラクションスタイルの演劇です。

端的に言えばお化け屋敷か、
アングラ版シンデレラ城ミステリーツアーのような企画で、
小劇場の空間全体を使って、
闇の迷路を作り、
4人ひと組の観客が、
その迷路を彷徨いながら、
悪夢のような体験をする、
という聞くだけで僕のような好き者はウキウキして、
遠足の前の日のように、
観劇の前日は眠れなくなるような代物です。

水浸しになることもあり、
別個の液体が服に掛かってシミになることもあり、
迷子になって出られなくなることもあり(嘘)、
ニオイが付いてしまうこともあり、
何があっても一切のクレームは受け付けない、
ということなので、
どういう格好をしていこうかしら、
靴はどうしよう、ポンチョがあった方がいいかしらと、
色々と観劇前の楽しみも尽きません。

以下ネタバレがあります。

4人の観客がセットになり、
まず小さな入口から、
這うようにして真っ暗な迷路を進みます。
右も左も分からない道を、
手探りで進むのです。
途中で階段などがあるのですが、
それも手探りで感知して進みます。

一旦少し道が広がったところで、
さくらと名乗る女性が現れ、
一緒に行きましょうと謎の誘いを受けます。
その後は今度はフィールドアスレチックのようになり、
綱を手にしてシーソーのように傾く通路や、
足元がローラーでツルツル滑る道などを、
更に進みます。

漸くベニヤで作られた小さな密室にたどり着くと、
巨大なペニスを持った怪人がいきなり襲い掛かり、
さくらさんは犯された上に殺されてしまいます。

そこから、異様な悪夢のような冒険が始まります。

観客は便器を潜り、
変な箱に手を突っ込まされ、
黒い怪しい液体を飲まされ、
排便を叩き付けられ、
お尻のニオイを嗅がれ、
また変な通路を通り、
新宿2丁目の地下にある、
もう1つの都市に案内されます。

そこでは地下のクルド人とアルメニア人とが不毛な戦いを続けていて、
下水の有毒物質の影響で生まれた、
全身に目玉のある怪人などが跳梁跋扈する異世界です。

途中で実際に水がドードーと流れる滝が出現し、
トロッコを使い回した小さな船で、
観客は2人ひと組で滝を登るのですが、
1組登ったところで怪物が現れて、
観客は2人ずつにバラバラになり、
それから別に痛くはない拷問を受けると、
巨大なペニスの武器を付けさせられて、
女コマンドの指示の元に、
観客同士で戦う、という破目になります。

最後になり、地下帝国の主のような、
ペニスを丸出しの紳士が登場すると、
その陵辱された2人の娘が、
父親である紳士を取り合うために、
自分の身体を改造して地下の民族紛争を、
自炊していたことが明らかになり、
更にその紳士を支配する、
SMの女王様が登場すると、
彼女に散々叱られた観客は、
「おら、早く出ろ!」と言われて、
劇場から叩き出されておしまいです。

多分、体験していない方には想像がつかないと思いますが、
ほぼこの通りのことが現実に起こります。

ただ、そうリアルな感じではなく、
本当に夢を見ているような感じで起こります。

夢で怪物に襲われても、
怖いという感じはしても、
別に痛みは感じないし、
怪物が自分に触れた、という感じもないことが多いですよね。

まさにそのようにして、
物語は進行するのです。

物語のあるお化け屋敷というのは、
ない訳ではありません。
以前大駱駝鑑の舞踏手が出演したお化け屋敷、
というような企画もありました。
しかし、演劇的要素が、
しっかりあった、という訳ではありません。
演劇畑のスタッフが、
一から造り上げたというようなアトラクションは、
皆無だと思います。

演劇畑で言うと、
寺山修司は野外劇もやりましたし、
「阿片戦争」という芝居では、
観客を迷路に閉じ込めて芝居を見せました。
ただ、この作品は海外でのみ上演されていて、
実際にどの程度のことが行われたのかは定かでありません。
少なくとも日本での上演では、
ここまで徹底した迷路の体感密室劇は、
なかったと思います。
OM-2は以前観客を檻に閉じ込めて、
会場内を引き回すという芝居を上演しましたが、
その部分はワクワクするものの、
実際の作品自体は単調で退屈でした。

今回の舞台はただの思い付きには終わっておらず、
しっかり演劇となっているのが一番の魅力です。

最初に出会った女性が、
目の前で怪人に犯され殺される、
というオープニングから劇的ですし、
途中で観客が2つに別れ、
それぞれに調教されて、
民族紛争で戦う破目になる、
という辺りも設定が極めて凝っています。

そして、最終的に誘われた部屋では、
ほぼ裸の女性2人が、
自分を陵辱した父親に振り向いてもらいたいだけのために、
激闘を続けるというドラマがあり、
最後は変な歌を全員で歌います。
その奇怪な情感こそ、
まさにアングラです。

穿って考えれば、
民族紛争やテロの行方を辿って行くと、
ブルジョアの父と娘の、
極めて瑣末な愛憎劇に結び付くという辺りも、
現代社会の階層性の奇怪さを、
意外に巧みに表現しているようにも思えます。

我々無知な観客は、
女の招きで地下世界に誘われると、
エッチな情景に喜んでいるうちに、
思想もないままにテロリストに調教され、
互いに戦ったあげくに、
その戦いの裏にある愛憎のドラマを、
地下の秘密のアジトで目撃することになるのです。
ある意味非常に教育的で教訓的です。

主催のDr.エクアドルさんは、
大道具の会社の仕事もされているそうですが、
舞台の迷路の装置は、
それほど大きくはない空間を、
極めて巧みに迷路化していて、
裏の動線も考えれば、
神懸り的な偉業であると感心します。

ただ、受付の段取りは酷くて、
妻はそれだけで二度と来るか、と怒っていましたが、
僕は許したいと思います。
デタラメでお行儀が悪くて、
下品で最低で構わないので、
こういう実験的なワクワクするような試みを、
是非これからも続けて欲しいと思います。

Dr.エクアドルさん、
あなたこそアングラです。(良い意味で)

今日は再び次の記事に続きます。
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