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無能な医者がいることを前提に医療の質を上げるにはどうすれば良いのか? [身辺雑記]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

今日は雑談です。

確か、野田秀樹の「農業少女」の中の台詞だったと記憶しているのですが、
たとえば100人の同じ人が集団で仕事をしていると、
同じ人の筈なのに、
そのうちの10人は確実に怠けていて、
仕事をしないで全体の効率を下げているので、
その10人を排除してしまうのですが
そうすると今度は残りの90人のうちの9人が、
矢張り同じように怠けてしまう、
というような話がありました。

「農業少女」はナボコフの「ロリータ」を下敷きにしているので、
ひょっとしたらそちらに同じような話があるのかも知れません。

全く同じクローン人間でも、
沢山集まればそうしたことが起こる、
というのがこの話の肝で、
人間というものの本質を、
何か鮮やかに提示されていたようで感心した覚えがあります。

人間である以上、
どんな集団にどんな教育を施し、
どのような強圧的な仕組みで運営しようとも、
その仕事集団には、
必ず一定の比率では無能な者や怠け者がいて、
全体の統率を乱します。

しかし、集団そのものには、
集団としての水準というものはある訳です。

脱落者や怠け者や無能者がいるからといって、
その異分子を集団から排除すれば、
集団の質が向上するかと言えば、
決してそうではない、
というのがこの話の教訓です。

失敗は許されないという仕事があり、
警察や消防や司法などと並んで、
医療もその1つです。

異物混入と同じように、
失敗を許されない仕事に、
実際にミスがない、ということは有り得ないのですが、
信頼というのはこうした仕事の権威を守る意味において、
非常に重要な幻想の盾なので、
集団の中での無能者が、
取り返しの付かないようなミスをしても、
それをないものとして隠したり、
取り繕ったりするのが、
少し前までの組織防衛の手段でした。

集団によっては、
今でもこうした対応を、
取っているところはあるのではないかと思いますが、
医療の世界においては、
これまで守られていたミスは、
内部告発で明るみに出され、
そうしたことが大好物のマスメディアによって、
バラエティーショーの生贄として、
大衆の餌として娯楽に転化されるようになりました。

勿論医療ミスというものは、
患者さんの命や身体に直結し、
そこに多くの被害をもたらす可能性のあるものですから、
それが不用意に隠されるということに、
大きな問題があることは間違いがありません。

しかし、
だからと言って、
それが面白おかしくある種の懲罰のように、
娯楽として垂れ流されるのがあるべき姿とは思えません。

医療の世界、特に医者の世界において、
その権威の失墜が顕著になったのは、
一種の内輪揉めが、
日常茶飯事で起こるようになった点にもありました。

その集団において、
自分は100人のうちの90人であって、
無能な10人ではないと信じ、
この集団ではそうした落伍者は許されない、
と信じているプライドの高い医者は、
ある時は勤務医による開業医への罵倒の形を取り、
ある時は製薬会社からの情報を無邪気に信じる同業者への罵倒や、
過去の常識をアップデートせずに、
日々の診療を続けている先輩への罵倒などの形を取り、
自分は正しい仕事をしているのに、
自分の属する世界には、
誤った仕事をしている無能な奴らが多いと、
それを一般の多くの方が見ている、
SNSのような世界で、
「娯楽」として垂れ流します。

製薬会社と医者との癒着が、
問題であることは事実でしょう。
しかし、交流のある世界での情報のやり取りにも、
一定のメリットはあるように思います。
それを、製薬会社の担当者から情報を得るような医者は無能だ、
というような言葉を、
呪詛のように垂れ流すのは、
僕にはとても節度のある態度とは思えません。

正しい診療や正しい治療、というものは、
確かに存在することは確かでしょう。
しかし、一般に使用が許され、
適応病名もあり、保険収載もされている医薬品について、
それを使用しているというだけで、
「無能な医者」のように言い募るのは、
如何なものでしょうか?

それも1つの排除の論理であり、
そうした攻撃的な言動を繰り返すことで、
結局は集団の質を下げることに繋がるのではないでしょうか?

こうした攻撃によって無能者を吊るし上げ排除しようとすると、
無能ではないけれど有能であるとも信じられない、
大多数の医療者は、
自分で考えることを止め、
「権力者」に付いていこうとするのではないでしょうか?
本当は製薬会社の担当者から、
情報を得ることもメリットのある場合もあり、
「悪の薬」のように言われている薬も、
それほど悪いものではないと思っていても、
そんなことは言えないので、
却って自分で考えることを止め、
思考停止に陥るのです。

こうしたやり取りで、
この集団の質が向上するとは僕には思えません。

それでは、どうすれば良いのでしょうか?

僕の個人的な考えは、
どんな集団であれ無能で不勉強で怠け者はいるので、
それを当初から織り込んだ上で、
その集団全体として、
その無能者をフォローし、
彼らのミスが決して被害をもたらさないように、
トータルにカバーするようなシステムこそが、
求められているのではないか、というものです。

不勉強な医者もいれば、
勉強熱心な医者もいて、
器用な医者もいれば不器用な医者もいるのです。

医者は障碍者や恵まれない人のためにつくそうとか、
そうした気持ちを開陳される方は多いのですが、
不勉強で怠け者の医者をサポートしようとか、
助けようとはあまり思いません。
ただ、僕はそれはそれほど違うことではないのではないか、
いついかなる時でも、
集団の中で、そこから遅れる成員が生じるのが、
人間というものの特性なので、
集団は常にその遅れた成員のために、
フォローする心を持つことこそが、
その集団の質を高め、
それが仕事の集団であれば、
トータルにその仕事の質を高め、
ミスを減らすことに繋がるのではないかと思えるのです。

個人的に思うことは、
重要な方針の転換は、
医療界全体で足並みを揃えて行なってゆくことが、
最も重要ではないかということです。

ある薬が良くないことが分かったとして、
それが通常の手続きで、
継続的に患者さんに使用されているものであるなら、
その使用を控えるような流れを作ってゆくことは、
それほど簡単なことではありません。

そうした中で、
外野に向かって、
「俺はこの薬は悪い事を知っているから使わないぞ!」
と叫ぶようなことをすると、
実際には多くの医療者が、
まだ患者さんにその薬を使っていて、
それは別に違法なことでもなく、
既に海外では使用が禁じられている、
という類のことでもないのですから、
殊更に患者さんには不安を招き、
また主治医への不信を募らせるだけで、
トータルな医療状況として見た時には、
むしろネガティブな影響を多くするのではないでしょうか?

無理解な医者や不勉強な医者も含めて、
全ての医療者がその薬を処方しない方向に、
無理なく向かえるような環境作りこそが、
まずは必要なことなのではないかと思いますし、
代替的な治療なり、より望ましい治療があるとして、
その方向に、
全体で無理なくシフト出来るような方法を、
集団全体で模索し、
それがしっかり定着の方向へ向かうまでは、
無用に集団内の脱落者を非難し、
利用者である患者さんを不安に陥れるような行為は、
たとえ善意であっても、
慎むべきものではないでしょうか?

僕が研修医の頃の、
学会の指導的な立場の先生は、
その多くが非常に紳士的な態度で、
学生には物凄く厳しかったのですが、
一旦同じ医者として接すると、
本当に同等の立場として、
ちょっと不気味に思えるくらい、
丁寧で控え目で、
こちらを立てるような話し方に終始していました。

こちらの疑問点に関しては、
本当に噛んで含めるように説明してくれました。
要するに今思えば、
僕のことを「無能な同業者」として理解し、
その上でこちらのレベルに自分を落として、
医師の世界をトータルに守ろうと、
そうした姿勢を取っていたように思います。

色々な医者がいることは勿論確かなことでしょうし、
批判的な発言を敢えてされる方は、
勿論有能な方で、
素晴らしい見識と技術と知性をお持ちなのでしょうが、
それでも、
同業者を悪し様に罵ることは、
結果として医者の集団全体の評価を落とし、
信頼を失わせる行為になるのではないでしょうか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 5

やまんば@糖尿病

混沌のあとに来る本物の未来
それが「医者の集団全体の評価を落とし、信頼を失わせる行為。」であるとしても医療者のミスや不勉強によるは間違った治療は指摘するべきで、
そのために信頼勝ちに落ちたとしても、それが真実なの姿なら医療者も患者もそこから立ち上がるべきかと思います。
 
うやむやな土台の上に何を築いたとしてもそれは砂上の楼閣であり
、真実を土台にしないで本物の何かはこの世にあらわれることはない、
と言うのは実現不可の理想論でしょうか?

私は今の状況を、患者の自立を促すための前奏だと思っています。
健康関連を扱ったバラエティショウは簡便に情報を得る機会を与えてくれます。情報弱者とってはありがたいものです。
私は真実を知り尽くしたとは到底言えませんが、入ってくる医療に関する情報の一端を知り、
医師に丸投げすると言う態度は自分で自分の体を知ろうという努力に変わりました。
私のようなものでもこうして自立に向かっているので世の多くの患者の自立を促しているの。と私は見ています。
 
近隣の方の話の中で従来薬の無効が判明したお薬を旧態善と使われてると言うことが分かったときは、真実を言わざるを得ません。
 
放って置くとその方は治る機会を失ってしまうからです。
このような場面に出くわしたのは数知れません。


真実は覆い隠すことは出来ないのだと思います。
やがては混沌が来るでしょうが、そのあとに来る本物の未来を私は見つめています。
by やまんば@糖尿病 (2015-01-10 11:11) 

ゆう

やまんば@糖尿病さんのおっしゃることも良く分かるし
元来私もそういう思考になりがちな人間ではあるので
膿は膿としてさっさと出して立て直したほうが
より早くより健全な状態になれるという幻想を持ちがちで
しかもその方がすっきりすると思ってしまう傾向があります。
また先生の意見を聞くと患者としては
どうしても同業者を擁護し業界を守ろうとしているように
感じてしまう部分があるのも分かる気もします。
そして私自信も頑張って医師と対等に話せるよう
自分の怪我や病気を共に治していけるようならねばと思ってはいますが
やはり知識不足、コミュニケーションの難しさ、時間の制限などもあり
それを言い訳にしてか余程気合を入れないと
いつの間にか医師に意見や見解を委ねて流れを任せてしまいます。
理想は理想として現実がどこまで良くなっていくかは
どんな過程を経たかよりも患者と医師の努力次第なのだと思いますし
いくら頑張っても完全に問題がなくなるわけではないと思います。
先生もそのような話を書いていらっしゃいますし。
そしてそこにたどり着くための混沌は
患者にとっても少ないほうがいいに決まっていると思います。
混沌の間に隙間に落ちて命を失う人が出た場合
そしてそれが身内でもそれは医療改革の犠牲だと
すんなり受け入れられるでしょうか?
マスコミの言うことを鵜呑みにせずネットや専門書で調べ
セカンドオピニオンなどの意見を聞く努力をすべての患者がすれば
その混沌は起こらないで済むはずです。
しかし、そんなのは高すぎる理想であって無理なことです。
医者の集団全体の評価を落とし、信頼を失わせる行為を繰り返すことは
上記のような患者には無理な理想を
医師側だけに無理やり押し付けるような話なのだと思います。
医師不足で現になくなっている人もいるこの国の医療です。
混沌で医師不信、医療不信、更なる医師不足が起こって
失わなくても良い命を失うリスクを一時の混沌では片付けられないと思います。
でも、私たちも努力するから先生方も皆努力して欲しいし
有能な医師は無能な医師をサポートするだけでなく
余りに無能であれば業界が引導を渡して欲しいし努力を促して欲しいとも思います。

いい先生と出会うのは簡単ではないですし
人間だから合う合わないもあるのでしょうし
自分の状態を知って先生ときちんと向き合うのは本当に難しいです。
正直病院に二度と行きたくないとうんざりする事も多いです。
でも、こちらのブログを覗くと
悩み考えながら頑張ってくださる先生がいるのがわかって
気持ちが少し明るくなれる気がします。
患者も諦めちゃいけないですね。
少しでも患者の気持ちが分かる勤勉な先生が増えるよう願っています。
by ゆう (2015-01-12 20:42) 

やまんば@糖尿病

丁寧なコメント返し、恐縮していますありがとうございました。
「混沌の間に隙間に落ちて命を失う人が出た場合そしてそれが身内でもそれは医療改革の犠牲だとすんなり受け入れられるでしょうか?」との言に胸をつかれました。
混沌の隙間は色んなシーンが考えられます。
しかしそれは「医療改革の犠牲」と言うことで救いはあるでしょう。
藪医者の誤診や手術の技量不足にるる事故でなくなったのとは全然違います。その場合は、怨恨のため身も焼かれる思いだと思われます。
そしてその無能の医師は生きつずけるのですが悔恨と慙愧で生涯悩むか、それらから免れ、人でなくなるかのどちらかです。
 命を預かる医療の現場には無能の医師等いてはいけないのです。
この視点をはずさなければ、逆に医師不足には陥る事はないかもしれないと私は思います。
 と言うのは、(コレも理想論かもしれませんが)誇りの持てる職業として志す強い人間が現れてくると思うからです。
 そしてこの医療改革はものすごく緩やかに進むむのです。
急進的なものに本物はないといいます。
 本物はゆるやかにすすむといった哲人がいましたね。
by やまんば@糖尿病 (2015-01-14 14:52) 

めめ

お疲れさまです。こんにちは。

同業者でありながら、病院名や実在する医師名を挙げて、2チャンネルや他のSNSでたたき続けている方々いらっしゃいますね。
もちろん、偽医師もいるでしょうが。

スマホの画面越しに見ていると、医師のモラルはどうなっているやらと思います。
相手を攻撃するのではなく、違いは違いとしてディスカッションしたいものです。
by めめ (2015-03-25 15:34) 

fujiki

めめさんへ
コメントありがとうございます。
同業者の悪口は、
医者の比較的特徴だと思いますが、
あまり建設的ではないものが、
殆どのように思います。
口調に性格の悪さが滲むような感じが、
また不快に思えるのです。
by fujiki (2015-03-26 08:05) 

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