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カルシウム摂取とFGF23との関連性について [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
FGF23と食事との関係.jpg
2011年のClin J Am Soc Nephrol誌に掲載された、
骨から分泌される一種のホルモンと、
食事との関連性についての論文です。

1日1400mgを越えるカルシウムの摂取が、
中高年の女性においては、
心筋梗塞などによる死亡のリスクを増加させるのではないか、
という疫学研究の結果を昨日ご紹介しました。

複数の疫学データで、
ほぼ同一の結果が出ているので、
こうしたことがあること自体は事実のようなのですが、
そのメカニズムは現時点では不明です。

ただ、
昨日ご紹介した論文では、
そのメカニズムの推論として、
FGF23という一種のホルモンの関与が、
想定されています。
そこで引用されている文献の1つが、
上記のものです。

FGF23というのはどういうもので、
どのような働きをしているのでしょうか?

FGF(fibroblast growth factor)23は、
線維芽細胞増殖因子と訳されています。

FGF23蛋白は227個のアミノ酸から成り、
骨の組織、特に骨細胞から分泌される、
一種のホルモンです。

このFGF23の主な働きは、
活性化ビタミンDを低下させ、
腎臓の尿細管における、
リンの再吸収を抑制することにより、
血液のリンの濃度を低下させることにあります。

僕が大学病院の内分泌の医局にいた頃の考え方では、
血液のリンの濃度を決定しているのは、
主に副甲状腺ホルモンと活性型ビタミンDである、
とされていました。

しかし、
副甲状腺ホルモンは血液のカルシウムを上げると同時に、
リンの排泄を促進するので、
リンはカルシウムとバランスを取るように動く、
ということになります。
ビタミンDはリンの腸管での吸収を促進しますが、
同時にカルシウムの吸収も促進し、
その働きは副甲状腺ホルモンによっても促進されます。

つまり、
リン単独の調節系はない、
ということになり、
これは何となく理屈に合わないような気が、
当時からしていました。

それがFGF23の発見により、
この骨から分泌されるホルモンが、
直接的に尿細管に働いて、
リンの再吸収を抑制し、
これも直接的にビタミンDの活性化に関わる酵素を調節して、
活性型のビタミンDを抑制することにより、
単独で血液中のリンの低下に結び付いている、
ということが明らかになったのです。

骨軟化症という病気があります。
これはリンの欠乏により正常な骨が出来なくなる病気で、
先天性のものはくる病と呼ばれています。

この病気では、
何故遺伝的にリンが低下するのかが不明だったのですが、
最近になりその一部は、
FGF23の先天的な過剰が、
その病態であることが明らかになっています。

シンプルに言えば、
正常な骨を作るためには、
FGF23が正常に分泌されることが必要で、
それが欠乏すれば異常な石灰沈着が起こり、
過剰になれば骨は脆く脱灰してしまうのです。

上記の論文は、
このFGF23と食事との関連性を見たもので、
リンとカルシウムを多く含む食事により、
FGF23濃度は上昇し、
血液のリンの濃度はそれにより低下しています。
この時の食事には、
2880mgのリンと1700mgのカルシウムが含まれており、
これは昨日の結果とも符合するものです。

つまり、
カルシウムやリンを多く含む食事を定常的に摂ることにより、
FGF23は敏感に反応して、
リンを低下させる方向に身体を誘導するのです。

それでは、
何故FGF23が上昇すると、
それが心疾患による死亡リスクの増加に、
結び付くのでしょうか?

これに関しては、
2008年のNew England…に、
比較的有名な論文が出ていて、
これによると腎不全の患者さんにおいては、
リンの上昇が定常的に起こるので、
それによりFGF23が増加し、
その上昇がリンの濃度とは独立した危険因子として、
心臓病のリスクを上昇させる、
という結果が得られています。

それまでの知見では、
どちらかと言えばリンの血液濃度が上がること自体が、
心臓病のリスクに結び付く、
という考え方が主流であったのですが、
そうではなく、
リンの上昇に伴うFGF23の上昇が、
心臓病のリスクを上昇させているのでは、
というように考え方が変わったのです。

更には2011年のJ Clin Invest.誌に、
そのメカニズムを検証した論文が出ていて、
それによると、
FGF23が心臓の筋肉細胞にあるFGF受容体を介して、
直接的に病的な心肥大を引き起こす、
ということをネズミの実験で実証しています。

ここにおいて、
腎不全による心臓病のリスクの上昇や心肥大は、
高リン血症に伴って生じる、
FGF23過剰状態にその本質的な原因がある、
ということがほぼ明らかになったのです。

カルシウムの過剰摂取が、
何処までFGF23の上昇に結び付くのかは、
まだ分かっていないと思いますが、
FGF23の上昇が心臓病の独立した危険因子であることは、
ほぼ間違いがなく、
それがカルシウムとリンの代謝や摂取量と結び付いている、
という事実は、
今後よりその意味合いを増すもののように思えます。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

ハッタ マサミ

ロンドン在住53歳女性です。1年前から 非びらん性胃食道逆流症(NARD)と思われる病気になってしまい、明日の胃酸のモニタリング検査の前に先生のブログを今読ませてていただきました。
ほかのどのサイトの記事よりも参考になりました。不安がいっぱいなのでしたが、少し安心をさせていただきました。ありがとうございました。
by ハッタ マサミ (2013-03-07 02:16) 

fujiki

ハッタ マサミさんへ
コメントありがとうございます。
少しでもご参考になる点があれば嬉しいです。
症状が早く取れるといいですね。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2013-03-07 08:10) 

05141

先生、教えてください。カルタンは何故甲状腺機能低下症に禁忌なのでしょうか。
by 05141 (2013-12-17 14:17) 

fujiki

05141さんへ
これは紛らわしいことがよく書いてあるのですが、
甲状腺ホルモン剤を飲んでいる人が、
同時に炭酸カルシウムを服用すると、
甲状腺ホルモン製剤の吸収が妨害されて、
機能低下が悪化することがある、
という意味です。
本来は時間をずらして服用すれば、
特に問題はないので、
禁忌という表現は強過ぎると思います。
甲状腺機能低下症そのものが悪化する、
というような意味ではなく、
ホルモン剤を飲んでいる人で、
その効果が減弱するリスクがある、ということです。
2000年前後に文献が幾つか出ているので、
それを元にして付けられたものだと思います。
by fujiki (2013-12-18 22:54) 

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