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コレステロール降下剤の隔日療法を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
スタチンの隔日投与論文.jpg
European Journal of Internal Medicine誌に今年掲載された、
コレステロール降下剤の隔日投与についての文献です。

これは文献のレビューなので、
そう大した内容のものではありません。
ダウンロードの30ドルというのは、
ひでえなあ、という気がします。
メタアナリシスというのでもなく、
これまでの同テーマの文献を検索し、
その内容をまとめただけのものです。

失礼な言い方をすれば、
Medlineで検索して、
ちょちょいと内容を見れば、
誰でもすぐに書けてしまいそうな気がします。

ただ、実際の臨床においては役に立つ内容で、
あまり日本語でのこうした解説はないと思います。

スタチンと呼ばれる、
コレステロールを下げる薬があります。

最初に発売されたのは、
プラバスタチン(商品名メバロチンなど)という名前の薬で、
画期的な新薬と言われました。

その後、
シンバスタチン(商品名リポバスなど)、
フルバスタチン(商品名ローコールなど)、
アトルバスタチンン(商品名リピトールなど)、
ピタバスタチン(商品名リバロ)、
ロスバスタチン(商品名クレストール)が、
続々と日本でも発売されました。

これらの薬剤は、
コレステロールの合成酵素の阻害剤で、
身体で産生されるコレステロールを低下させることにより、
血液のコレステロールを減少させる作用の薬です。

コレステロールの低下作用以外に、
炎症を抑えるような作用も併せ持つと言われ、
その使用により、
主に心疾患のような、
動脈硬化性の病気の進行予防に、
有効性が確認されています。

しかし、
このスタチンには、
身体の筋肉を障害する横紋筋融解症や、
肝機能障害、胃腸症状、糖尿病の誘発(一部のスタチンはないという説もあり)、
認知機能に対する悪影響(これも一部のスタチンに限るという説もあり)など、
それほどの頻度ではないものの、
多くの副作用が存在することが知られています。

その比率は新薬の臨床試験では、
5%未満ですが、
実際の一般臨床での統計では、
2割に達するという報告もあります。

これが重症の副作用であれば、
すぐさま薬を中止して、
経過を観察することになりますが、
一般の臨床において問題になるのは、
数値の異常が見られるものの、
必ずしも使用を中止するほどのものではない、
という場合や、
筋肉痛や胃腸症状などを、
検査では問題はないものの、
患者さんが強く訴えるような場合です。

個人的な経験では、
筋肉が壊れることの指標である、
CPKという数値が、
スタチンの使用後に正常上限の2~3倍程度に上昇し、
それ以上の悪化や自覚症状はないという場合や、
検査数値には何ら問題はないのですが、
患者さんが手足の筋肉のだるさや痛みを、
強く訴えるような場合などが、
意外によく遭遇し、
対応を迷うところです。

こうしたケースで試みられ、
一定の効果が期待出来るのが、
毎日薬を飲むのではなく、
1日おきに飲むなど、
休薬期間を長く設けるような使用法です。

自覚症状のご訴えの場合には、
1日おきの使用を提案し、
了承して頂けることが意外に多く、
多くの場合それにより症状が改善した、
というように言われる方が多いのです。

これは要するに、
心理的な効果も付加されているように思えます。

上記の論文においては、
これまでに発表された、
スタチンの休薬期間を設ける使用法の文献を、
まとめて紹介し考察を加えています。

15編の論文が1日おきの隔日投与を行なっていて、
その効果を検証しており、
少数ですが1週間に2回や、
場合によって1週間に1回の使用、
という方法も文献化されています。

ただ、文献の多くは対象人数もせいぜい数十人と、
こうした臨床研究としては少ないですし、
くじ引きをして患者さんを割り付け、
主治医にもどちらが選ばれたか知らせないような、
信頼性の高い試験は、
たった1つしか存在せず、
それはアトルバスタチン(リピトール)を使用した試験で、
10㎎の連日投与と隔日投与で、
コレステロールの低下作用には、
有意な差はついていません。

それ以外の試験も、
概ね同等の結果で、
連日投与でも隔日投与でも、
思ったほどの効果の差は見られていません。
そして、
連日投与より副作用による中断は、
少なくなっています。

ただ、これが週に1回や2回の投与ということになると、
明確に連日投与とは差が付いて、
有効性は確認出来ません。
まあ、当たり前ですね。

隔日投与でも連日投与でも、
それほどの差がないとすれば、
医療経済的にも安全性の面でも、
スタチンの隔日投与というのは、
もっと検討を深める必要がありそうです。

スタチンは原理的に、
横紋筋融解症を来さなくても、
ある程度の障害性を、
筋肉細胞に与える可能性があり、
その見地からはスタチンの効果が消失する期間を、
定期的におくことは、
それにより効果に差が出ないとすれば、
むしろ理に適った投与法、
という考え方も出来ます。

この場合、
上記の論文の筆者の見解としては、
より半減期が長くて効果の安定している薬が、
隔日投与には望ましく、
ロスバスタチン(クレストール)とアトルバスタチン(リピトール)が、
他剤より推奨される、
というように書かれています。

ロスバスタチン(クレストール)の半減期は19時間もあり、
肝臓の酵素であるCYPの代謝を10%以下しか受けないので、
他剤で肝機能障害が出現したケースでも、
隔日投与でロバスタチンを再開、
という選択肢は有用性を持ちます。

アトルバスタチン(リピトール)の半減期は14時間ですが、
その効果の基準である酵素の阻害自体は、
20~30時間持続する、というデータがあり、
これを信用するなら、
隔日投与も悪くない、
ということになります。

もう1つの原理的候補はピタバスタチン(リバロ)ですが、
この薬は半減期が11時間でCYPの代謝を受けませんが、
データの蓄積は他剤に劣り、
今回の文献の中にも、
この薬のデータはありません。

問題はスタチンの使用の大きな目的は、
心血管関連の病気の予防にあり、
そのデータは全て連日投与のもので、
隔日投与のデータはない、
という事実です。

コレステロールの低下率に差がなければ、
予防効果にも差がない筈だ、
という考え方も出来ますが、
スタチンの効果はコレステロールを下げるだけではない、
というデータもあるので、
これは矢張り、
大規模な臨床試験を行なって、
隔日投与でも連日投与との効果に差のないことを、
予防効果の面で証明する必要があるのです。

しかし、
上記の文献を読む限り、
そうしたデータはこれまでにはなく、
この点ではまだ隔日投与の有用性は、
推測の域を出てはいません。

こうした限界があるので、
現時点ではスタチンの隔日投与を、
最初から行なうのは推奨出来ませんが、
連日投与が有害事象のため継続困難であったり、
患者さんが体調不良を訴えるような場合には、
勿論有害事象の程度や性質にもよりますが、
隔日投与に切り替えて経過をみる、
という選択肢は検討に値すると思います。

今回思いましたが、
このスタチンの隔日投与はまだ例数の多い論文がなく、
100例規模の検討でも、
結構評価は高い研究になりそうです。
もし大学に在籍していたら、
すぐにでも手掛けたいなと思いますが、
診療所では10例20例でせいぜいですから、
難しいですね。

どなたかご検討下さい。
穴場ですよ。

今日はスタチンの隔日投与の効果についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

(付記)
スタチンの一般名の表記に誤りがありましたので、
コメント欄でご指摘を受け、確認の上訂正しました。
(平成28年4月19日午前8時修正)
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はるな

アトルバを処方され一ヶ月。最近、筋肉痛に気が付き、PCにて薬の副作用を探していたら、このブログにたどり着いた。
現在、連日の服用だが、隔日にしてみようかと。
食事療法も併用しているので、ここ何ヶ月で、数値が下がり次第、薬をやめたい。
by はるな (2014-08-22 15:43) 

fujiki

はるなさんへ
早めに主治医の先生を受診され、
CPKなどを測定して、
筋肉痛が薬剤由来かどうかを、
確認するのが適切ではないかと思います。
一時的な痛みは本当に何とも言えません。
ただ、症状が持続してご心配なようでしたら、
一旦中止として、可能な限り速やかに受診し、
その旨先生にお話されても良いと思います。
by fujiki (2014-08-24 22:56) 

アサノ

従来よりLDLコレステロール値が160~180と高かったのですが、薬が嫌いで医者には薬を断ってきましたが、前回の健診で200代の数値になった時点で、とうとうアトルバスタチン5mgを処方され、一か月間毎朝飲み続けましたところ、87という正常値に激減、効果に驚くと同時に医者(大病院)にはもう薬を止めたい旨相談したところ、もう一か月飲み、その後かかり付けの医院と相談してとのことで同薬をまた28日分処方されました。納得がいかず検索したらこのサイトに辿り着きました。一度隔日の服用を試みようかと思いました。とくに目立った副作用は感じませんでした。
by アサノ (2016-02-24 21:22) 

fujiki

アサノさんへ
隔日で様子をみるのは、
選択肢の1つだと思います。
御参考になれば幸いです。
by fujiki (2016-02-25 07:43) 

七誌

アトルバスタチンを自己判断で調節するのか(呆れ)
by 七誌 (2016-03-24 18:59) 

更年期のかあちゃん

初めまして。
アトルバスタチンで検索してたどり着きました。
半年前に処方されてしばらくして全身の筋肉痛やだるさで、副作用を疑って自己判断で服用を中止しました。
しばらく体調が良くなったので、やはり副作用だったのだと思っていたのですが、インフルエンザで体調を崩してから狭心症の症状が2度起きたので、不安になってまた朝1錠のみ始めました。
一週間頃からまた筋肉痛とだるさ。後悔してます。
今度は主治医に訴えてみます。
by 更年期のかあちゃん (2016-04-16 15:21) 

じゅんいち

大変参考になる記事どうもありがとうございます。
一点気になるのですが
ロバスタチン(クレストール)とありますが

ロバスタチン(Lovastatin) メバコール メルク(MSD) 初めて製品化されたスタチン(1987年)

ロスバスタチン(Rosuvastatin) クレストール 塩野義製薬/アストラゼネカ
とは別物ではないでしょうか。

by じゅんいち (2016-04-19 00:00) 

fujiki

じゅんいちさんへ
ご指摘ありがとうございます。
半減期が19から20時間なので、
ロバスタチンではなくロスバスタチンで間違いないと思います。
取り急ぎ修正しました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
by fujiki (2016-04-19 08:27) 

さんぽ

スタチンの副作用について調べていてこちらを拝見しました。
ロスバスタチン5mgを処方されて、朝食後服用したところ非常に疲れやすくなり、次の朝にやや軽快したのでまた服用したところやはり疲れがひどくなりました。医師からは筋肉痛が出たら服用を中止するよう言われていますが、疲労感も似たような現象かと思い昨日1日中止してみたところ体がとても軽くなりました。

さてここで疑問なのですが、こうした短期的な副作用の他に長期的に続けることによる不具合は分かっているのでしょうか。
つまり、
「横紋筋融解症を来さなくても、
ある程度の障害性を、
筋肉細胞に与える可能性があり」
の部分なのですが、長い目で見た時にどのくらい寿命を縮めていることになるのか、それは休薬期間を設けることで無視できる程度になるのかということです。疲労感があるくらいで他に大した影響がないなら我慢すればいいかも知れないのですが、ちょっと経験したことのない反応のためとても嫌な感じがしています。
長文失礼致しました。
by さんぽ (2017-11-13 11:49) 

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