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カルシウムサプリメントの心筋梗塞発症リスクについて [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
カルシウムサプリメントのリスク.jpg
Heart誌の今月号に掲載された、
カルシウムの摂取量と、
心筋梗塞や脳卒中の発症リスクとの関連についての、
疫学研究の論文です。

カルシウムやビタミンDのサプリメントを、
健康のために使用している方は、
非常に多いのではないかと思いますし、
骨粗鬆症や骨折の予防のために、
医療機関でカルシウムを処方されている方も、
多いのではないかと思います。

カルシウムの不足が、
多くの病気を誘発する危険因子になり、
カルシウムの適切な摂取が、
身体にとって必要不可欠なものであることは、
皆さんも良くご存じのことだと思います。

カルシウムが不足すれば、
骨が脆くなって骨粗鬆症の原因となりますし、
血圧が上昇し易くなり、
イライラの原因にもなると言われます。

幾つかの信頼の置ける疫学研究において、
高血圧や糖尿病、肥満の発症と、
カルシウムの摂取量との間には、
逆の相関があるとの結果が得られています。
つまり、
カルシウムが不足すると、
高血圧や肥満や糖尿病の増える可能性があります。

脳卒中や心筋梗塞の死亡リスクとも、
相関があるという報告があります。
勿論これもカルシウムが少ないと、
そうした病気のリスクが高くなる、
というものです。

ただ、全ての研究でそうした結果が出ている、
という訳でもなく、
あまりカルシウムの摂取と病気との間に関連性はなかった、
とする報告も実際には多く存在しています。

こうした結果があれば、
カルシウムをサプリメントとして摂ることにより、
心筋梗塞や脳卒中が、
予防出来るのではないか、
という考えが当然生まれます。

しかし、一方で動脈硬化が進行すると、
血管の壁にカルシウムが沈着する、
という現象があります。

身体の状態が不安定になると、
カルシウムが骨に入るのではなく、
骨以外の組織に沈着する、
という現象が起こるのです。

こうした現象の起こり易い状態にある人が、
カルシウムをサプリメントとして摂取すれば、
却って身体に害になると、
考えられなくもありません。

実際、
最近のメタアナリシスと呼ばれる、
これまでの疫学研究を併せて解析した結果では、
カルシウムのサプリメントを利用していた人で、
心筋梗塞のリスクが上昇した、
という報告があります。

果たして、
カルシウムのサプリメントは、
心筋梗塞や脳卒中の予防に関して、
有益なのでしょうか、
それとも有害なのでしょうか?

この疑問を解決するために、
今回の論文においては、
1990年代に始められた、
ドイツの大規模な疫学研究のデータを活用して、
カルシウムの摂取量と、
その後の心筋梗塞や脳卒中の発症リスクとの関連を、
検討しています。

対象者は登録時35歳~64歳の23980人で、
登録時点までに、
心筋梗塞や脳卒中を発症した人は除外されています。

観察期間は平均11年間で、
その間の心筋梗塞や脳卒中を発症率と、
カルシウムの摂取量との関連性を検証しています。、

カルシウムの摂取量は、
食事調査の聞き取りによって行われ、
基本的には登録時のデータを利用しています。
サプリメントを使用していない方では、
食事のカルシウム摂取量を、
その量により4つのグループに分類し、
そのそれぞれと、
病気のリスクを計算しています。
その量は少ない方で、
1日平均500mgくらい、
多い方では1100mgくらいです。

そして、
サプリメントの使用群では、
カルシウムのみのサプリメントを使用していた人と、
他のサプリメントも併せて使用している人とに、
分けての同様の解析を行なっています。

その結果…

トータルには、
カルシウムの摂取量と心筋梗塞や脳卒中との間には、
あまり明確な関連性は認められませんでした。

ただ、4つの群に分けた摂取量のうち、
多い方から2つ目の群、
実際には平均の摂取量が820mg程度の群においては、
一番少ない群に対して、
心筋梗塞の発症リスクが、
相対リスク(ハザード比)で、
有意に31%低下していた、
という結果が得られました。
脳卒中の発症リスクやトータルな死亡リスクについては、
有意な差はありませんでした。

よりカルシウム摂取の多い群では、
有意差は出ていないのですから、
これは微妙な結果です。

この検討では、
カルシウムの摂取を、
乳製品によるものとそうでないものとに分けていて、
傾向を見ると、
カルシウムの摂取量が多い人は、
概ね乳製品の摂取量が多いのです。

著者らの見解としては、
これはカルシウムより、
乳製品に含まれる他の栄養素が、
心筋梗塞の減少に繋がったのでは、
という推論をしていますが、
その解釈も微妙な感じがします。

興味深いのはサプリメントの結果で、
カルシウムを含むサプリメント使用者では、
そうでない人に比べて、
心筋梗塞の発症リスクが有意に1.86倍に上昇し、
特にカルシウムのみのサプリメントを使用していると、
そのリスクは更に高く、
2.39倍となっていました。

つまり、
カルシウムのサプリメントを使用すると、
心筋梗塞が起こり易くなる、
という結果です。

最近のメタアナナリシスと同様の結果であり、
今回の結果も含めると、
安易なカルシウムのサプリメントの使用が、
何らかのメカニズムにより、
全ての方に対してではないにしても、
特定の方にとっては、
心筋梗塞の発症リスクになることは、
事実と考えて良いように思います。

問題は何故食事からのカルシウムでは、
そういうことは起こらないのに、
サプリメントのみでそうした結果が出るのだろうか、
というところにあります。

ある種のバイアスは、
否定出来ないように思います。

カルシウムのサプリメントを利用している方には、
ある種の傾向があって、
カルシウムのサプリメント自体が悪いのではなく、
その傾向が心筋梗塞の起こり易さと結び付いているのでは、
という考え方です。

ただ、タバコやアルコール、高血圧など、
考えられる因子は分析され補正されていて、
現時点でそうしたバイアスは明らかではありません。

仮にサプリメントのカルシウムに、
食事にはない特殊性があるとすると、
1つにはその量の問題で、
もう1つはその身体への吸収が、
比較的急激に起こる、
ということです。

摂取量の差については、
今回の研究でも、
明確なサプリメントの摂取量は調べられていないので、
検討は困難です。

僕の個人的な見解としては、
身体のカルシウムの代謝が、
バランス良く進んでいて問題のない時には、
カルシウムを補うことには何ら問題はないのですが、
カルシウム代謝に障害があり、
特にカルシウムが組織に沈着し易い状態にあると、
カルシウムの補充が、
有害なケースがあるのではないか、
と思います。

ご高齢の方では、
よく血管などに著明な石灰化が見られる方がいて、
それでも骨粗鬆症があり、
骨量が減少していると、
何の考慮もなく、
カルシウム剤やビタミンDを、
ドカンと出される先生がいらっしゃるのですが、
僕はそれはあまり正しい選択ではなく、
異所性の石灰化が目立って見られる時には、
その方のカルシウム代謝には問題があるのであり、
それを把握した上で、
カルシウムの補充が適切な方針であれば、
補充するべきであるけれど、
そうでなければ、
むしろその方の状態を、
カルシウムの補充により悪化させる可能性があるのでは、
と考えるべきではないか、
と思います。

僕は個人的には、
くる病や副甲状腺機能低下症など、
特殊な病態を除いては、
カルシウムとビタミンDとの併用はせず、
カルシウム不足に関しては、
カルシウム代謝に問題のあることが想定される場合には、
血液のカルシウムやリン以外に、
血液の副甲状腺ホルモンと尿のカルシウムのチェックは、
最低限行なって、
まずは栄養指導による改善を優先させる方針としています。

それでは今日のまとめです。

カルシウムのサプリメントや医療用の使用は、
食事のカルシウムの摂取とは、
別箇の意味を持つ可能性があり、
特に心筋梗塞のリスクの高い方では、
そのリスクを増加させる可能性があります。
従って、安易な補充はするべきではなく、
まずは食事によるカルシウムの補充を、
原則として考えるべきだと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 7

taniyan

石原先生
今日は、今日の先生のアップで日頃から疑問に思ってた事がわかり気が晴れました。

自分は相当以前(60歳)PETCTで冠動脈全体のCa沈着を指摘され、ドックでも前立腺にCa沈着指摘受ける、年齢にしては早すぎるとか。

以来Caサプリが沈着を促進させるのではと気になり止めました。
服用してたのは第一三共の新カルチュウ(D₃配合)、服用期間は極めて短期。

大変役立つ記事で有難う御座いました。

それでは本日も診療業務お疲れ様です。

                      taniyan
by taniyan (2012-05-28 13:40) 

ekoppi

興味深く拝読しました。
何となく気になる話題でしたので参考にします。
by ekoppi (2012-05-28 23:51) 

fujiki

taniyan さんへ
コメントありがとうございます。
カルシウム沈着の原因は様々なので、
何とも言えない点がありますが、
個人的には矢張りビタミンDとカルシウムの併用は、
特定の場合に限るのが安全だと思います。
by fujiki (2012-05-29 08:29) 

fujiki

ekoppi さんへ
ご一読ありがとうございました。
by fujiki (2012-05-29 08:30) 

chiakky

六号通りの近くに住んでいます。
石原先生のこの記事のおかげでカルシウムに関する考え方が変わりました。

by chiakky (2013-08-13 11:42) 

fujiki

chiakky さんへ
コメントありがとうございます。
カルシウムは取り過ぎても足りなくても、
共に問題になることはありそうです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2013-08-16 21:48) 

個ココココ

話がなげ~~よ。
結論から書け。
by 個ココココ (2014-08-07 14:34) 

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