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新型インフルエンザの鑑別出来る迅速診断キットのメカニズムと日本の医療ビジネスの話 [悪口]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

インフルエンザの所謂簡易検査のキットは、
数年前までは、
A型とB型との鑑別は可能でも、
そのA型が2009年の所謂新型インフルエンザなのか、
そうでないのか、
という点の鑑別は出来ないことが一般的でした。

それが昨年より、
新型インフルエンザとそうではないA型インフルエンザ、
そしてB型の、
3種類の鑑別が同時に出来るキットが、
幅広く流通しています。

しかし、何故この鑑別が可能となったのか、
という点については、
あまり明確な説明が何処にも書かれておらず、
僕は正直非常に疑問でした。

先日そのキットのメーカーの学術の方から、
その点についての説明を受け、
なるほどと思うと共に、
いつもながらの日本の医療技術の駄目さの源に、
改めて落胆の溜息を漏らすような思いがありました。

それで今日はインフルエンザのキットという切り口から、
何処かで聞いたような、
日本の停滞の構造的な問題を僕なりに考えたいと思います。

まずインフルエンザの迅速診断キットの歴史を振り返ります。

一番最初に発売された簡易検査のキットは、
A型インフルエンザのみしか、
診断の出来ないものでした。
それがその数年後に、
A型とB型の双方が鑑別可能なキットが販売されます。

これはウイルスの粒子の中にある、
核蛋白質という部分を検出して、
A型とB型とを鑑別していたのです。

A型インフルエンザには実際には多くの種類があります。

A香港型やAソ連型、
2009年の所謂新型などがそれです。

A香港型はH3N2というタイプのもので、
Aソ連型と新型はH1N1というタイプのものです。

このHとかNとかというのは、
表面抗原と言って、
ウイルスの粒子の表面から飛び出した、
一種の角のような突起の部分の名称を指しています。

Hはヘマグルチニンと呼ばれる抗原で、
Nはノイラミニダーゼという抗原の略称です。
タミフルなどの抗ウイルス剤は、
このノイラミニダーゼを阻害する作用があります。
そして、ヘマグルチニンには1~16までの16種類があり、
ノイラミニダーゼには1~9までの9種類があるのです。

さて、新しいキットが、
2009年の新型インフルエンザを検出可能となったのは、
新型インフルエンザのH抗原に対する、
特異的にくっつく蛋白質、
すなわちモノクローナル抗体を、
作製してキットに利用しているからです。

ただ、ここでちょっと疑問を感じる方が、
いらっしゃるかも知れません。

新型インフルエンザの抗原型は、
H1N1で、
季節性のAソ連型と同一です。

それでは、
何故新型に反応して、
Aソ連型には反応しないのでしょうか?

これは新型インフルエンザと季節性のAソ連型では、
そのヘマグルチニンの構造に、
若干の違いがあり、
その変異に対応するような、
すなわち新型インフルエンザのH抗原にはくっつくけれど、
季節性のH抗原にはくっつかないような、
そうしたモノクローナル抗体の、
作製に成功したからなのです。

こうした技術があるのですから、
本来は今流行している全てのインフルエンザの型分類を、
1枚の試験紙で行なうことも、
原理的には可能なのです。

しかし、コスト的な問題と、
臨床的にはそうした分類までは、
不要なのではないか、
というメーカー側の判断があり、
現行はそうしたキットは普及はしていない、
というのが実状のようです。

何度か過去に書いた話ですが、
2009年の新型インフルエンザの流行時に、
その遺伝子診断に時間の掛かることが問題視され、
より迅速で末端の医療機関で使用可能な、
診断法の開発に、
多額の研究費が税金から緊急的に拠出されたことがありました。
所謂いつもの「御用研究所」に、
いつものように税金がばら撒かれたのです。

勿論それで画期的な検査法が開発されれば、
そのお金は有効に活用された、
と言えるので問題はないのですが、
実際には少なくとも商品として、
販売出来るような装置やキットは、
今に至るまで開発はされていません。

当時僕が最もその開発を希望していたのは、
今回あるような新型インフルエンザの、
一般臨床での迅速診断を可能とするようなキットの開発です。

しかし、多額の税金が使われたにも関わらず、
それは日本では開発はされませんでした。

今使用されているキットは、
韓国のベンチャーが開発したものです。
親会社はアメリカですが、
製品は韓国で製造されています。

モノクローナル抗体の技術自体は、
別に日本でも開発は充分可能なのですが、
問題はその製作に欠かせない、
実際のウイルスの入手で、
韓国の企業は逸早くその入手に成功して、
製品化の道を開き、
日本でもウイルス株自体は、
「御用研究所」には存在しながら、
その「商品」としての開発には、
結び付くことはなかったのです。

何処かで聞いたような話が、
医療のベンチャーに関しても、
同じようにあるのです。

皆さんの税金から、
結構湯水の如く支出されている研究費は、
その多くが医療産業の進歩には、
結び付かない何処かに消えて行くのです。

もう1つ思うことは、
医療産業において、
メーカーは真の意味で、
「売れる商品」のニーズに気付いていない、
ということです。

数年前くらいのインフルエンザの臨床において、
僕が最も望んでいたのは、
A香港型とAソ連型の鑑別の出来る、
インフルエンザの迅速診断のキットでした。
これはその時点では存在すれば絶対に売れる商品だったのです。
そして、技術的にはその時点で充分可能でした。
しかし、実際には開発されなかったのです。
それは何故でしょうか?
今回お話をお聞きした学術の方の話では、
その時点ではA型の亜型が鑑別出来ることに、
ニーズがないとの判断だった、
との見解でした。

ニーズはあります。
それが見えないのは、
一般の臨床の医者が、
本当にどんな武器を求めているのか、
という観点に、
日本のメーカーが立っていないからなのです。
現場で患者さんを診ていない「権威のある方」の意見を、
医療者全体のニーズと誤解して、
商品開発を行なっているからに他ならない、
と僕は思います。

今日は日本の医療ビジネスの、
駄目さ加減の話を、
インフルエンザのキットから考えました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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マカロン

5歳の娘がインフルエンザB型に罹りました。持病の自家中毒があり、脱水の為、点滴を2日間受けました。B型は長引くと言われ、38~40℃の熱が3~4日続き、ラピアクタを2回使いました。
自家中毒があると、インフルエンザは酷くなりますか?(予防接種は受けました)
また、微熱でも自家中毒になるのですが、何か良い方法はありますか?
by マカロン (2012-02-25 15:29) 

人力

 新型インフルエンザの流行した年、1月を過ぎた頃からA香港型が流行をし始めまいた。その頃、娘がインフルエンザに掛かり、近くの病院に連れて行ったら、簡易検査で、比較的早く、はっきりとA型にマークが表れました。新型流行初期に行った息子の検査の時とは明らかに違う反応に、「先生、A型ですか?」と伺ったら、「新型です」と断言されました。
 実は、新型の感染初期に娘の部活で新型インフルエンザが流行り、その時に娘と私は下痢を伴う軽い風邪症状に掛かりました。新型の多くの症状が同様の症状だという情報がりましたので、私は多分それが娘と私の新型の感染だったのだと思っています。
 ですから、明らかに新型とは違う迅速な反応に「香港A型」を疑ったのですが、医者はインフルエンザの型など新型だろうが、香港A型だろうがタミフルかリレンザを処方する分には差は無いので、全くの無頓着でした・・・。

 精密検査キットの必要性があるかどうかですが、先生の様に探究心に溢れたお医者様が少数派であるならば、日本においてはそのニーズは存在しないのかも知れません・・・。とても悲しい事です。
by 人力 (2012-02-25 17:37) 

fujiki

マカロンさんへ
お食事が摂れなくなって、
脱水とブドウ糖の不足があると、
どうしても全身状態が悪くなり易くなります。
絶対的な名案はないのですが、
ブドウ糖を含む水分(ポカリなど)を、
少しずつマメに摂って頂くのが、
良いのではないかと思います。

by fujiki (2012-02-27 08:17) 

fujiki

人力さんへ
いつもお読み頂きありがとうございます。
そうですね。
実際にはあまりニーズはないのかも知れません。
by fujiki (2012-02-27 08:17) 

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