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単純ヘルペスウイルスワクチンの話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
単純ヘルペスワクチンの効果論文.jpg
今月のNew England Journal of Medicine誌に掲載された、
単純ヘルペスウイルス感染症に対する、
ワクチンの効果についての論文です。

ヘルペスウイルスの仲間には、
所謂水疱瘡と帯状疱疹のウイルスや、
お子さんの突発性発疹のウイルスなどがありますが、
中でも馴染みの深いのが、
単純ヘルペスウイルスによる、
口唇ヘルペスや性器ヘルペスです。

性器ヘルペスは性行為感染症の1つで、
一旦感染が成立すると、
その再発を繰り返し、
完治するということがない、
という問題があります。

つまり、人間の免疫は、
ヘルペスウイルスを完全に排除することが出来ないのです。
この点がヘルペスウイルス感染の、
非常に大きな問題点です。

単純ヘルペスウイルスには、
1型と2型の2種類が存在します。

僕が大学にいた頃には、
1型が口唇ヘルペスなどで2型が性器ヘルペスと習ったのですが、
現在では口唇ヘルペスから2型が検出されることもあり、
性器ヘルペスの主体も、
1型に移りつつある、
という報告があります。
これは性器と口とが接触するような、
性交渉との関連性が指摘されています。

1型と2型は別個のウイルスですが、
両者の同時感染はあまり多くはなく、
最初に1型に感染して血液の抗体が上昇すると、
2型の感染には罹り難くなることが知られています。
つまり、両者の免疫は、
完全に別個に成立するものではないようです。

ヘルペスウイルスの感染症には、
抗ウイルス剤のアシクロビルが効果がありますが、
症状を一時的に改善することは出来ても、
完全に身体からウイルスを排除することは出来ません。

従って、
特に角膜のヘルペスによる失明の予防や、
繰り返す口唇ヘルペスや性器ヘルペスの予防のために、
ワクチンの開発が、
80年以上前から試みられています。

ところが…

現状では一般に推奨されるレベルに達している、
単純ヘルペスのワクチンは存在しません。

概ね生ワクチンは、
ワクチンに適した状態に、
ウイルスを弱毒化することが難しく、
不活化ワクチンは、
有効な免疫誘導が起こらないのです。

唯一2型のワクチン粒子の構成糖蛋白の成分に、
アルミニウムとモノホスホリルリピドAという、
2種類のアジュバント(免疫増強剤)を添加した、
グラクソ社のワクチンが、
性器ヘルペスの初感染の予防に、
限定的な効果を示した、
という報告があります。
ただ、これはパートナーが抗体陽性で、
感染の可能性の高いケースでのみ使用された、
ちょっと特殊な報告です。

そこで今回の論文ですが、
1型にも2型にもまだ感染していない、
18歳から30歳までの女性8323名を、
無作為に2群に割り付け、
一方ではこの単純ヘルペスウイルスワクチンを接種し、
もう一方には同種の製法を用いた、
A型肝炎ワクチンを接種して、
その後20ヶ月までの、
感染予防効果と抗体の上昇を検証しています。
ワクチンは初回、1ヶ月後、6ヶ月後の、
3回の接種が行なわれています。

その結果、
トータルに見たワクチンの予防効果は、
2割という低率で、
特に2型については有意な効果は認められませんでした。
1型についてのみ分析すると、
感染自体の予防効果は35%でしたが、
性器ヘルペスの症状に関して見ると、
58%の予防効果が算出されました。

ワクチン接種後の中和抗体価は、
一時的には上昇しましたが、
その後数ヶ月で陰性化してしまいました。

つまり、トータルに見て、
ワクチンの効果は確認されなかったのです。

この研究は製薬会社の協力を得ているので、
「1型ヘルペスウイルスの性器ヘルペス発症予防には、
一定の効果が認められ、
今後の臨床応用にも一定の期待が持てる」
というようなニュアンスの結論になっていますが、
そもそも2型由来のワクチンなのに、
2型には効果がないなど、
理屈に合わない点が多く、
まだ単純ヘルペスウイルスのワクチンの臨床応用には、
現実のハードルは高い、
と考えた方が良さそうです。
上記の結論は、
「研究費をありがとう」
という一種のリップサービスです。

実際これまでヘルペスウイルスの中で、
ワクチン開発に成功しているのは、
水疱瘡の生ワクチンだけで、
これは日本の研究者の、
職人芸的な苦労の賜物です。
今ある世界中の水痘生ワクチンは、
全て同じ株を元にしているのです。

ヘルペスウイルスの免疫には不明の点が多く、
今後そのメカニズムの詳細が明らかにならないと、
その安全な予防法というものは、
そうすぐには実現はしないと考えるべきなのかも知れません。

今日は単純ヘルペスワクチンの、
開発状況についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

マイコ

いつも愛読しております。
長年口唇ヘルペスに悩まされ、発症する度に鏡を見るのも嫌になり、外出するのもう鬱になります。ネットでLリシンのサプリメントが免疫力を高め、再発防止に良いとありましたので、二年ほど服用しておりました。結果は良好で、再発回数が年に二回から一回に減り、症状もとても軽くなった気がします。
しかし、病院で「坑核抗体、陽性」「自己免疫生胃炎」と診断されてしまい、リシンサプリメントの服用が、何らかの原因のひとつになったのでは、と悩んでいます。
ヘルペスの再発は辛い、かと言って、Lリシンを飲みつづけてもいいのか不安です。因みに、リウマチなどの免疫疾患の発症はありません。
免疫力を高めるサプリメントが、免疫疾患を助長させはしないのでしょうか。
甚だ見当違いな事を伺っているかもしれませんが、先生のお考えをお聞かせください。
ヘルペスワクチンの開発を切に願ってやみません。
by マイコ (2012-11-22 20:46) 

fujiki

マイコさんへ
特に免疫力を高めるとされるサプリメントが、
自己免疫疾患を誘発するとは思いませんが、
全ての抗原に成り得る物質は、
影響する可能性はあるので、
一旦は中止してご様子を見るように、
診察をさせて頂いた時には、
お勧めすると思います。

リバウンドのようなことはないと思いますので、
しばらく中止して明らかに再発が増えるようであれば、
再開の方針で良いのではないかと思います。

ご参考になれば幸いです。
by fujiki (2012-11-24 08:30) 

マイコ

お返事ありがとうございました。
世の中にはサプリメントが溢れていますが、何がどう影響するのかわかりませんので不安です。現在は服用を中止していますが、いつヘルペスが発症するか分からない恐怖にいつも怯えています。
ちなみに今通っている病院では、プラセンタ注射をする方が多いようで、更年期障害や、免疫疾患、萎縮性胃炎の効能まで書いてありますが、感染症の危険性がゼロでは無いという説明を聞き、断念しました。効能と副作用を天秤にかけるのは難しいですね。ですが胃炎の私がサプリメントを服用すること自体、胃に悪そうなので、しばらく様子を見てみます。ただ私は、ヘルペスの症状が出ている時は非常に精神が不安定になり、追いつめらます。初めて行った病院で、「ありゃー、お岩さんみたいになってるね。それは一生治らないよ」と言われ、ひどく傷つきました。その時のことが今も忘れられません。

何はともあれ、しばらく様子をみて見ます。本当にありがとうございました。近郊ならば是非通院したいですが、それも叶わず先生のブログを拝見するのみです。寒くなって来ましたが、先生もお体に大切に、益々のご活躍をお祈りしております。

by マイコ (2012-11-24 12:02) 

Ryan Jasmine Wesley

私は彼について言うことができます私はこのHSV2から最終的に治癒されていることを見て非常に感謝しています、私はこの病気を持っている約1年6ヶ月に行っている私は自己治癒を得るために別の手段を試してみましたが、私は今日薬草とアベージェ博士の助けを借りて立って言えば、HSV 2を治すことができます。
私はこの男性について、ダニエル・ペイズリーを通じて、ヘルペス治療について語るブログで、医者から送られた薬草をどのようにして治癒されたかを知ったので、ダニエル・ペイズリーと連絡をとっています。私は非常によく、薬草は朝と夕方に2回服用する必要があり、入浴のための石鹸もあり、それは費用がかかるので、私はすぐに医者に薬草私の国では漢方薬があり、医師は薬を服用する方法を教えています。今私はHSV 2の陰性です。世界でも治癒を探している多くの人々がいることを知っていれば、今すぐ漢方薬のために私の文書をメールで送ることができます。DR.ABEGBESPELLHOME@GMAIL.COMまたはDR.ABEGBESPELLHOME@HOTMAIL.COM私の医者についてのより多くの情報を入手してくださいこのメールで私に電子メールを送ってください:ryanwesley2019@gmail.com my name is Ryan Jasmine Wesley
そして彼はまた、次の病気を治す
HIV /エイズ
HPV

ALS
by Ryan Jasmine Wesley (2017-04-03 22:31) 

高村ひとみ

息子(二十歳)の事で聞いて頂きたいのですが、
体育会に所属し、疲れるとヘルペスを発症します。

二年前に水疱瘡の予防接種をし、
1年半はヘルペスを発症しませんでした。

1年半を過ぎた頃から、角膜ヘルペス、を発症し
予防接種を打って頂いた病院に相談をしましたが、免疫が1年半で切れるのは考えられない
予防接種は打てないといわれました。

どうすればいいのでしょうか?

他の病院で接種をしても、体に問題がなければ打たせたいです。

失明するかもと診断され、生きた心地がしませんでした。
by 高村ひとみ (2018-04-03 20:54) 

fujiki

高村さんへ
単純ヘルペスと水ぼうそうはウイルスが違うので、
今の時点では単純ヘルペスのワクチンはありません。
現状あるのは水ぼうそうと帯状疱疹に効果のあるワクチンだけです。
仮に息子さんの感染したのが帯状疱疹だとしての話ですが、
水ぼうそうの予防接種が初回だったとすると、
2回目を1年後くらいに接種して頂くこと自体は、
特に問題はないと思います。

お名前が出ているようですが大丈夫でしょうか?
ソネットの方の設定で、
記載したお名前がそのまま公開されてしまいます。
お名前の部分だけを消すことは、
こちらでは出来ません。
もし不都合があるようでしたら、
記事を削除しますのでご連絡下さい。
by fujiki (2018-04-04 06:06) 

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