So-net無料ブログ作成

ストロンチウムの吸収を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので診療は午前中で終わり、
午後はちょっと内職の予定です。
朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ストロンチウム吸収論文.jpg
1987年のBritish Medical Journal 誌に掲載された、
ストロンチウムの吸収率についての論文です。

ストロンチウムはカルシウムと、
その体内の動態が似ているため、
カルシウムの吸収試験として、
一部でその活用が試みられました。
勿論放射性ではないストロンチウムです。

僕は以前大学に在籍していた時に、
一時その研究をしていたのですが、
その時に一番基礎的なデータとして参考にしたのが、
上記の文献です。
もう1つ同じような文献が、
ややレベルの低い雑誌に出ていますが、
内容はほぼ同じ結果になっています。

まずこちらをご覧下さい。
ストロンチウムとカルシウム吸収比較の図.jpg
この図は放射性カルシウムと利用したカルシウムの吸収率と、
ストロンチウムを利用した吸収率とを、
比較してプロットしたものです。

ご覧のように、、
ほぼカルシウムの吸収率の2分の1が、
ストロンチウムの吸収率に当たることが分かります。

では次を。
ストロンチウムの吸収と食事の図.jpg
この図は空腹時と食後すぐに、
ストロンチウムを飲んでもらい、
その吸収動態を比較したものです。

上のラインが空腹時で、
下のラインが食後です。

ストロンチウムは通常粉になっていて、
それを水に溶いて飲んでもらうのですが、
吸収試験を行なう場合には、
目的はカルシウムの吸収率を見ることにありますから、
なるべく生理的状態に近付けるため、
検査食を食べ、
その直後にストロンチウムを飲んで頂くように、
僕はしていました。

概ね食前の吸収率は、
食後の吸収率の倍になることが分かります。

もう1つ分かることは、
ストロンチウムを経口で摂取した場合、
ほぼ4時間で血液の濃度は一定になる、
ということです。
吸収は4時間以内に終了するのです。

これは僕も少数例でありますが、
僕自身と医局のスタッフとのデータを取りましたが、
その傾向は変わりませんでした。
ちなみに僕の吸収率は、
14%程度でした。

では次をご覧下さい。
ストロンチウム吸収と病気との関連.jpg
これは正常な方と病気のある方で、
ストロンチウムの吸収率を見たものです。
左側のセリアック病は吸収不良の病気で、
これは低値となります。
そして、
右側の副甲状腺機能亢進症は、
カルシウムの吸収率が上昇する病気の代表です。

つまり、
カルシウムとほぼ同等のメカニズムで、
ストロンチウムが吸収されることを、
このデータは示しているのです。

僕は実際にはもっと多くの病気で、
ストロンチウムの吸収率を測定しています。

年齢と共にその数値は低下し、
活性型ビタミンDとも明確な相関があります。
甲状腺機能亢進症では増加し、
糖尿病や原発性の骨粗鬆症では低下します。

副甲状腺機能亢進症については、
この論文より多くの症例の測定を行ないましたが、
最も数値の高かったのは27%で、
これはカルシウムの吸収率が食後で5割を超えていることを示しているのです。
ただ、これは例外的な数値で、
以前に記事に書いたように、
一般的には成人ではストロンチウムの食後の吸収率が、
25%を超えることは滅多にありません。
そして、同じ副甲状腺機能亢進症でも、
年齢が50歳くらいを超えると、
数値は概ね20%を超えることはなくなります。
お子さんの時期にはもう少し数値が高い可能性がありますが、
僕自身は15歳未満のお子さんのデータは持っていません。
ただ、おそらくは30%は超えないと見積もって、
誤りはないと考えます。

今日はストロンチウムの吸収についての、
基礎となる文献を見て頂きました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
nice!(30)  コメント(3)  トラックバック(0) 

nice! 30

コメント 3

つつ

僕が住む横浜の土壌からストロンチウム90が1キログラム当たり、195ベクレル検出されています。
http://yokohama-konan.info/strontium.html

ストロンチウムには16種類の不安定同位体が存在することが知られているそうですが、今回の90は半減期も29年と長いのでとても怖いです。

先生は「飲んだ」とありますが種類によって、或いは飲む量によっては健康に影響はないのでしょうか?

ストロンチウムは一度侵入した場所を離れる事なく、そこで短いベータ線を放射し続け、徹底的に細胞が傷つけられると、やがて血液のがんである白血病や骨のがんを発症してしまう、と聞きます。

なので、今回の原発でストロンチウムが飛来してきている事をとても危惧しています。
記事では一か所からという感じですが、そこだけに飛来してるわけではないので、横浜の広範囲でストロンチウムが降下していると思ってます。
量だって195ベクレル以上の場所もあるでしょう。

先生はどう思いますか?
セシウムにストロンチウム、プルトニウムなど31種類もの放射線同位体が放出されたそうですが、政府の言うように健康への影響は本当にないのでしょうか?
http://nanohana.me/?page_id=4382
by つつ (2012-01-12 22:39) 

fujiki

つつさんへ
コメントありがとうございます。
ストロンチウムには放射性のものと、
そうでないものがあり、
実験に用いていたのは、
勿論放射性ではないストロンチウムです。
ただ、動態的には両者に違いはないと思います。
その生体への影響については、
色々な意見はありますが、
厳密には分からない、というのが実際だと思います。
4号機が危ないとか、色々な話がありますので、
その辺については何とも言えませんが、
現時点で公開させているレベルの被曝量であれば、
少なくとも小さなお子さん以外には、
大きな影響はないものと、
現時点では僕は考えています。
by fujiki (2012-01-13 08:22) 

つつ

先生、コメントありがとうございます。

大人は大丈夫だけど、未来のある子供達には影響があるかもしれない、というのは何ともやり切れない話ですね。涙

学校の校庭で部活動や体育を行っている子供達は、少なくともマスクをして活動してるわけではないので、ストロンチウム含め、何だかよくわからない種類の放射線も取り込んでいる事でしょう。


症状がでるかは厳密には分からない。

問題はここですよね。

だから、逃げるに逃げれない。やめろとも言えない。
予防しようにもどうすればいいのか分からない。
でも、症状が出た時は時既に遅し。

そう考えると子供達の未来が、日本の未来がとても怖く感じます。
何もなければ万々歳。
だけど、「もしも」の時を考えて、各自が自衛するしか今はないのでしょうね。

by つつ (2012-01-13 17:28) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

メッセージを送る