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ベルトルッチ「暗殺のオペラ」 [映画]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は診療所は休診です。

いつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちらの映画の話です。
暗殺のオペラ解説.jpg
ベルトルッチが1971年に製作したイタリア映画で、
日本では1979年に公開されました。
僕は高校生で、
千石の三百人劇場で観ています。
一度リバイバル上映があったと記憶していますが、
その時は観ていません。

僕の手元には昔NHKのBSでやった時のビデオがあります。
日本ではビデオは発売されましたが、
DVD化はされていません。
CSでも滅多にやりませんし、
ちょっと不遇な作品です。

本国の製作から日本公開までに間があるのは、
「暗殺の森」というベルトルッチの出世作があり、
それが好評だったので、
急遽旧作に「暗殺の森」めいた邦題を付け、
公開したもののようです。

しかし、マニアックな映画が良く掛かっていた、
三百人劇場でも、
お客さんの入りは良くありませんでした。

ボルヘスの短編が原作で、
これは本当にあらすじのみ、
と言った感じの掌編です。

それを、イタリアの現代史に置き換えて、
ベルトルッチ自身が台本化しています。

あるイタリアの田舎町に、
反ファシストの闘士がいて、
オペラの「リゴレット」を観劇中に、
暗殺されるのです。

その30年後に、
その闘士の愛人の招きによって、
彼の息子がその田舎町を訪れ、
父親の死の謎を解こうとします。

その町にはかつての父の仲間や、
暗殺当時を記憶している老人達がいますが、
一様に口が堅く、
死の真相を話してはくれません。
そして、彼を招いた愛人自体も、
彼を父親と混同するような、
不可解な態度を取ります。

ある日町に「リゴレット」が鳴り響き、
過去が甦ったかのような幻想の中で、
父親の死の真実が告げられますが、
過去に囚われた息子は、
もう町から脱出することが出来なくなってしまうのです。

今観ると存外他愛ないのですが、
初見の時は結構興奮しました。
僕好みの筋立てでしたし、
結末も悪くなく、
寂れた田舎町の雰囲気にも惹かれました。
何度も夢に見る迷宮のような風景に、
再会したような気分になったのです。

ところが…

翌週くらいに高校の倫理学の授業があって、
知的な雰囲気で、
僕が割と好意的に感じていた先生がいたのですが、
その先生が授業の前置きで、
「先日頭でっかちの退屈な映画を見た」
というようなニュアンスで、
この映画を酷評したのです。

僕はその時、
この映画が好きだった僕自身が、
全否定されたような気分になって、
全身の血が逆流するような、
腹立たしさを感じました。

その先生はルソーが大好きで、
ルネサンスとルソーの話ばかりしていました。
プラトンの「イデア論」が嫌いで、
これも酷評していました。

僕はその時にはプラトンを読んだことはなかったので、
先生の言うことが正しいかどうか、
判断する材料がありませんでしたが、
先生への反発から、
「いやきっと、プラトンは素晴らしい筈だ」
と思い、後に「国家」を読んで、
僕のその時の考えが、
誤りではないことを知りました。

今でもプラトンの「国家」と「饗宴」は、
僕の愛読書で、
この当時から人間の知性というものは、
何ら進歩はしていない、
むしろ劣化していると思っています。

ルソーは未だに一行も読んだことはありませんし、
一生読むつもりもありません。

思春期の恨みは怖いですね。

今観ると先生の感想は、
そう誤りではありません。

ちょっと不出来な観念を、
弄ぶような感じがあり、
こういうのが嫌いな人には、
耐えられないと思います。

ただ、おそらくはベルトルッチ自身の、
「懐かしい風景」と、
思春期に感じた故郷の匂いのようなものが、
自然光を巧みに利用した、
全てが夕暮れのような画面の中に、
封印されていることも事実で、
そのノスタルジックな感じが、
この映画の本質的な魅力なのかも知れません。

最後に映画の中の画面を、
幾つか見て頂きます。

こちらがタイトルバック。
暗殺のオペラタイトル.jpg
次が田園を主人公と父の愛人の歩く移動ショット。
暗殺のオペラ田園.jpg
この映画はきっかりした構図より、
移動する場面が特徴なのですが、
こういう何げない場面の、
草の匂いがしてくるような空気感が良いのです。

最後はこちら。
暗殺のオペラ影.jpg
これはきっかりした構図で、
真相の明かされる場面ですが、
シルエットが効果的に使われています。

今日は僕の好きな映画の話でした。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

アミナカ

三百人劇場、懐かしいです。私が三百人劇場で最後に観たのは、「明暗」だったと思います。
「セールスマンの死」も何度か観ていますが、どちらも静かで暗いあらすじですね。
画像を見たかぎり、本当に草の匂いがしてきそうですね。
雨上がりの草の香り、コンクリートの匂い、
晴れた日の乾いた土の匂い、こういったものの香りは海の潮の香りや、華やかな花の香りとは別のノスタルジックな思いに誘われます。朝食の珈琲の香りや、
田舎の親戚の家の匂いのような決定的なものともちがうんですよね。

by アミナカ (2011-12-30 15:51) 

fujiki

アミナカさんへ
コメントありがとうございます。
僕は三百人劇場では芝居は観たことがありません。
映画はニコラス・レイ特集とか、
フリッツ・ラング特集とか、
まだあまり公開作のない時代に、
アジア映画の特集をしたりと、
特徴のある上映が沢山ありましたね。
by fujiki (2011-12-30 20:29) 

末尾ルコ(アルベール)

「暗殺の森」「暗殺のオペラ」…寒気がするほど愛してます!(笑)

ちなみにわたし、ルソーは嫌いではないんですが、比較すればプラトンの方が圧倒的に好きです。
「パイドン」とか「パイドロス」とか、あの辺はいつも座右に…。

                                    RUKO
by 末尾ルコ(アルベール) (2011-12-31 01:40) 

fujiki

RUKO さんへ
初見の印象は強烈だったのですが、
最近観直すとそうでもないかな、
とも思ってしまいます。
逆に感性が鈍ってしまったのかも知れません。
by fujiki (2011-12-31 11:42) 

しはる

石原先生、おめでとうございます。本年も読みごたえのあるブログ期待しております。

今頃大晦日のエントリ読んでいますが、思春期の恨み、確かに怖いですね。三つ子の魂なんとやらにちかいものがあるのかも・・・。

ルソーは読む価値はあるとは思うのですが、プラトン酷評はいただけないですね。というか西洋哲学・思想何にも分かっていないことを露呈しているような元明のように思います。せめて批判的継承ということでないといけませんね。

プラトン・フロイト・マルクスは現代でも絶対外せないと個人的には思います。ちょっとずれてレヴィ=ストロースが一番のお気に入りなんですが。

今年もよろしくお願いします。御夫婦ともに良い一年でありますように。
by しはる (2012-01-01 12:08) 

fujiki

しはるさんへ
明けましておめでとうございます。
これからもよろしくお願いします。

イデア論は「イデアの世界にパンツがあったらおかしい」
みたいな批判だったので、
子供心にも皮相に感じたのです。
あれは具象の話ではなく、
観念の話ですよね。

レヴィ・ストロースは、
大学時代に流行っていて、
交差いとこ婚の話とか、
「今日のトーテミズム」とか、
「悲しき熱帯」、「野生の思考」は、
今も家にありますが、
どれもちょっと齧った程度です。
by fujiki (2012-01-03 22:11) 

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