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COPDの自然経過を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

昨日は何とか3枚は書きました。

それでは今日の話題です。

今日は昨日に引き続いてCOPDの話です。

COPD(慢性閉塞性肺疾患)というのは、
長期の喫煙者に多い、
気道の慢性の炎症に伴う肺の機能低下症の総称で、
慢性気管支炎と肺気腫がその代表です。

こういう概念が提唱されたのは、
「タバコ=究極の悪」という認識があり、
タバコによる肺の変化を、
1つの病気として扱うことにより、
禁煙と将来的にはタバコそのもののこの世界からの追放を、
その視野に入れたものだと思われます。
つまり、喫煙習慣というものの抹殺です。
これは捕鯨の抹殺などと同様の感覚で、
ある特定の種族の方の、
いつもの手段と考えることが出来ます。
つまり、世の中には「悪」があり、
それを抹殺すれば「善」が訪れる、
という思想です。
「病気」というのは実態のないものではありませんが、
純粋な科学ではなく、
一種の思想的側面を持っているのです。
WHOという奇怪な組織が、
時に一種の宗教団体のように見えるのはおそらくそのためです。

ただ、COPDという概念には、
元々非常にあやふやな部分があります。

昨日ご紹介したように、
1977年に有名な論文があり、
それによるとCOPDの患者さんでは、
何も治療をしなければ、
年々その肺機能は低下して行くとされています。

この場合の肺機能というのは、
概ね1分間に吐くことの出来る最大の空気の量、
すなわち1秒量のことを通常は意味しています。

肺の機能というのは、
別に病気の方でなくとも、
年齢を重ねることにより徐々に低下はして行きます。

問題はそうした自然の1秒量の低下と比較して、
COPDの患者さんの時間の経過による低下量が、
より多いのかどうか、ということです。

1977年の論文は、
男性の喫煙者のみを対象としたものですが、
これによると10年以上前から禁煙している人は、
年間32ミリリットル程度の1秒量の減少があり、
全く喫煙歴のない人では年間42ミリリットル程度の減少。
それに対して、
ライトスモーカーの人では年間47ミリリットル程度の減少になり、
ヘビースモーカーでは年間66ミリリットルの減少というデータになっています。

2000年代の後半から、
ECLIPSE(Evaluation of COPD Longitudinally to Identify Predictive End-points)
と題された大規模臨床試験が始まりました。

これはトータル2000例を超えるCOPDの患者さんを、
3年間にわたり追跡調査し、
こうした短期間にCOPDがどのような経過を取り、
その重症度などの予測には、
どのような指標を用いるのが最も適切であるのか、
というような点について詳細に検討したものです。
2009年に部分的な解析結果が発表され、
そして今回3年間の1秒量の変化と、
それに係わる因子についての分析が、
先月のNew England Journal of Medicine誌に掲載されました。

昨日もご紹介しましたが、
その文献がこちらです。
1秒量とCOPD.jpg

その結果はどのようなものだったのでしょうか?

この研究はやや重症度の高いCOPDの患者さんを、
その対象にしたものです。
それも吸入ステロイドや気管支拡張剤などの治療を、
行なっている状態の患者さんが対象です。

試験の最初にはサルタノールという、
気管支拡張剤を400μgという量吸入し、
それから呼吸機能の検査をして、
1秒量などの指標を求めることになっています。
このサルタノールの吸入量は、
日本で通常発作時に用いられる量の、
2倍になります。

患者さんをトータルで見ると、
1年間に32ミリリットル程度の1秒量の低下が認められています。
ただ、その内容にはかなりのばらつきがあり、
患者さんの38%では1年当たり40ミリリットルを超える低下がありましたが、
それ以外の患者さんではより少ない低下しかなく、
8%の患者さんではむしろ1秒量は上昇していました。

この年間30ミリリットル程度の低下、という量は、
要するにCOPDのない方と変わらないということになります。

1977年の文献でも喫煙歴のない人で、
平均40ミリリットルは年間の低下があるのですから、
少なくとも臨床試験の対象となったような、
ある程度進行したCOPDの患者さんでは、
必ずしも年々1秒量が低下する、
というような現象は、
トータルでは確認は出来ない、
ということになります。

それでは全体ではなく、
どういう患者さんで1秒量の低下が大きかったのか、
という解析においては、
喫煙者では非喫煙者より年間21ミリリットル程度減少幅が大きく、
肺気腫の患者さんはそうでない患者さんより、
13ミリリットル程度減少幅が大きく、
気管支拡張剤の反応の良い患者さんは、
そうでない患者さんより変動幅がこれも13ミリリットル程度大きい、
という結果が得られました。

喫煙に関しては、
ヘビースモーカーではCOPDになり易いばかりか、
喫煙を続けることにより、
その進行も早くなるのですから、
COPDにおいては禁煙こそ一番の治療であることが、
裏付けられた格好になります。

ただ、これは1977年のデータと、
基本的には同一のものですから、
目新しさはありません。
ただ、3年という短期間の観察でも、
それだけの差が出る、
という点には意味があると思います。

肺気腫の患者さんで進行が速い、という知見も、
初めてのものではありませんが、
そうした患者さんではより早期の治療的介入が望ましい訳で、
実地臨床としては意義深い結果です。

最後の気管支拡張剤の反応性というのは、
一見ちょっと意外に思える所見です。

ただ、もともとはっきり1秒量の低下している患者さんが、
この試験では対象になっている、
ということを考えると、
その中ではより軽症の事例の方が、
まだ余力のある分、
その後の肺機能の低下幅も大きい、
というように考えることも出来ます。
つまり、より初期から治療を開始し、
禁煙も行なう方が、
その後の肺機能の低下を食い止められる可能性が大きいのです。

COPDというのは、
喫煙という「悪」を退治する目的で、
人工的に作り上げられた病気、
という意味合いが大きいので、
その内容は必ずしも均一なものではなく、
これがあればCOPDという、
明確なマーカーも現時点では存在しません。

上記の文献では炎症性のマーカーが多く検討されており、
部分的にはCOPDの経過と関連性のあるものもあるのですが、
2009年の文献と今回の文献とで、
関連性のあるマーカーが異なっているなど、
現時点で明らかにこれが指標になる、
というようなものはないようです。

1秒量という数値の低下が、
その1つの指標と考えられたのですが、
少なくとも3年程度の経過の中では、
そのばらつきも大きく、
予後についての指標とは必ずしも成り得ない、
というのが実情ではないかと思います。

また、1977年の文献にすでに書かれているように、
全ての喫煙者がCOPDのような状態になる訳ではなく、
一部の感受性の高い方だけがCOPDとなり、
喫煙者でも非喫煙者と変わらない肺機能を維持する方も、
少なからず存在しています。
そうした肺の喫煙感受性の解明も、
今後は重要なことではないかと考えます。
ただ、そうした研究は喫煙を一部容認するような結果になりかねないので、
「喫煙=絶対究極の悪」というドグマに、
逆らうことの出来ない現況では、
そうした研究はあまり進展はしないように、
僕には思えます。

今日は結果的にはあまり進展のなかった、
COPDの経過についての最新のデータの話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。
3連休の方もいらっしゃるのですね。
羨ましいな。

石原がお送りしました。
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midori

普通の人でも、結構肺の機能は落ちるもんなのですね。

9月から合唱団に入ってます。
最初の練習では面白いくらい声が(息が)続かず、経験者(三十年前)としては「こんなはずでは。もしかして肺でも悪いんじゃないか」と思いました。
あれから1ヶ月。
発声練習の前に呼吸のトレーニングをやるのですが、これが結構キツくて過換気発作寸前になります。
練習は週1回ですから計5回ほどしかやってませんが、ずいぶん長く歌えるようになりました。
何事も訓練次第、使わなければ衰えるのは当たり前だなー、というのを実感してます。
by midori (2011-10-08 09:33) 

fujiki

midori さんへ
コメントありがとうございます。
ラジオは聴きましたが、
ちょっと恥ずかしいですね。
by fujiki (2011-10-09 22:46) 

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