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ポツドール「おしまいのとき」 [演劇]

こんにちは。

六号通り診療所の石原です。

今日も診療所は祝日のため休診です。
いつものように駒沢公園まで走りに行って、
それから今PCに向かっています。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
おしまいのとき.jpg
三浦大輔率いる独特の感性の若手劇団、
ポツドールの新作公演が、
今下北沢で上演中です。

ポツドールについては、
これまでにも何度か記事にしました。
初期はセミドキュメントと称して、
「役者が演技をせずプライベートを背負ったまま舞台に上がる」
(雑誌「ユリイカ」の紹介記事より引用)
という実験的な試みを行ない、
2002年の「男の夢」からは、
刹那的で自堕落な若者のグループや、
家族の濃密な人間関係を、
主に性と暴力を生々しく描くことで、
演劇以外では成立し得ない世界を、
極めて緻密に描き続けています。

僕が始めて観たのは、
2005年の「愛の渦」という作品の初演で、
これは2010年にも再演されました。

乱交クラブに集まる、
自堕落でコミュニケーション下手の、
若者達の生態を、
一夜の出来事として生々しく描いた作品で、
観客は覗き見をするような気分で、
その現場に立ち会うことになります。

なによりその緻密な空間と時間の設計に感心しましたし、
岩松了と平田オリザの方法論に近いのですが、
そこに松尾スズキ的なガジェットをまぶして、
もっと扇情的な「見せ物」として成立させ、
テレビドラマのような「お話」としても成立しているところに、
非常な新しさを感じました。

暗転を利用して、
途中で時制が1回動くのですが、
その処理の巧みさに感心しました。
こうした緻密な感じは、
松尾スズキの芝居にも、
岩松了の芝居にも、
決して望み得ないものです。
書きっぱなしではない、
ある種「推敲された」魅力なのです。

ただ、三浦大輔はくせ者なので、
僕のような観客に、
あまり親切にはしてくれません。

続く「夢の城」は何と無言劇で、
娯楽性を一切排したつくりに、
「愛の渦」の再現を期待した多くの観客は、
ひたすら耐えなければなりませんでした。

その後「恋の渦」と「顔よ」という作品で、
僕は三浦大輔の方法論は、
その頂点に達したと思います。

「恋の渦」は「愛の渦」に似た、
自堕落な若者群像劇ですが、
今は亡き新宿シアタートップスの狭い舞台に、
何と幾何学的に4つの別々の部屋を配したセットを組み、
その4つの部屋の出来事を同時進行させるという、
唖然とするような趣向で、
「顔よ」では2つの家の一階と二階と外という、
5箇所を同時進行させるという離れ業を演じました。
別々に見えるその5箇所の芝居が、
いつのまにか同時にセックス場面に移行するところなど、
その執念のような緻密さには、
脱帽させられましたし、
それを娯楽として成立させているところに、
三浦大輔の成熟を感じる思いがしました。

しかし、その後3年以上、
三浦大輔はポツドールの新作を書きませんでした。

そして、今回の作品は3年半ぶりの、
待望の新作、ということになります。

その間に代表作「愛の渦」の再演もあり、
パルコ劇場で田中圭を主演に迎えた舞台や、
今年の2月には向井理を主演に迎えた、
翻訳劇の上演などもありました。

ただ、矢張りファンとしては、
古巣のポツドールでの新作を観たいのが正直な思いで、
そんな訳で今回はかなり期待して、
下北沢に出掛けました。

以下、少しネタバレがあります。

息子を亡くした中年に差し掛かった人妻が主人公で、
二重三重の不倫劇のドロドロの中で、
喪失していた生きることへのエネルギーを、
歪んだ形で再生する物語です。
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」のようでもありますし、
三浦大輔流のひねくれた家族再生の物語なのかも知れません。

人妻を篠原友希子さんという方が演じているのですが、
最初のレイプの場面など、
上演コードギリギリの演出が、
以前の安藤玉恵さんより過激なことをさせていて、
正直ちょっと困りました。

僕は基本的には、
そうした演出があっても良いと思いますが、
今回は舞台全体の出来が、
正直それほどレベルの高いものではなかったので、
このレベルでこんなことをしてもなあ、
という感じが正直なところでした。

舞台は上下に2つの部屋のセットを組んで、
交互に展開するのですが、
「恋の渦」の時のような緻密さがなく、
ただ単に転換をスムースにする意味しか担っていないのは、
ちょっとガッカリしました。
パルコ劇場の「裏切りの街」のセットもそんな感じでしたが、
セットプランにはもっと拘って欲しかったですし、
以前のような緻密さに欠けるのが、
僕には物足りなく思えました。

ストーリーは若者の生態から、
家族の問題へと、
三浦大輔の関心が移っているのを感じます。

しかし、どうも人妻の孤独、のようなものに、
あまりリアルな切実さを、
僕は感じることが出来ませんでした。

オープニングに主人公が洗濯物を片付けながら、
テレビの韓国ドラマを見ている光景を、
無言劇のように長々と見せ、
そこに電話が子どもの死を告げるのですが、
韓国ドラマをぼんやり見ている、
という無為な情景の肌触りは感じさせても、
子どもの死という出来事に、
あまり真実味がないのです。

三浦大輔はまだ、
自分の本当に真実味を持って描けるような、
家族のドラマを見付けられずにあがいているように、
僕には思えました。

ラストは夢オチになりそうな展開だったのですが、
そうはしませんでした。
この展開では夢オチにすることも、
当然考えたのだと思いますが、
それではさすがに…
と修正したのではないかと思います。

勿論夢オチにするのは論外ですが、
今回のラストも万全とは言えず、
締め括りにもまだ迷いがあるように思いました。

ただ、ポツドールらしい、
迷いはあるけれども刺激的な舞台であることは間違いなく、
万人向きではありませんが、
一見の価値はあると思います。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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