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小児のインフルエンザワクチン用量についての一考察 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今年の国産インフルエンザワクチンの内容が決まりました。
昨年と全く同一のもので、
A香港型と所謂「新型」そしてB型の3種類の抗原を1つにした、
3価のワクチンです。

そして、まだ正式決定ではありませんが、
小児のワクチン接種用量が、
海外と同じものに変わることが、
ほぼ確実なようです。

このことについては、
以前何度か記事にしました。

今日はおさらいの意味で、
以前の記事を要約する形でご紹介します。

2009年の時点で、
インフルエンザワクチンの小児の用量に関して、
こんなニュースがありました。

<「季節性」ワクチン増量で乳幼児も効果改善>  子どもへの効果が低いとされる季節性インフルエンザワクチンの接種量を欧米並みに増やすと、効果が改善できることが、厚生労働省研究班の調査でわかった。近く接種が始まる新型インフルエンザのワクチンは国産品と輸入品で接種量が違っており、議論を呼びそうだ。従来の国産ワクチン接種量の基準は、生後6か月~1歳が1回あたり0・1ミリ・リットルなど4段階に分かれ、12歳以下は2回接種が推奨されている。これに対し、欧米では生後6か月~3歳が0・25ミリ・リットルなど2段階に分けられ、同じく子供は2回接種が一般的だ。研究班は、乳幼児の適正な接種量を確認するため3歳未満126人、3歳~13歳までの155人を対象に欧米と同じ量の国産ワクチン(Aソ連型)を2回接種し、抗体の増え方を過去のデータと比較した。従来の2・5倍量を投与した生後6か月~1歳では、十分な量の抗体ができた人の割合が20%から66・7%へと大きく向上。3~6歳でも61・1%から70・7%に上がった。投与量がほとんど変わらない1~3歳では効果もほぼ同じだった。(2009年9月26日14時35分 読売新聞)

この記事の意味合いは、
2009年の時点で、
小児のインフルエンザワクチンの接種用量の変更が、
既に実際に検討されていた、
というところにあります。

この点についての経緯を振り返りましょう。

ワクチンの接種量というのは、
基本的には大人でも子供でも同じ量に設定されています。

しかし、例外があって、
その代表がインフルエンザワクチンです。

インフルエンザワクチンの予防接種の歴史については、
以前にも何度か触れましたが、
1940年代にアメリカで実用化され、
日本でも1950年代から製造が開始されました。
当初のワクチンは全粒子型といって、
現在とは製造法の違うタイプのワクチンです。
その後、1960年代から30年近く、
7歳から15歳まで(要するに小中学生全員です)
の集団接種が続けられました。
効果が不充分である、等の理由から、
集団接種が中止されたのが、
1994年のことです。

集団接種が始められたのは、
1957年にアジアかぜという、
新型インフルエンザの流行があったからです。
接種者のピークは、1968年で、
これは同じ年に香港かぜという、
新型インフルエンザの流行があったからです。
当時はワクチンは大人の打つものではなく、
あくまで子供のかぜの予防のためでした。
ピークでの接種量が3000万本ですから、
これは現在より少ない訳です。

その後、1972年からは、
全粒子型のワクチンから、現在と同じ、
スプリットワクチンへの転換が行なわれました。
副反応への対応としては、
2001年くらいからゼラチンが段階的に使用されなくなり、
2007年くらいからは、
防腐剤のチメロサール(有機水銀を含む)が、
部分的にフェノキシエタノールに変更されています。
これは水銀の人体への影響に配慮してのものですが、
現在でも半々程度でチメロサールは使用されています。
ただ、その含有量は以前よりは減量されています。

では、いつ頃インフルエンザワクチンの、
小児の接種量が決められたのかについては、
はっきりとした資料が手元にありませんが、
医学誌のQ&A では、
全粒子型ワクチンの時代に、
副反応が小児に多い可能性を考慮して、
決められたのではないか、
と記載されています。

古い資料に当たれば、
おそらくはっきりするのでしょうが、
何となく馬鹿馬鹿しくて、
時間を掛けてそんなことを調べる気にはなりません。

ただ、間違いのないことは、
決められたのがかなり以前であることと、
その後殆どその量についての検討が行なわれていない点、
そして、その決定もおそらくは、
確たるデータから割り出されたものではなく、
効果よりも副反応を怖がり、
何となく量を減らして誤魔化すという、
非科学的な姿勢で決められた可能性が高い、
ということです。

その使用量は記事にあるように、
大人が1回0.5ml の1回または2回打ちなのに対して、
子供は3段階に区分され、
1歳未満が0.1ml 、1~6歳未満が0.2ml 、7~13歳未満が0.3ml の、
それぞれ2回打ちと決められています。
他の多くのワクチンが、
1歳以上のお子さんでは、概ね大人と同じ量の接種に、
決められているのと比較すると、
随分と少ない設定になっているのが、
お分かりになるかと思います。

一方海外では、
6ヶ月~4歳未満のお子さんが、0.25ml の2回打ち。
4歳~10歳未満のお子さんが、0.5ml の2回打ち。
10歳以上のお子さんは大人と同じ量になっています。
(製薬会社や国によって、若干の違いはあるようです)

4歳未満で量が少ないのは、
おそらくは副反応が有意に高かった、
といったようなデータが存在するのだと思います。
一方で、4歳以上を2回打ちにしているのは、
免疫が付き難いことを想定しての処置です。

従って、上の記事は、
海外とほぼ同じ量で臨床試験を行なったところ、
海外と同等の結果が得られたというものです。

まあ、普通に考えれば、
当たり前の結果です。

この結果が信頼のおけるものだと仮定すれば、
少なくとも4歳~12歳までのお子さんは、
わざわざ「効かない量の」ワクチンを打っていた、
ということになります。

しかも、その「効かない量」が決められたのは、
医学誌のQ&A が正しければ、
1972年より以前のことなのです。
その後30年以上、
そしておそらくは「効かない量」であることが判明してからも10年以上、
この小児のワクチンの量は、
何の検討も行なわれないままに、
放置されていたのです。

いつも通りの行政であり、
いつも通りの専門家である、
と言うことが出来るかと思います。

タイムマシンにカフカを乗せて、
今の日本を見せて上げたら、
がっかりして、「城」なんて書くのを止めてしまったかも知れません。
ただの事実を小説に書くほど、
小説家にとって詰まらないことはないからです。

それはともあれ…

おそらく今年から、
海外用量と同量に、
インフルエンザワクチンの接種量は変更になる予定です。

僕は基本的にはこの変更には賛成です。

あまりに遅過ぎた決定、
と言えるかと思います。

ただ、ワクチンの副反応という点に関して言うと、
これまでインフルエンザワクチンのお子さんでの副反応が少なかったのは、
その接種量が少なく、実際にはあまり効果がなかったからだ、
という考え方も成立するので、
これまでお子さんにインフルエンザワクチンを接種して、
特に問題のなかったお母さんも、
今年の接種に関しては、
いつもより注意を払う必要はあるのではないかと思います。

今日はインフルエンザワクチンの、
小児接種用量の変更についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 14

シロ

たびたび申し訳ありません。
昨日レポート作成のためパソコンを長時間うったのですが、今日になって耳が痛いです。
肩凝り等から耳が痛くなることはありますでしょうか?
耳を引っ張り痛むなら外耳炎というのを聞いたのですが、引っ張っても特に痛くありません。
なにかの拍子にズキッとします。
あと首や肩を押すと耳とつながった感じで痛みます。
熱は37、2度でした。
疲れでよく出る程度です。
アドバイスお願いします。
by シロ (2011-07-02 13:30) 

motopi-

いつもわかりやすい。医療ブログありがとうございます。インフルエンザワクチンについて大変勉強になりました。今回一部メーカーでは震災による卵不足によりワクチンの供給が不足におちいる噂もありますが
よりよい予防対策とワクチンの意義を再度見直すべきと思いました。
by motopi- (2011-07-02 19:31) 

fujiki

シロさんへ
お返事が遅れまして申し訳ありません。
どちらかと言えば、
風邪の初期症状を疑います。
耳の病気ではない可能性が高いと思います。
数日無理をしなければ、
改善するのではないでしょうか?
by fujiki (2011-07-03 11:49) 

fujiki

motopi-さんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
卵不足を煽るのは、
細胞培養のワクチンに、
早く切り替えたい意図があるからかも知れません。
by fujiki (2011-07-03 11:51) 

かえる

すみません。ニュース引用記事の中で、「投与量がほとんど変わらない1~3歳では効果もほぼ同じだった」とありますが、1~3歳では従来通りあまり効果がないということでしょうか?
by かえる (2011-10-01 21:33) 

fujiki

かえるさんへ
この臨床研究においては、
そうした結果だったようです。
現在のワクチンの添付文書にある試験結果では、
1歳以上はA型に関しては、
もう少し成績の良い結果になっています。
ただ、成人に比べれば効果は劣ると、
基本的にはそうお考えになった方が良いと思います。
by fujiki (2011-10-02 07:13) 

はるかまま

 いつも参考にさせていただいております。
 今回のインフルエンザワクチンの増量は、予約をしてから
初めて知りました。 いつもの倍以上の量が一度に子どもの身体にはいることになるので、心配です。全く受けないのも心配なのですが、毎年受けているので「今年は1回だけ。」なんていうのもありでしょうか? それなら、受けないほうがましなんでしょうか。
by はるかまま (2011-11-06 17:09) 

fujiki

はるかままさんへ
海外のデータでも、
10歳未満では2回接種でないと、
その効果は不充分なようです。
10歳以上であれば、
私見ですが1回でも問題はないように思います。
他の殆ど全てのワクチンは、
小さなお子さんでも大人とその接種量は変わりがないので、
今までが少な過ぎただけで、
基本的には問題はないと思います。
ただ、前回までは副反応がなく、
今回はある、という可能性は当然あります。
従って、危険なワクチンという認識は持たなくて良いと思いますが、
今回が全くの初回のつもりで、
接種はして頂く必要があると思います。
by fujiki (2011-11-08 08:23) 

はるかまま

 さっそくの回答、ありがとうございました。
 接種後の様子に気をつけたいと思います。
  
by はるかまま (2011-11-08 16:47) 

伊織まま

石原さん、はじめまして、こんばんは。
私の子供4歳の男の子ですが
季節性のワクチンの時はなにも無かったですが、
去年にうったインフルエンザワクチン
新型、季節性の混合と聞きました
を打った所、その日の夜呼吸がおかしくなり
クループに似た呼吸です。
になりました。
今年は摂取量も増え、打とうかどうか悩んでおります。
大人家族はみんな接種しました。
4歳の子供どうすればいいと思いますか?
それと、日本脳炎も1度打ちましたが39度の高熱を出しました。
2回目を悩んでます。
よろしくお願いします
by 伊織まま (2011-11-13 20:02) 

fujiki

伊織ままさんへ
これは難しいのですが、
明らかに接種24時間以内に呼吸困難が生じたとすると、
次回の接種は慎重に考えた方が良く、
4歳でのインフルエンザワクチンの有効性も考えると、
周りの大人がしっかり接種をして、
お子さんは見合わせても良いのではないか、
と考えます。
日本脳炎ワクチンに関しては、
高熱が一時的で全身状態も悪くなかったとすると、
2回目の接種は必ずしも禁忌ではないと思います。
ただ、これも日本脳炎の現行の流行状況からすると、
難しい決断で、
どちらと断定的には言えません。
by fujiki (2011-11-14 08:19) 

伊織ママ

早々のお返事ありがとうございます。
なんだかホッとしました。
専門の方に聞いて頂きお返事を頂ける事が
こんなに安心するんだ・・・。
と思いました。
本当にありがとうございました。
最近寒くなってきています。
どうぞ、御自愛下さい。
ありがとうございます。
by 伊織ママ (2011-11-14 15:31) 

ひろ

11月18日に1歳7ヶ月の息子がインフルエンザワクチンを打ちました。
そのときは気づかなかったのですが、母子手帳を見ると0.5ミリリットル投与と記載してあります。
3歳未満は0.25ミリリットルですよね?
まだ病院に確認はしていないんですが、本当に0.5ミリリットル投与されていた場合、体への影響はどうなんでしょうか?
今のところ体に変化はないんですが、調べると後になって重篤な副反応がでる場合があると書いてありました。
明日も日曜日なので確認ができません。
不安でしょうがありません。どのように対応したらいいのでしょうか?
突然このような質問すみませんが返信お待ちしています。
by ひろ (2011-12-11 00:59) 

fujiki

ひろさんへ
3歳未満は日本でも1回0.25ミリリットルですし、
若干年齢の線引きは異なる場合がありますが、
概ね海外でも同量に設定されています。
ただ、その根拠はあまり明確に書かれているものを、
僕は読んだことがありません。
局所の腫れなどの反応や、
翌日の発熱や痙攣などの発症は、
少し頻度が多くなる可能性はあります。
ただ、11月18日に接種をされて、
現時点でお子さんのご様子に問題がなければ、
基本的には大きなご心配はない可能性が高い、
と僕は思います。
神経障害のような比較的接種後時間が経ってから生じる副反応については、
勿論注意は必要ですが、
接種量との関連は、
あまりないと考えて頂いて良いと思います。
by fujiki (2011-12-11 09:36) 

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