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放射線は医療に不可欠のものなのか? [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から意見書など書いて、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日の内容は若干スレスレのものかも知れませんので、
急に消えることがあるかも知れません。
その場合はご容赦下さい。

放射線を扱う医療に携わる医療従事者の方が、
日常の医療で使用されているのだから放射線は安全だ、
というニュアンスの話をよくされていて、
ブログやつぶやきなどでも、
そうした主張を良く見掛けます。

ただ、僕はそうした発言には、
いつも違和感を持ちます。

放射線が医療にとって必要不可欠のものである、
という前提が、
当然のこととして、
そうした方の意見の裏には感じられるからです。

放射線は確かに現在の医療にとっては、
必要不可欠のものです。

レントゲンもCTも撮ることが出来ず、
透視もカテーテル検査もすることが出来ず、
癌の放射線治療も行なえないとしたら、
そのために多くの方の命が失われ、
また治る病気の患者さんも、
その発見の機会を逃すことになるでしょう。

しかし、それは現時点での話です。

一方で放射線は最も強力な発癌物質であり、
細胞障害作用を持つ危険極まりない電磁波です。

X線が発見された当時には、
そうした認識はなかったのです。
当時は放射線は夢のような物質であり、
診断から治療まであらゆる目的にその有効性が期待されたのです。

しかし、その多くのリスクが分かった現在になっても、
医療の診断や治療における放射線の使用が、
未来永劫必要不可欠であり続ける、
というのはあまり理に適った立場ではないように、
僕には思えます。

医療における放射線の利用というのは、
本来は過去の遺物なのです。
それが大手を振って医療の最前線で使用され続けている、
というところに、
現代の医療の1つの問題点があると僕は思います。

放射線の診断目的での利用は、
その利便性のために継続されています。
X線のように都合の良い透過性を持ち、
その出力をコントロールすることによって、
体内の臓器の状態を簡便に把握出来るような方法は、
他にはありません。
そのメリットから考えれば、
被ばくの人体に与える影響は、
確かに微々たるものだと思います。

しかし、たとえば胸のレントゲン写真と同一の体内の情報が、
放射線を使用しない検査で得られるとしたら、
仮にその検査の方がコストが掛かり、
その習得には技術を要するなどの欠点があっても、
レントゲン撮影をその新たな検査法に、
変更して行くことは、
医療の今後の進歩のために、
より有意義な方向性であることは、
皆さんもお認めになるのではないかと思います。

治療の分野の放射線の使用に関しては、
更にその問題点は大きいと思います。

大量の放射線を照射したり埋め込んだりして、
その放射能の細胞障害性を利用して癌細胞を死滅させる、
というような野蛮な方法が、
本当に今後も未来永劫行われる必要性のある治療法でしょうか?

大量の放射線は勿論正常な組織にとっても有害な訳で、
治療技術の進歩により、
その有害事象は減少してはいるものの、
それでも照射部位とその周辺の、
癒着や狭窄、炎症などのために、
苦しむ方がいることは事実ですし、
照射後月日が経ってから、
放射線治療による誘発癌を発症される方も、
少なからずいるのです。

血管のカテーテル治療は、
放射線を使用する治療の中でも、
放射線治療そのものを除けば、
最も被ばく線量の大きな治療です。
しかし、その被ばく量は全ての医療機関で測定されている訳ではなく、
施設間でも大きな差があります。

そしてその被ばくの長期的な影響に関しては、
必ずしも明瞭なデータがある訳ではありません。

つまり、放射線は医療にとっては必要悪です。

現時点では必要不可欠のものであっても、
人間にとって有害性のあるものであることは間違いがなく、
より安全で将来に渡っても有害事象を及ぼさないような、
新しい検査法や治療法の開発に、
本来はもっと努力をするべきものなのです。

その当たり前のことを、
多くの医療従事者の方が、
忘れているように僕には思えます。

低線量の放射線は身体に治療的な効果がある、
という考え方があります。

この考え方自体は古いもので、
実際に扁桃腺炎や面皰、胸腺リンパ体質、
などの治療には、
この低線量放射線が一時期は盛んに用いられました。
ただ、その効果がかならずしも明瞭ではなく、
他の治療法に勝るとは言えなかったことと、
将来の発癌等のリスクが、
低線量でも存在するのではないか、
という考え方が生まれたことにより、
そうした治療は現在では行われることはありません。

しかし、それは完全に否定された、
というものでもなく、
有用性を主張される専門家もいます。

この点に関しては僕は否定も肯定もしませんが、
「低線量放射線治療」がより根拠の明確なものとなるなら、
それは従来の医療への放射線の利用とは、
一線を画した形で、
新たに行われるべきではないかと思います。

低線量であればむしろ身体に良いのだから、
という理屈で、
現在の医療放射線被ばくが、
免罪される、というような性質のものではない筈です。

その上で、それ以外の医療上の放射線被ばくは、
本来はよりクリーンな方法に代替出来るように、
つまり極力医療による被ばくをなくす方向に、
知恵を絞るのが本来の有り方ではないかと思いますし、
仮に放射線の被ばくなく、
カテーテル治療が可能となるような技術が国産で開発されれば、
それは確実に世界にも広がると思いますし、
日本の医療の技術の素晴らしさを、
世界に示す結果にもなるのではないかと思うのです。

こうして考えてみると、
原子力発電の問題と放射線を用いる医療の問題は、
非常に似通った構造の元に、
成立していることが分かります。
行政の立場や一般の利用者にとっての利便性とそのリスク、
「科学的権威」というものが、
そこで如何に利用され、
神聖化されてゆくものかの過程も、
非常に近しいもののように僕には思えます。
放射線医療に係わる専門家の方が、
概ね放射能の害についても敏感に反応し、
ほぼ同一の見解を執拗に述べられることの裏にある心理も、
そう考えると当然のことのように、
僕には思われるのです。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 14

pibao

おととい初めてこのブログを拝見し、時間が空くたびに少しづつ読ませていただいています。
先生のご意見には、賛同できることがたくさんあり、感動しております。
私たちの命は、自分たちのものだけではなく、
未来に繋いで行く大切なチェーンのようなもので、
自分の命は終わっても、
次へ繋いで行かなくてはならないし、
繋がってしまうもの。
だから、今の自分たちの行動は、
いつも未来の命へ責任があると思います。
今日の記事は、それを改めて考えさせられました。
これからも楽しみに拝読いたします。
by pibao (2011-06-25 23:05) 

ゆうな

 本日のブログは、新しい考え方を提示して頂いた気分でした。
 医療従事者として、放射線を当たり前の様に利用していることに、戦慄を覚えました。
 先生の、一歩先を歩かれるような記事に、いつも助けて頂いています。
 私も先生の提示される問題に、周囲の方の力を借りながら、真剣に向き合いたいと思っています。
 いつも、本当にありがとうございます。
 こらからも、お体御自愛頂いて、私たちに御教鞭下さいます様、よろしくお願い致します。
                       ゆうな拝
by ゆうな (2011-06-26 05:01) 

yuuri37

おっしゃる通りだと思います。恥ずかしい話ですが、今回の震災で姪が疎開する事になるまで、医療放射線被ばくについて真剣に考えた事はありませんでした。今、必要だから当然の行為であると考えていたような気がします。自分自身子供の時、放射線治療を受けているので、考えたくない思い出したくないという気持ちが強いのかも・・・
先生のブログは、時々逃げ出したくなっちゃうよ(笑)(⌒-⌒; )
by yuuri37 (2011-06-26 09:16) 

ごぶりん

医療従事者や研究職の方で日常的にリスキーなものを扱っていると
そのものに対して鈍感になるという感覚は解る気がしますが、それを
今回の福島の事故に絡めて主張すべきではないと思います。
でも、前々から不思議に思っているのがラドン温泉の存在です。
私は怖くて利用する気になれないのですが、一方で病気に対する効果を信じて
利用する方々もいるのもまた事実で…。

最近の医療ニュースで9割の精度で血液検査によって消化器癌を
発見できるキットが製造されたとあったのがとても嬉しいニュースです。
日本人対象でエビデンスがあったようですね。
by ごぶりん (2011-06-26 10:27) 

giscour

いつぞやの新聞に日米の年間被曝源の平均的割合比較が載っていましたが、米国は確か過半数(確か60%程度)が自然放射線、日本は同程度が医療用放射線で、日本人に癌が多いのはこのせいもあるのではと書かれていました。表には数値はありませんでしたが、自然放射線が日米でそれほど違うとも思えず、影響は割合より深刻なのではと思いました。
原発事故に関して、所謂政府系と思われる学者がホルミシス仮説を口にされていたように記憶していますが、彼らの仕事はリスク管理の筈。確実に細胞を傷つける放射線の影響について、個人差のある修復力だよりの説をとるべきではなく、少なくとLNTモデルに立ったリスク認定をすべきではと思いました。
by giscour (2011-06-26 15:53) 

fujiki

pibao さんへ
コメントありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2011-06-27 08:37) 

fujiki

ゆうなさんへ
コメントありがとうございます。
感謝しています。
体調はちょっと疲れ気味ですが、
どうにか踏ん張ります。
by fujiki (2011-06-27 08:38) 

fujiki

yuuri37 さんへ
いつもありがとうございます。
色々としんどいことが多いですが、
頑張りましょうね。
by fujiki (2011-06-27 08:40) 

fujiki

ごぶりんさんへ
ラドン温泉は吸入に関しては、
内部被曝により肺癌リスクは増す、
というのが最近の認識で、
ただ、疼痛を緩和したり、
循環を良くするような効果が、
存在することもまた事実だと思います。
変な話、あるレベル以下の放射線は身体に良い、
という考えの方が、
ずっと歴史が長いことは事実です。
by fujiki (2011-06-27 08:43) 

fujiki

giscour さんへ
コメントありがとうございます。
日本の医療放射線被ばくが、
非常に多いことは事実で、
本来は世界に先陣を切って、
その被ばく量を減らす、
というような取り組みが、
あっても良いのではないか、
という気がします。
by fujiki (2011-06-27 08:46) 

いち

先生、ご無沙汰してます。先日あずけました、CDはみれましたでしょうか?メールも送りました。放射線に関して読まして頂きました。胃カメラやバリウム検査のことでも相談したいことがあります。
by いち (2011-07-01 05:49) 

fujiki

いちさんへ
ごめんなさい。
まだしっかり見ていません。
by fujiki (2011-07-01 08:37) 

いち

一応11時ごろメールの件で診察していただきたいとおもいます。
by いち (2011-07-01 08:45) 

fujiki

いちさんへ
了解しました。
by fujiki (2011-07-01 08:58) 

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