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無用なヨード摂取を止めましょう [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日の診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談に廻る予定ですが、
行先が業務をしている状態なのかどうか、
交通手段が確保されているのかどうか、
現時点ではよく分かりません。

本当を言えば、恐ろしくて仕方がありません。
不思議に自分の身を守ろう、
という意識は強くはありませんが、
原発もそうですし、
このままずっと計画停電などしていたら、
東京も多分滅ぶでしょう。
ガソリンもありませんし、
物もありません。
「震災で被災した方のことを思えば、東京の苦労など」
と言われる方も多く、
非常に立派なご発言だと思いますが、
正直昨日からは僕はそうしたことを考える心の余裕はありません。

昨日地震の後に、
ご家族を守らなければ、
という思いが強くて、
そのためにパニック発作になり、
食事も取れなくなった方が受診されました。

幡ヶ谷に行きつけのインド料理の店があるのですが、
そこの店主のインド人は、
昨日さっそく荷物をまとめて、
インドに戻りました。
こんな日本にいられるものか、
ということなのかも知れません。

これが今の東京です。

それでは今日の話題です。

今日は原発事故絡みの混乱で、
ヨードを大量に摂ったり、
赤ちゃんにヨードを飲ませているお母さんがいる、
という話を聞き、
これはいけないと思い、
再び記事にすることにしました。

先日比較的大量のヨードの内服により、
放射性ヨードによる、
将来の甲状腺癌の発症を予防することが、
ある程度可能だ、
という話をしました。

この時使用するヨード剤は、
ヨウ化カリウムの溶剤か丸薬で、
それは行政なり関係機関が速やかに用意して、
被爆を予防するために原則1回のみ、
使用することになっています。

これはある種の時間稼ぎの方策で、
いつまでもその効力が続く、
という性質のものではありません。
強い被爆が予想されるような時に、
速やかに飲んで、
その効力のある24時間以内に、
安全な場所まで遠ざかる、
というような用途に使用します。

多くの皆さんが不安に感じるのは、
毎日の記者会見などを見ていて、
本当にこの行政なり政府の機関なり自治体の責任者なりが、
そうした事態に即応して、
速やかにヨード剤を配布してくれるのだろうか、
ということに対しての、
危惧なのではないかと思います。

僕も正直、
そのことには自信は持てません。

ただ、重要なことは、
ヨードのブロックは、
放射線の被曝のリスクの中で、
それほど大きな意味を持つものではない、
という事実です。

原子炉から洩れた放射能の中で、
内部被爆として問題になるのは、
セシウムとストロンチウムとヨードです。

ヨードは物理的半減期は8日程度で、
要するに比較的すぐに線量は低下します。
その人体で影響を与える組織は、
甲状腺以外にはせいぜい唾液腺や皮膚に少々ある程度です。

これに対してセシウムの物理的半減期は何と30年で、
被爆すれば全身に分布し、
排泄は早いものの、
体内から除去されるのに3ヶ月は掛かります。

ストロンチウムは、
僕は以前カルシウムの吸収の検査に使っていたので、
馴染みがあるのですが、
カルシウムに良く似た性質があり、
骨に取り込まれて排泄され難いため、
体内から10年以上排泄されることがありません。

こう見てみると、
ヨードは他の2種の物質に比べ、
排泄も早いですし、
身体への影響も限定的です。

仮に吸収されたとしても、
最も悪いシナリオが、
甲状腺の将来的な癌の発生と、
甲状腺機能低下症の発症のみです。

ヨード剤の予防内服は、
それがうまく行ったとしても、
この甲状腺への悪影響を、
ある程度減らすだけです。

問題はむしろ他の物質の影響なのです。

しかし、ストロンチウムやセシウムの、
被爆を防ぐ方法はありません。
せいぜい身体に付着した放射能を洗い、
濡れマスクで防護するくらいです。
ストロンチウムを大量に摂れば、
これもある程度骨への放射線の沈着を、
妨害することは可能でしょうが、
今度はストロンチウムの排泄が困難になります。
骨へのカルシウムの取り込みが抑制されるので、
骨が脆くなってしまいます。

従って、ヨードの内服が取り上げられるのは、
それが本質的なこと、と言うよりは、
それ以外の物質を、
効率的に予防する方法が、
存在しないからに過ぎません。

ヨード剤の使用の目的は、
あくまで大量のヨードを一度に摂ることで、
一時的に放射性ヨードの侵入をブロックすることです。

皆さんが今から昆布を多く摂ったり、
お子さんにイソジンを与えても、
それは今後の被爆の予防にはなりません。
むしろ中途半端な使用は、
甲状腺機能に悪影響を与えたり、
いざヨード剤を使用しよう、という時に、
その効果を却って弱める結果にもなりかねません。

従って、そうした行為をするのは、
1つも有益なことではないので止めて下さい。

ただし…

緊急事態で行政の対応が間に合わない時、
ヨウ化カリウムの代わりに使用し易いものが何かと言えば、
それがイソジンのうがい液であることは確かです。

先日専門家の声明が報道され、
その中ではイソジンのうがい液の使用は、
人体に危険で効果もないので、
使用しないように、
という内容が含まれていました。

僕は基本的にその趣旨には賛成です。

緊急事態以外で、
そうしたヨード剤の使用は慎むべきです。

しかし、イソジンのうがい液が効果がなく、
人体に危険である、という部分は、
必ずしも正しいとは僕は思いません。

イソジンのうがい液が内服不可の理由は、
専門家の文書によれば、
イソジンうがい液に含まれるポピヨンヨードの成分は、
食品衛生法や日本薬局方で、
内服が認められていないものを含んでいるからだ、
となっています。

しかし、そんなことを言うなら、
ヨウ化カリウム自体も、
内服が公式に認められている成分ではありません。

うがい薬というのは、
そもそも少量は飲む結果になることが、
想定されている製品です。

当たり前のことですが、
少量しかも1回だけ飲んで有害な成分が、
うがい液の成分として認められる訳がありません。

また、ヨードは吸収率の良い物質で、
イソジンのポピヨンヨードの形態でも、
吸収されない、などと言うことはない筈です。

僕は実際にイソジンやヨウ化カリウムを、
甲状腺疾患の治療に使用した経験はあるので、
その範囲で両者の内服に、
さほどの違いがないことは確認しています。

勿論緊急時以外には、
使用はする必要はありませんし、
するべきではないと思います。
原則として行政の指示を待って下さい。

しかし、僕の言うことを信用して頂ければ、
本当の緊急時には飲んで構いません。
お腹は下すかも知れませんが、
ヨードブロックの効果は存在するからです。

それでは今日はこのくらいで。

すいません。
あまり挨拶の言葉が見付かりません。

石原がお送りしました。
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コメント 13

A・ラファエル

東京の人でもストレスでおかしくなってきても不思議ではない
状況ですね。
by A・ラファエル (2011-03-16 08:50) 

a-silk

おはようございます。
>「震災で被災した方のことを思えば、東京の苦労など」
同感です。
元気が出るような記事を書きたいと思ってはいても、その記事すら書く気になら無い状態です。
関東は好転が続いているのが何よりです。

太平洋の生き物さんには申し訳ないですが、ずっと西風が吹いてほしい~。そんな事を思ったりです。

奥様とはご一緒に居られるのでしょうか。

頑張るしかないので、休み休み頑張ります。




by a-silk (2011-03-16 09:55) 

MDISATOH

Dr.Ishihara

>「震災で被災した方のことを思えば、東京の苦労など」

同感です。東京も大変なのです!計画停電、等で交通が旨く動かず、
通院が間々成らなくなると、常用の向精神薬も貰えなくなり、結果として発症しないかと非常に不安で堪りません!

>「多くの皆さんが不安に感じるのは、
毎日の記者会見などを見ていて、
本当にこの行政なり政府の機関なり自治体の責任者なりが、
そうした事態に即応して、
速やかにヨード剤を配布してくれるのだろうか、
ということに対しての、
危惧なのではないかと思います。」

本当に、政府の危機管理能力が危ういのは非常に不安です!


by MDISATOH (2011-03-16 16:09) 

fujiki

A・ラファエルさんへ
コメントありがとうございます。
さっき電車に乗ったら、
妙に静かで落ち着いた東京の姿に、
ちょっと平静さを取り戻しました。
by fujiki (2011-03-16 17:39) 

fujiki

a-silk さんへ
コメントありがとうございます。
妻も仕事なので、
昼間はバラバラで夜に合流します。
僕も休み休み行きたいと思います。
by fujiki (2011-03-16 17:41) 

fujiki

MDISATOH さんへ
コメントありがとうございます。
政府も東京電力も必死でやっているのだから、
避難してはいけない、
むしろ感謝するべきだ、
と仏様のようなことを言われる方もいるのですが、
僕はどうしてもそこまでの達観は出来ません。
現場と上の方との、
乖離も大きいのだろうな、
ということは感じます。
by fujiki (2011-03-16 17:44) 

iyashi

海外に住んでいる友人からの情報によると、日本への渡航が禁止されている国も多いようです。。。

また日本にいる方はすぐに帰国を促しているとの事。。。

それだけ日本は緊迫した状態なのに、日本にいる当事者が一番正しい情報を知らないのかもしれませんね。。。
by iyashi (2011-03-16 21:28) 

fujiki

iyashi さんへ
コメントありがとうございます。
日本のお金目当てに来た海外の方が、
それ我先に、と逃げ出すのは、
正直腹の立つ気持ちもありますし、
「もう二度と来るなよ」
と言いたい気持ちもあるのですが、
彼らにしてみれば勿論当然のことで、
非難する言われもないのでしょう。
僕は逃げる場所もないので、
多少地面が揺れたって、
放射能入りの空気を吸ったって、
僕の好きな場所に、
死ぬまでいるつもりです。
by fujiki (2011-03-16 21:51) 

3番目の名前は?

 私も、今いる場所で、出来るだけのことを致します。
 でも、先生と直接お会いして、絵画についてのお話ができますようにと信じて、頑張っているんですよ。
 本当に、お体大切にして下さいね。
 それから、患者さんの方も、出来れば、お願い致します。
by 3番目の名前は? (2011-03-16 23:34) 

永遠の通りすがり

土曜に診療所に伺おうと思っていたら、金曜午後に地震。
翌日は交通機関が混乱するかもと諦め、月曜も京王線沿線の駅の混雑ぶりをネットで観て出掛ける気が失せ、火・水は動けず、今に至ります。
このようなとき、私のような他人に迷惑を掛けやすい人間は、淡々と普通の生活を送ることが肝要なのだと思いますが、自罰欲求が止めどなく吹き出した感じになり、いつもの行動に勤しんでしまいそうです。
15日のblogには思わず吹きそうになりました。私もきっと採血や点滴の際に相当看護師さんを手こずらせていますね。

今は幡ヶ谷がとても遠く感じられます。せめて薬をいただきたいのですが。
by 永遠の通りすがり (2011-03-17 01:24) 

fujiki

3番目の名前は?さんへ
コメントありがとうございます。
どうにかお互いに踏ん張りたいですね。
by fujiki (2011-03-17 08:20) 

fujiki

永遠の通りすがりさんへ
昨日は電車で移動したのですが、
結構問題なくスムースでした。
明日はどうなのかは分かりませんが、
天気の良い日で気温もさほど低くないようでしたら、
来て頂いても問題ないと思います。
by fujiki (2011-03-17 08:22) 

永遠の通りすがり

今の問題は「交通機関の乱れ」が解消したか否か、ではないのですけれどもね(コメント欄には書きにくいです)。

あ、すみません。
お忙しい中、コメントを返していただいたのに。

このところ、いろいろと墓穴掘りまくりです。
そろそろ、この辺で掘ることになるのだろうなとスコップ構えたりして。
今がまさにその状態かも。
by 永遠の通りすがり (2011-03-17 09:17) 

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