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熱性痙攣を考える [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は突貫でレセプトのチェックをする予定です。

それでは今日の話題です。

今日は熱性痙攣の話です。

熱性痙攣とは、
発熱に伴って小さなお子さんに起こる、
一過性の痙攣で、
通常生後半年から5歳までのお子さんに起こり、
その発熱は概ね38度以上とされています。

正確な名称は「単純型熱性痙攣」とされ、
発作は全身性で15分以内には治まり、
発作は概ね1回きりで、
後遺症を残すことはありません。

この痙攣の理由は、
あまりクリアには分かっていません。

持続的な症状である「てんかん」との鑑別が問題となりますが、
大多数の「単純型熱性痙攣」は、
てんかんとは無関係の現象と考えられています。

統計的には熱性痙攣のお子さんの2~17%に、
てんかんが発症しますが、
これは元々てんかんの素因があったからで、
熱性痙攣がてんかんを誘発する訳ではありません。

熱性痙攣は日本人に多く、
白人には少ないのですが、
それが何故であるのかも、
分かってはいません。

ただ、インフルエンザ脳症のメカニズムに関して、
日本人の一部に熱に弱い体質が指摘されていて、
そのことが熱性痙攣にも、
同様に当て嵌まる可能性はあります。

インフルエンザ脳症と同じように、
熱性痙攣に関しても、
色々な薬物との関連性が取り沙汰されています。

主にこれまで犯人視されたのは、
喘息に用いるテオフィリン製剤と、
鼻水を止める作用のある、
抗ヒスタミン剤で、
日本ではこうした薬が乱用されているので、
海外に比べて痙攣が多いのだ、
という理屈です。

ただ、2002年の国立小児病院の報告では、
テオフィリン、抗ヒスタミン剤共、
痙攣との有意な関連性はなかった、
という結果でした。

テオフィリン製剤については、
その血中濃度が上昇すると、
脳への作用があることは事実なので、
乱用と言うより、血中濃度が上昇するような状況では、
そうした痙攣の誘発を含めた有害事象が、
起こる可能性はあります。

抗ヒスタミン剤と痙攣との関連は、
1949年には既に論文の出ている古い知見です。

抗ヒスタミンは風邪薬などに含まれている、
鼻水や痒みを止める成分です。
飲むと眠気が出るので、
鎮静作用があります。
市販薬で睡眠剤のように宣伝されている、
ドリエルという薬は、
抗ヒスタミン剤でその鎮静作用を利用した商品です。
ヒスタミンは覚醒アミンと言って、
覚醒を維持する働きがあるので、
その作用がブロックされると眠気が生じます。

従って、単純に考えると、
脳の一部の興奮である痙攣は、
抗ヒスタミン剤では抑えられるような気がします。

しかし、実際にはヒスタミンは覚醒アミンであると同時に、
痙攣の波及を食い止める、
防御的な働きをしていると考えられています。

つまり抗ヒスタミン剤で、
脳内のヒスタミンの受容体がブロックされている時に、
痙攣の発症があると、
痙攣は持続し易くなり、
かつまた脳の広い範囲に、
痙攣が波及し易くなるのです。

従って、痙攣の素因がない場合には、
抗ヒスタミン剤の使用は、
特に問題はありませんが、
痙攣の既往のある患者さんでは、
発熱時の抗ヒスタミン剤の使用は、
注意する必要があります。

ただ、この知見は、
医療者の間でも、
必ずしも共有されていないような気がします。

新型インフルエンザワクチンの副反応報告で、
発熱と共に蕁麻疹様の湿疹が出現したため、
レスタミンと言う抗ヒスタミン剤を注射したところ、
痙攣が起こった、という記載がありました。

これは明らかに、レスタミンの使用が、
痙攣を誘発したと思われますが、
脳症の疑い、のようなコメントが付けられています。

こうした事例は、
実際には結構多いのでは、
と僕は思います。

さて、熱性痙攣への対応は、
日本ではセルシンという抗痙攣剤の、
座薬(商品名ダイアップなど)を、
予防的に使用するのが一般的です。

海外では概ね未治療で様子を見るのが一般的ですが、
日本の場合は発症率が多く、
再発の事例もしばしば見られるので、
初回の発作を起こしたお子さんでは、
次回からの発熱時には、
座薬を使用することが多いと思います。
しかし、この必要性には、
異論もあるところです。

解熱剤は痙攣予防には無効、
とされていますが、
発熱に弱い体質がインフルエンザ脳症の要因なのでは、
という報告などを読むと、
熱を適度に下げることは、
決して無駄ではないのでは、
と思わなくもありません。

ただ、現行使われているアセトアミノフェンは、
スムースな解熱に有効とは言い難いので、
矢張り現状では意味合いは乏しいのかも知れません。

これはどの教科書にも書いてあることですが、
解熱剤の座薬と抗痙攣剤の座薬を同時に使用する時は、
抗痙攣剤の座薬を優先し、
その後30分は時間を置いてから、
必要あれば解熱剤の座薬を追加します。

今日はまだ分からないことの多い、
熱性痙攣の総説でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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