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黒沢清と向かい合う2人の話 [映画]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日から診療所は年末年始の休診に入ります。
ご迷惑をお掛けしますが、
よろしくお願いします。

今日はこれから神奈川の実家に帰ります。
妻はまだ入院中ですが、
大晦日に外泊して、
問題なければ4日に退院の予定です。

1月2日に中学校の同窓会があって、
それが唯一のイベント、という感じです。
1日くらいはレセプトをやらないと間に合わないし、
そんなこんなで、
あまりぼんやりとしている時間もありません。
後は家の片付けが、
もう少し進めば良いかな、
というくらいです。

今日の話題はこちら。
黒沢清の映画術.jpg
これは僕が最近いつもお風呂の中で読んでいる本です。
ちょっと湯気でふやけているのですが、
それでもあまり他の本を読む気分にはなりません。

黒沢清は、
一部にマニアックなファンを持つ、
独特の表現の映画監督で、
彼がインタビュー形式で、
これまで自分が作った映画のことを、
年代を追って詳細に語っている本です。

有名なトリュフォーが聞き役になった、
ヒッチコックの「映画術」という名著があって、
それの黒沢清版と言えば、
分かりが早いかも知れません。

ちなみにヒッチコックの「映画術」も、
僕はお気に入りですが、
これは大判のハードカバーなので、
お風呂向きではなく、
主にトイレで大の時に読んでいます。

映画以外の藝術も皆そうなのでしょうが、
作り手側のこだわりと、
それを観たり読んだりする側のこだわりとは、
結構違っている部分があって、
どちらが良いとは一概に言えないのでしょうが、
僕はこの本を読んでから、
かなり映画についての観方は変わりました。

1例を挙げると…

「映画は向かい合っている2人の視線は撮れない」
という言葉があって、
元々は蓮實重彦の言葉のようですが、
非常に興味をそそられました。

僕達の日常では、
2人の人間は概ね向かい合って話をするのですが、
その見詰め合う2人の視線を、
キャメラは捉えることは出来ないのです。

従って、2人のうち、
どちらかの視線を代弁するような位置から、
映像を撮るか、
第三者的に横や斜めの位置から、
映像を撮るしかないのです。

通常はその画像を切り返し、
繋ぎ合わせて、
何となく2人の視線や会話の流れを、
観客に伝えようとしているのですが、
それは一種のごまかしであって、
本質的な解決法ではないというのです。

小津安二郎の映画で、
笠智衆と原節子が向かい合って座っていると、
交互の互いの視線の位置の画像になって、
会話が進行する、という場面があります。
あれは小津監督なりの、
その2人の視線を描くという解決法なのですが、
ちょっと異様で不自然な印象があるのは、
それが本来無理なものを、
強引に成立させようと、
しているからではないかと思います。

この話を読んでから、
映画やドラマを観る時に、
2人が向かい合う場面を注目しているのですが、
なるほど個々にその監督なりの、
技法がありこだわりがあることが、
分かります。

その一方で、
矢張り2人が向かい合うと、
映像は不自然になり、
その違和感が、
意外とその場面を印象的にするという、
効果を上げていることもよくあります。

全然関係ありませんが、
先日のM1グランプリで、
スリムクラブの2人は、
向かい合う形で漫才(?)を演じたのですが、
キャメラがそれをうまく撮れずに苦労していたのが、
僕には非常に面白く感じました。

あれも一種の掟破りで、
2人の視線がキャメラの視線と直角に交差すると、
それは映像的には不自然になるので、
本来はやってはならないことなのです。

スリムクラブは素晴らしかったですね。

「何とかならんかねえ」 「民主党ですか」

こういう切り返しは、
通常風刺のいやらしさがあって、
僕は大嫌いなのですが、
スリムクラブの「民主党」はただの記号で、
「気の利いたことと言ってやろう」
というようないやらしい水分が、
全くないところに成立しているのです。
それが素晴らしいのです。
絶対に誰も「民主党」などという言葉を、
想定しなかったところに、
その手垢に塗れた言葉が出現したことで、
その言葉が異質の輝きを持ったのです。
ねじめ正一の「うんこ」などより、
格段に優れた異化効果です。

つまり、「民主党」という、
手垢に塗れ誰が口にしても、
同じイメージしか持ち得ない、
言わば藝術的価値を持ち得ない言葉を、
彼らの文脈が救ったのです。

藝術の真価はこうしたところにあり、
あれは芸道の奇跡の1つだと僕は思います。

あの漫才を土方巽が観たら、
絶対感動した筈です。

何か話が逸れましたので、
今日はこのくらいでそろそろ出掛けます。

皆さんも良い年の瀬をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。
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コメント 6

midori

奥様、良くなられたようで良かったですね。
あまり詳しくはありませんが、黒沢清作品は独特ですよね。観終わって、どうとらえたらよいかわからない気分になることが多いです。決して嫌いではありませんけど。
スリムクラブは、会社でも彼らの話題でもちきりでした。私は初めて観たので、気持ち悪さに衝撃を受けましたが、「民主党」で全てを許しました(笑)。

今年は大変お世話になりました。
来年も(早々に伺いますが)よろしくお願いいたします。
by midori (2010-12-29 14:30) 

rtfk

来年もよろしくお願いします。
by rtfk (2010-12-30 00:01) 

yuuri37

お風呂で本を読む・・・ちょっと笑っちゃいましたが、先生のことは笑えません。自分もよくやるからです。夫に時々、いい加減にしろと叱られますが、止められません。止めたら、たわいもない本を読む時間はなくなります(笑)
ご夫婦で、のんびりと大晦日を楽しんでくださいね。
May the New Year be an especially happy one for you all ! yuuri37
by yuuri37 (2010-12-30 03:06) 

fujiki

midori さんへ
まだ、あまり落ち着かないのですが、
仕方がありません。
こちらこそ来年もよろしくお願いします。
by fujiki (2010-12-30 14:55) 

fujiki

rtfk さんへ
こちらこ来年もよろしくお願いします。
by fujiki (2010-12-30 14:56) 

fujiki

yuuri37 さんへ
ありがとうございます。
大抵紅白とか見ていると、
電話が掛かってくるのですが、
今年はどうなるでしょうか。
by fujiki (2010-12-30 14:58) 

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