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葉酸はどんな病気を予防出来るのか? [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理ななどして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は葉酸という栄養素の話です。

先日「みんなの家庭の医学」という番組に、
依頼がありちょっと協力をさせて頂いたのですが、
放送を見ていたら、
葉酸が血管を若返らせるビタミンである、
というニュアンスの内容がありました。

ある大学の栄養学(?)の先生が登場し、
ホモシステインという物質が血液で増えると、
血管年齢が上昇し、動脈硬化が進行するが、
葉酸を多く摂ると、
そのホモシステインを低下させるので、
血管が若返る効果がある。
アメリカでは10年以上前に、
葉酸を食品に加えることが義務化されているが、
日本ではそうではないので、
葉酸の不足が起こっている、
というお話でした。

皆さんはこの話をどう思われますか?

動脈硬化の原因というのは、
そんなに単純なものなのでしょうか?
葉酸を摂ればそれだけで血管が若返るのなら、
血圧やコレステロールの薬を飲む必要など、
何処にもないように思えます。

今日はこの話の真偽を、
僕なりに考えてみたいと思います。

ではまず葉酸とは何か、
という話からです。

葉酸はビタミンBの一種で、
その名の通り、
野菜などの葉っぱに多く含まれている栄養素です。

この葉酸は補酵素と呼ばれ、
遺伝子の構成成分である、
核酸をつくる酵素の働きを助ける役目があります。

つまり、単純化して言えば、
葉酸が不足すると、
細胞分裂がスムースに行なわれなくなるのです。

特に女性の妊娠中は、
胎児の細胞分裂のために、
多くの葉酸が必要となるので、
妊娠中には通常より多くの葉酸が必要となります。

妊娠の初期に葉酸が不足すると、
神経管の閉鎖という現象が妨げられ、
先天奇形の増加することが知られています。
このために、アメリカでは1998年、
FDAの指示により、
全ての強化穀物に、
葉酸の添加が義務付けられました。

日本ではこうした措置が取られてはいないので、
葉酸の欠乏が生じ易いのではないか、
というのが1つの問題点として、
指摘されるところです。

さて、ここまでは問題はありません。

葉酸は必須アミノ酸であるメチオニンと、
ビタミンB12の代謝にそれぞれ関連があります。

メチオニンは代謝の過程で、
不安定な中間産物である、
ホモシステインを発生させます。
このホモシステインは身体を酸化させ、
血管の細胞や神経の細胞に対する毒性を持つなど、
試験管の実験のレベルでは、
かなりの悪玉であり、
人間の病気や老化の大きな原因である、
動脈硬化や認知症の原因である神経細胞死にも、
深い関わりを持つとされています。

通常の身体の状態では、
ホモシステインはビタミンB12と葉酸との働きによって、
無害な物質に変化します。

ところが、葉酸やビタミンB12が足りないと、
ホモシステインの蓄積が起こるのです。

ホモシステインの血液濃度は、
年齢と共に増加します。

この増加が葉酸やビタミンB12の欠乏によるものならば、
その補充によりホモシステインは低下します。

ここまでの内容を簡略化して、
大雑把な話にすれば、
概ね最初の栄養学の先生の話に一致するのです。

ただ、ホモシステインが血管や神経を老化させる、
というのはあくまで試験管レベルの話です。

老化や動脈硬化や認知症は、
勿論ホモシステインだけが原因で、
起こるような単純な現象とは違います。

従って、問題は実際に人間に葉酸やビタミンB12を補充して、
動脈硬化や認知症の予防効果があるのか、
ということになります。

一時期確かにホモシステインを低下させると、
心臓病が減少する、という報告が複数見られました。

ただ、最近はその流れはちょっと違います。

2006年のNew England Journal of Medicine 誌に、
「Homocysteine lowering with folic acid and B vitamins in vascular disease 」
と題する論文が掲載されました。

これは5522人の中高年の心疾患や糖尿病の患者さんを対象にして、
ビタミンBと葉酸との心疾患や脳梗塞の予防効果を、
5年間検討したものです。

結果は予防効果は全くない、というものでした。

同様の論文が複数発表され、
現状は葉酸を補充したからと言って、
はっきり心疾患が減ったりする訳ではない、
というのが一般的な考え方です。

認知症の予防効果については、
日本に強く主張される先生がいて、
以前記事にしたこともありますが、
世界的にコンセンサスの得られているものではありません。

更には過剰な葉酸は却って身体に害になる、
という報告も多く寄せられるように、
なってきています。

葉酸はビタミンB12 とのバランスの元に、
身体において調節機能を発揮します。
バランス的に葉酸のみが多くなると、
却って認知機能の低下や貧血のリスクを増す、
という報告もあります。
葉酸の濃度は通常のレベルでは免疫能を高めるが、
それを超えると、却って免疫を低下させる、
という報告もあります。

問題は現時点でどのレベルまでの葉酸が、
安全に摂取出来るのか、
という点についての、
明確な基準が存在しないことです。
一応葉酸の1日接種量の上限は、
1mg までとされていますが、
それ以下でも有害事象が増える、
とする報告もあり、
まだその点には論争があるのです。

従って、現時点では葉酸の血液濃度とビタミンB12 の濃度を測定し、
低下が認められれば補充する、
というのがあるべき使用法ではないかと思います。

ホモシステインの数値は、
日本では健康保険で測ることは出来ません。
逆に言えばだからこそ、
ホモシステインをちょちょいと測るだけで、
日本では論文が書けてしまうので、
そうした研究発表が多いのですが、
加齢や病気との関連性の高いデータであることは間違いがなく、
もう少しこの数値は一般臨床で利用出来るように、
するべきではないかと思います。

葉酸とビタミンB12の数値は、
健康保険で測定可能で、
薬としての葉酸やビタミンB12も使用が可能です。
しかし、その両者と密接に関連するホモシステインが、
測れないというのは、
何処かおかしいという気がします。
まあ、健康保険の適応項目というのは、
「政治的」に決められるものなので、
実際の臨床の必要性とは、
多くの場合乖離しているものなのです。

それでは今日のまとめです。

葉酸は身体にとって重要な栄養素で、
特に妊娠初期にその必要量が増加することは、
間違いのない事実です。
ただ、動脈硬化や癌予防、
認知症予防などに対するサプリメントとしての効果は、
臨床レベルではっきり確認されたものではなく、
「血管年齢を若返らせる」というのは、
大袈裟に過ぎる意見です。
特にビタミンB12が欠乏している状態での、
葉酸のみの補充は、
却って有害だという意見が多く、
そのサプリメントとしての使用には、
そうした異なる意見がある、という理解が必要です。
安全な上限量も、
設定はされていません。
食品での補充は、
通常は問題はありませんが、
海草類の摂り過ぎは、
ヨードの過剰と共に、
ちょっと慎重に考える必要があります。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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