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EBウイルス感染症の話 [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは、今日の話題です。

「GM~踊れドクター」というドラマがあって、
最近の傾向で毎回マニアックな病気の診断を、
取り上げています。

1話目がChiari Ⅰ型奇形で、2話目が鎌状赤血球症、
そして3話目が慢性活動性EBウイルス感染症でした。

Chiari奇形はMRIを撮った時点で、
幾らなんでも分かるだろう、とか、
そもそもそれは外傷後の脳ヘルニアだろう、とか、
鎌状赤血球症も、発作時の血液所見で、
天才診断医という設定なのだから、
分からないとおかしいだろう、とか、
突っ込みどころは満載なのですが、
昔のこうしたドラマと比べると、
情報量は異常に多くて驚きます。
ただ、基本的な治療の方向性として、
たとえば膠原病を疑ったら、
確証はなくてもまずステロイドを使用して様子を見る、など、
薬を使ってみて効くかどうかで、
行き当たりばったりに診断する、
というニュアンスが強く、
一般的な考えからすると、
緊急性が余程なければ乱暴な気はします。
その辺りは監修している医者の感覚なのでしょうか?

ただ、その中で3話目のEBウイルスの話は、
日常臨床でも出会う可能性があり、
また多くの病気の要因として、
注目を集めている話題でもあるので、
今日はその辺りの話を纏めたいと思います。

EBウイルス(Epstein-Barr virus )は、
ヘルペスウイルス群に属するウイルスで、
1964年にバーキットリンパ腫という白血病の一種の細胞から、
分離されたウイルスです。
Epstein さんとBarrさんというのが、
発見した研究者の名前ですね。

リンパ球というのは身体を防衛する役割を担った、
白血球の1種ですが、
ポイントはこのウイルスは、
人間のリンパ球に感染して、
そこで生き続けるウイルスだ、
ということです。

通常のウイルスは人間に感染しても、
リンパ球などの人体防衛軍の働きによって、
短期間で身体から排除されるのですが、
EBウイルスのようなリンパ球に感染するタイプのウイルスは、
HIVもそうですが、
人間の免疫が完全に退治することが、
非常に難しいのです。

大人になるまでに、
95パーセントの人はEBウイルスの感染を受けます。

この時の症状は、
乳幼児では軽い風邪症状で、
咽喉がちょっと腫れる程度か、
全く症状の出ないケースもあります。

それがもう少し大きくなって、
小中学生以降で感染すると、
今度は高熱が出て扁桃腺が大きく腫れ、
全身的にもかなり重症感のある症状になります。
肝機能が悪くなって肝臓が腫れたり、
血小板が減ったり、
首のリンパ腺が大きく腫れるのも特徴です。

これを「伝染性単核球症」と呼んでいます。

咽喉にはB細胞というリンパ球があって、
それが身体の防衛に当たっています。
そのB細胞のうち、
CD21というマーカーがあるタイプのリンパ球に、
EBウイルスは感染を起こします。
するとこのリンパ球は勝手に増殖し、
咽喉に炎症を起こすのです。

そのリンパ球を封じ込めるために、
細胞障害性T細胞とNK細胞という白血球が増加します。
ウイルスを退治するというより、
ウイルスに侵入され、
そのコントロールを失った、
自分達の仲間を殺すのです。
EBウイルスに感染した細胞は不死化するので、
退治しなければ永久に死なないのです。
この辺り、ゾンビ映画のようですが、
それはまあ、ゾンビ自体が感染症の隠喩なのであり、
そうした恐怖は人間にとって根源的なものなのだと思います。

この細胞障害性T細胞とNK細胞が、
白血球の形態の分類から言うと、
主に「単核球」ということになるので、
「伝染性単核球症」という病名の由来はここにあるのです。

乳幼児はまだ免疫系の発達が未熟なので、
こうした病気は軽症で済むのです。
このウイルスは人間の免疫の力を逆用するので、
それだけ質が悪く、
また免疫が強い状態にあればあるだけ、
その初感染の時の症状は強いのです。

伝染性単核球症は通常自然に治りますが、
その完全な治癒までには1~3ヶ月が掛かり、
不明熱の原因となることもあります。

治癒しても、完全にウイルスがいなくなった訳ではありません。
リンパ腺の中にはウイルスに感染して不死になったB細胞が潜んでいて、
その勢力を拡大する機会を狙っています。
通常はそれを監視する、
メモリーT細胞という細胞の存在により、
ウイルス感染細胞はそれ以上増えることが出来ないのです。

つまり、殆どの人間は、
僕も皆さんも、
EBウイルスの感染した、
お化けみたいな不死身の細胞を、
身体の中に持っているのです。

それは免疫の状態が安定していれば、
祠の中に封印されていますが、
ひとたびその封印が解かれ、
それを押さえ込んでいた力が弱まれば、
その細胞は一気に増殖し、
その症状が多くの重篤な病気の姿を取るのです。

長くなりましたので、
EBウイルスの慢性感染に伴う病気については、
明日に続けたいと思います。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 2

yuuri37

「GM~踊れドクター」これおもしろいよ。と勧められたんですが、どうも医療系のドラマは苦手で見たことないんです・・・見てみようかな^^;
海外ドラマの「ドクターハウス」は見ていますが。
ともかく、ドラマに出てくるドクターはカッコイイんでしょう?
さあ、仕事だ・・・ドラマのようにはいかないけど
by yuuri37 (2010-08-24 09:10) 

fujiki

yuuri37 さんへ
僕も医療系のドラマは、
以前は虫酸が走るほど嫌いだったのですが、
妻が好きなので仕方なく見せられるうちに、
最近はさほど抵抗がありません。
多分絵空事として、割り切れるようになったのだと思います。
ただ、中途半端にリアルで、
社会性を打ち出したような類の物は、
矢張り今でも駄目ですね。
刑事物だって警察の方が見れば、
同じに感じるのだろうな、とは思います。
「リアルでしょ」と威張っているような感じの物が、
一番嫌ですね。
by fujiki (2010-08-24 20:38) 

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