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復職を妨げるものは何か? [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

うつや適応障碍、双極性障碍などのご病気で、
仕事を続けるのが困難になり、
休職をされる方がいますね。

僕は主治医としての立場と会社の産業医としての立場と、
その両方の立場で関わることになるのですが、
どちらの立場で考えても、
一番の問題は復職のタイミングとその方法です。

健康保険組合のカウンセラーという方がいて、
ある会社ではその方に相談して、
復職の方法を決めることが多いのですが、
概ね段階的な復帰が望ましいと言われ、
そのスケジュールを示されます。

たとえば、最初の2週間は週に3日の午前中だけで、
次の2週間は週5日の午前中だけ、
といった具合で、段階的に通常の業務に戻して行こう、
というようなスケジュールです。

こういう方法を取って、
うまく行く事例もない訳ではありませんが、
それほど多くないことは事実です。

人間の身体は一定のリズムを決めた方が、
それによって行動し易くなります。

従って、週5日の9時から5時までの勤務が、
一応の目標であるとすれば、
なるべく最初からそれに近い形を取った方が良く、
中途半端に時間を区切ったり、
出勤日と休みの日を交互にしたりすると、
却ってリズムが崩れるケースが多いのです。

休職や復職のプログラムというのは、
概ね「古典的うつ病」をその考え方のベースにしています。
つまり「大うつ病」です。

これは、ある日ガクンと気持ちが落ち込んで、
何も出来ない状態となり、
それが数ヶ月の経過で改善して元に戻る、
というものです。

この場合には、うつの時期をやり過ごせば、
自然と状態は改善に向かうのですから、
症状が出現すれば、
早めに休職を取らせ、
その期間を数ヶ月に設定して、
徐々に体調の戻って来るのに合わせるように、
最初は週に数時間程度の勤務から始め、
仕事の時間をゆっくりと増やしてゆくのが、
理に適っているのです。

典型的なケースでは、
患者さんはもうすぐにでもフルタイムで働きたい、
という意欲を見せ、それを周りが抑えるような形になるのが、
通例です。

ところが…

病名は「うつ病」と付けられてはいても、
こうしたケースはむしろ少数になっているのが、
ご存知のように現実の姿です。

「非定型うつ病」が増えているのだ、
とか、
「気分変調性障碍」が増えているのだ、
とか、
「双極性障碍」を医者が見落としているのだ、
とか、
「適応障碍」を誤診しているのだ、
とか、
色々なことを言う人がいて、
その解釈には慎重であるべきですが、
いずれにしても、
それまで普通に送れていた社会生活を、
あるきっかけから送れない状態となり、
その状況が軽快と悪化とを繰り返しつつ、
数年以上に渡り遷延しているケースが多い、
ということは事実です。

どうしてそうした事例が多くなっているのかは、
必ずしも明らかではありませんが、
その対応は幾つかのパターンに分けて考えるべきではないのか、
というのが、僕の意見です。

治療や環境が、一過性のうつ状態を、
遷延するような状況に変化させているのではないか、
という考えを述べる人がいます。

僕は全ての事例がそうであるとは思いませんが、
明らかに治療の介入や会社の対応が、
状況を長引かせ、本来は存在しない病気を、
作り上げてしまったようなケースが、
存在することは確かだと思います。

昨日のAさんの事例はその1つのケースで、
遷延化した身体症状を、うつ病と一括りにすると、
それで却ってうつ病患者を1人作り上げてしまい、
「治らないうつ病」が出来上がってしまうのです。

従って、長引く風邪のような身体症状に、
安易にうつ病としての治療を行なうべきではない、
というのが1つのポイントだと僕は思います。

抑うつがはっきりあれば、
当然治療的介入が必要になります。
現在では「古典的うつ病」は少なく、
大なり小なり双極性の要素を持っています。
ただ、その多くは所謂「躁うつ病」とは違うのではないか、
というのが僕の考えです。
「大うつ病」が存在するように、
「躁うつ病」も間違いなく存在します。
ただ、現在のようにうつ病が遷延して、
そこに情緒の不安定さが加わり、
時々軽度のイライラや軽率さが見られるものを、
一まとめに「双極性障碍」と呼ぶ風潮には、
僕は違和感を覚えます。

それはむしろ病状が長引くことによる、
自我の弱体化の表れのように、
僕には思えるからです。

人間には生物としての内在的なリズムがあり、
自我が弱まるとそのリズムが人間の意志を支配する危険性が高まります。

たとえば、元気な時なら、
「今日は気分が何となく乗らないけど、
休む訳にはいかないから仕事には行こう」
と思い、その通りに身体も動くのですが、
うつ病などの自我が弱まった状態では、
「今日は気分が酷く悪く、仕事に行かないといけないことは、
分かってはいるけれど、とても行けそうにない」
と思い、身体も金縛りにあったように動きません。

つまり本質的なことは、
情緒が不安定で、躁の時期とうつの時期がある、
ということではなく、
自然に存在する躁とうつのリズムに、
行動が支配され易いような、
自我の状態にある、ということなのです。

同じことは、周囲の状況に対しても言えて、
普段なら気にならないようなちょっとした環境の変化に、
過敏に反応して抗うことが出来なくなります。

ちょっとしたラッキーな偶然があっただけで、
天下を取ったような気分になって、
はしゃいだ挙句に失敗を重ねたり、
そうかと思うとちょっと上司の機嫌が悪かったというだけで、
自分は嫌われている、と絶望した気分になり、
会社に次の日から行けなくなったりします。

問題は躁とかうつといった循環する気分でしょうか?

これは勿論病気としての「躁うつ病」を、
除外した場合の話ですが、
むしろ真の問題は、
循環する気分の波に対して自我の優位を保てないような、
精神のバランスの乱れなのではないか、
と僕は思います。

復職がスムースにゆくポイントは、
自我が自分の主人になっているかどうか、
ということです。

その1つの目安は生活パターンの安定が、
実現出来ているかどうか、ということだと僕は思います。

つまり、自分の望む時間に起き、
望む時間に寝ることが可能であれば、
それは自我が気分をコントロール出来ている、
ということであり、
復職のタイミングは近付いている、
ということになりますが、
幾ら本人は「もう復帰出来る」と言っていても、
実際に毎日の生活リズムが保てず、
睡眠のタイミングもバラバラであれば、
復職は困難だと考えられます。

復職をうまく進めるもう1つの要件は、
会社側の受け入れの意識で、
患者さんが待たれている、
と感じるような職場であれば、
復職後の不安定さは、
かなり軽減することが可能です。

ただ、現実には会社側として、
その患者さんをいらない、出来れば退職して欲しい、
と考えていることが往々にしてあり、
その場合は、
一旦復帰しても道のりは険しいと、
思わざるを得ません。

以上をまとめるとこうなります。

復職をスムースに進めるためのポイントは、
まず休職のタイミングを誤らないことです。
一旦うつという診断が下ると、
3ヶ月は休まなければいけない、
といった判断が下されがちですが、
患者さんの状態によっては、
2週間程度のリフレッシュ休暇で、
充分なケースも稀ではなく、
早期に自然に改善する可能性の高い病態に、
投薬や長期の休職のような過大な管理をすると、
却って病状を慢性化させることがあります。

その基礎疾患がどうあれ、
慢性化したケースでは、
自我は弱まり、外界の環境や、
内在する躁うつのリズムに、
非常に敏感な状態になっています。

従って、所謂病気としての「双極性障碍」の場合を除いては、
自然に自我の強まりを待つ必要があり、
自分のリズムをある程度自分で調節出来る状態になってから、
復職を考える必要があります。

後は仕事と本人とのミスマッチの問題になります。
これは多分に社会的問題で、
医療の関われる点は少ないのですが、
一部の企業には、メンタルに不調を訴える方を、
効率的に切り捨てる、という考えがあることは事実であり、
その一方で企業側の受け入れの努力によって、
企業を本当に感謝して、
復帰されその実力を発揮されている方がいることも、
また事実です。
体力のある大きな企業では、
ある程度充実した援助の体制があり、
中小の企業ではそうした余裕はない、
というのが実状であり、
もう少しそうした面にも行政の援助があるべきなのではないか、
と僕は思います。

以上、僕の考える休職と復職についての話でした。

皆さんはどうお考えになりますか?

それでは今日はこのくらいで。

今日は皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 4

iyashi

リズムが大切というのは実感しています。
調子を崩すと出かけるのが億劫になり、それに伴い抗うつ剤が増量されたりしてきましたが、増量や変更があっても良くなったという実感があったことは少ないです。
むしろ私の場合ジェイゾロフトからリフレックスに変更になった時は、朝全く起きられなくなり、過食になり、リズムが思いっきり崩れてしまい、長期の休暇を余儀なくされました。
今年に入り、早起きしてウォーキングを日課とするようになってから劇的に回復してきました。
現在は半日出勤、1日出勤を自分の調子に合わせて自分で組んでいますが、休みや半日出勤の日も出来るだけ用事を作り家にこもらず1日のリズムを崩さないよう心がけています。
私の場合は腰痛がある為慎重にリハビリ出勤をしていますが、腰痛さえなければフル出勤出来る自信がつきました。
会社が私を必要としてくれているのがわかり、より回復してきています。
現在は抗うつ剤のジェイゾロフトを昼か夜に1日おきに1錠だけ一応服用していますが、自分の中ではもう服用しなくても大丈夫なような気がしています。
減量になり逆に焦燥感のようなものがなくなり、抗不安薬も殆ど服用することはなくなりました。
by iyashi (2010-03-30 17:21) 

fujiki

iyashi さんへ
コメントありがとうございます。

会社の受け入れ態勢というのが、
何よりも大切だ、という気がします。
しかし、実際には個々の事情もあり、
なかなか難しい問題ですね。

順調に回復されているようで、
非常に良かったですね。
僕は最近は気分の波で調子の悪い時期には、
あまり抗うつ剤の変更や微調整は、
しないようにしています。
言われるように、却ってバランスを崩すことに、
繋がる可能性が高いと思うからです。
by fujiki (2010-03-31 08:01) 

ゆう

2年以上続く気分変調性障害の者です。
その通りだと思いました。一般の人も自然な気分の波はあるんでしょうが、それに支配されていないですもんね。
気分変調性障害について、他の記事も見ましたが、正式にはディスチミア親和型うつ病とはまた別物という見方で宜しいでしょうか。
気分変調性障害については、水島ひろ子さんの著書が私の症状や考え方と合っていましたし、気分変調性障害の人がこの本の内容に共感できるという口コミをしているのを何度か見たことがあるので、ディスチミアではない正式な気分変調性障害の理解に繋がるかもしれません。
by ゆう (2017-12-04 06:53) 

fujiki

ゆうさんへ
コメントありがとうございます。
オーバーラップしている部分はあるのですが、
概念は異なっているという認識で良いかと思います。

by fujiki (2017-12-08 05:39) 

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