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腫瘍マーカーが診断のきっかけになった癌の2事例 [仕事のこと]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
何もなければ今日は早く家に帰る予定です。

それでは今日の話題です。

腫瘍マーカーは当てにならない、
という人がいます。
勿論そうしたケースも多いことは事実ですが、
中にはマーカーの検査が、
早期癌の診断に結び付くケースもあります。
今日はそんな事例をちょっとご紹介します。

いずれも実際の診療所の事例ですが、
守秘義務および患者さんの特定を避ける観点から、
敢えて細部を変えて記載した部分のあることを、
予めお断りしておきます。

最初の事例の患者さんはGさん。60代の男性です。

糖尿病で通院中でしたが、
お仕事をされていてお時間がなく、
胃カメラやCTのような検査は、
ご本人も希望はされていませんでした。

腫瘍マーカーなら採血だけなので、
やってもらっても構わない、ということでしたので、
自費のマーカーの検査を定期的に行ないました。

すると、ある年の検査から、
CA19-9 という腫瘍マーカーが、
その前の年より上昇傾向を示しました。
この数値は概ね37u/ml 以下を正常範囲としています。
Gさんの数値は20程度が続いていたのですが、
ある年に30代の前半になっていました。

勿論数字自体は問題にならない程度の上昇です。
しかし、何年も動かなかった数値が、
急に上昇したことが気になりました。

CA19-9 は膵臓癌や胆道癌、
胃癌や大腸癌で上昇することの多いマーカーです。
胃癌や大腸癌で上昇するマーカーである、
CEA は全く上がっていなかったことより、
もし異常があるとすれば、
膵臓や胆道の異常を疑いました。

それでエコーやMRI などの検査をしましたが、
明らかな異常は見付かりません。

その時点では少し経過を見ることにしました。

次に3ヶ月後にマーカーを測ると、
CA19-9 は40代の前半までまた上がっていました。

やや過剰検査とは思いましたが、
その時点でもう一度MRI の検査を行なうと、
今回は膵臓の中を通る膵管という管に、
僅かな異常が疑われたため、
その所見を付けて、
癌の専門病院にご紹介しました。

結果は1センチ大の膵臓癌でした。

この事例の場合、
実際に癌のためにマーカーが上昇していたのかどうかは、
確定的には言えませんが、
手術にて治療後に、
マーカーの数値は10代の前半まで下がっていたことから、
その可能性は高いと僕は思っています。

それとは対照的なこんな事例もありました。

患者さんはMさん。70代の女性です。

健診の時に腫瘍マーカーの検査を自費で希望されたので、
検査を行なったところ、
CA19-9 の数値が150まで上昇していました。
エコーでは胆石を認め、
胆道という胆汁を流す管が、
やや拡張していましたが、
他には目立った所見がありません。
ただ、この数値は概ね100を超えると、
癌の存在を強く疑うのです。
その方は掛かり付けの病院がありましたので、
ご本人の希望もあり、
その病院で二次検査をして頂く方針としました。

その1ヵ月ほど後で、
お風邪でMさんが診療所を受診されたので、
お話をお聞きしたところ、
CTの検査をしたけれど、
矢張り胆石だけで問題はない、
と言われたとのことでした。

それから半年ほど経って、
Mさんが、今度はお腹の痛みを訴えて、
診療所を受診されました。
その目には明らかな黄疸が認められます。
僕は連絡を取ってその掛かり付けの病院で、
救急でMさんを診て頂きました。

結果はその時点で進行した胆道癌で、
腫瘍マーカーのCA19-9 は、
3000を超える異常高値になっていたのです。

胆道癌ははっきりとした塊を作らず進行する場合があるので、
CTやエコーの検査だけでは、
その存在を見落とすことがあります。
この方の場合、腫瘍マーカーの方が、
画像診断よりも、より病状をはっきり示していたのです。

こうした事例を経験しているので、
僕は比較的腫瘍マーカーの検査を、
診療に取り入れるようにしています。
勿論全体として考えれば、
測定が無駄なケースの方がずっと多く、
早期診断に向いた検査ではないのですが、
それでも簡単な検査である程度病勢を判断したり、
時には他の検査よりも、
癌の早期診断に役立つこともあるのです。

今日は診療所で経験した、
腫瘍マーカーが診断に役立った事例をご紹介しました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 8

bibi

昨日はコメントにご返信頂きありがとうございました。
毎日、お忙しい中ブログを更新されコメントにもお答え頂き尊敬しています。
記事も興味深いものばかりで読ませて頂いています。
今日の記事を見て益々、先生のファンになりました。
腫瘍マーカーの検査で基準値を超えていなくても、これまでの検査と比較して患者さんの変化に気付いたんですね。
色々な先生に診てもらって感じていたのですが、基準値って人それぞれ違うと思います。
でも大体の先生は、基準値を超えていなければ問題なしで済まされてしまうように思います。
総合病院の先生達は多くの患者をかかえ、いつも忙しそうでなかなか一人ひとりの全部は把握出来ないのでしょうね。
どこかマニュアル的に感じる事があります。
治療方法や薬の処方も体質に合わせて出来れば、副作用も少なくて済むのかな・・・とも思います。

Mさんの例のように一回の検査では見つからない事もあるんですね。
今後も腫瘍マーカーは定期的にチェックしてもらうようにしたいと思います。

by bibi (2010-03-11 01:40) 

fujiki

bibi さんへ
コメントありがとうございます。

実際にはちょっと検査を多くすると、
健康保険では不要とされて、
削られてしまうので、
なかなか難しいところです。

これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-03-11 08:27) 

shiro

はじめましてshiroと申します。
自分の病気のことを検索していたら先生のブログを偶然に
見つけ勉強させて頂いてます。
先生のブログは素人の私でもとてもわかりやすく感謝しております。
いろいろお聞きしたい事がありコメントを書かせて頂きました。
腫瘍マ-カーの事なのですが、実は母が肺に0・3ミリぐらいの影が2つ見つかり癌なのか良性の腫瘍なのか五分五分ですと言われました。 腫瘍マーカーを調べて頂けますかとお願いしたところ肺癌は腫瘍マーカーを調べても反応が出ないので、切ってみて病理に出して確かめますと言われました。母は心臓に持病を抱えており70代の年齢でもあり良性の物で肺に差ほど害のないものならそのまま温存して様子を見る選択をしたいのですが肺の腫瘍マーカーは検査しても意味のないものなのでしょうか?
またPETと言う癌を早期発見できる検査機器があるようですがこれでは
肺癌の確定診断をすることは可能でしょうか?
お答頂けると、とても有難いのですが・・・・。
by shiro (2010-10-03 22:37) 

fujiki

shiro さんへ
0.3ミリではCTで検出は困難なので、
3ミリ程度ではないでしょうか?
それでも現実問題として、
余程画像上特徴的な所見がなければ、
良性か悪性かは、
判断は困難だと思います。
腫瘍マーカーはこうした場合には、
あまり診断的な意味はないと思いますが、
全身的なチェックの意味合いで、
一度やってみることは悪くないと僕は思います。
PETで集積があれば、
それは1つの参考にはなります。
ただ、一般論で3ミリ程度の陰影で、
悪性所見がはっきりしなければ、
慎重に経過を見るのも選択肢の1つです。
もう一箇所の病院で、
セカンドオピニオンを依頼するのが、
良いのではないかと僕は思います。
by fujiki (2010-10-04 06:21) 

shiro

お忙しいのに早々にお返事を頂きありがとうございました。
PETは自費の人間ドックで受けられるので受けるようにします。
セカンドオピニオンの先生に意見を伺う事は先生のお考えのように私も良いと思いました。さそっく母に言ってみます。
ありがとうございました。
by shiro (2010-10-04 21:46) 

スギモト

いつも為になる情報ありがとうございます。

父がマルトリンパ腫をわずらっており、もし良い治療法をご存知でしたらお教え頂ければ幸いです。

よろしくお願いいたします。
by スギモト (2015-09-03 20:58) 

saki

はじめまして。少し不安がある中、先生のブログを拝見しまして質問させて頂きました。
42歳女性です。2009年から同じ病院で腫瘍マーカーも人間ドック
オプションで調べて頂いております。

(ca19-9/CEA)の値
2009年 10.5/0.5
2010年 9.4/0.8
2011年 11.4/0.4
2012年 10.4/0.4
2013年 8.7/0.4
2014年 14.1/0.6
2015年 23.7/0.6
と、昨年は気にしていませんでしたが、20台半ばに上がりました。
他のマーカー、一般血液検査は基準内です。
先生がお書きの規定内のわずかな上昇ではありますが、1年後(2016年12月予定)のドックを待たずに再度調べてみたほうがいいのでしょうか?

持病として、2010年~逆流性食道炎があり、普段はほぼ自覚症状のない胃が2年ぶりくらいに不調でした。また、婦人科系のデュファストンという薬を月7日だけ飲んでいます。
2003年から良性肝血管腫があり、ドックの腹部エコーで確認のみです。
よろしくお願いいたします。
 
by saki (2016-01-21 15:49) 

船越達朗

DMではCA19-9は偽陽性多いことが世界的にも報告例が多く、例示された患者の場合はそれ以外のマーカーも追加で検査すべきだったと思います。
自費なので本人が納得しているのでよいかも知れませんが、スクリーニングとして不適当なマーカーを医師があたかも有効な検査と薦めるのはいかがなものでしょうか?
by 船越達朗 (2017-08-11 19:10) 

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