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輸入ワクチンQ&A(その2) [新型インフルエンザA]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

朝から健診結果の整理などして、
それから今PCに向かっています。

それでは今日の話題です。

今日は輸入ワクチンQ&Aの続きです。

Q4;国産ワクチンと輸入ワクチンではどちらがより効果があるのでしょうか?

A;お答えします。
厳密な意味ではその評価は、
もう少し時間が経たないと分かりません。
ワクチンの効果というのは、
ワクチンを打つとその病気に罹らない(感染予防)ということと、
ワクチンを打つとその病気に罹っても軽く済む(重症化予防)ということの、
2つの点から考える必要があります。
それは、いずれも実際に打ってみないと、
その結果は判明しないからです。
ノバルティス社のワクチンに関しては、
感染と肺炎の両方を予防した、
というイタチのデータが発表されていますが、
これはあくまで動物実験レベルのもので、
人間でも果たして同様の効果があるのかは、
まだ分かりません。
今の時点でワクチンの効果があったとか、ないとか、
と報道されているのは、
ワクチンを打った後で、その人の血液の、
抗体の数値が上昇し、
それが国際的基準を満たしているかどうか、
という数値の評価に過ぎません。
それが本当に感染予防や重症化予防に結び付くのかどうかは、
まだ未知数の部分があるのです。

抗体の上昇率のみでワクチンの効果を見ると、
10歳以下のお子さんに関しては、
圧倒的にグラクソ社のワクチンが優秀で、
1回接種で効果が確認されているのは、
このワクチンのみです。
ノバルティスのワクチンは、
2回接種での有用性が海外のデータでは確認されていますが、
国内データは公表されていません。
国産ワクチンに関しては、
全く臨床試験の結果は公表されていません。

これが20代から40代くらいの年齢層では、
国産のワクチンも海外の2種のワクチンも、
それほどの差はありません。

50代以上の年齢層では年齢が上昇するに従って、
抗体の上昇の程度は低いものになり、
ノバルティスのワクチンは1回接種で基準を満たさないため、
2回接種になっています。
グラクソのワクチンと国産ワクチンは、
1回接種で問題なしとの決定ですから、
これだけを見ると、
ノバルティスのワクチンが劣っているようですが、
実際にはグラクソのワクチンも国産のワクチンも、
50代までのデータがその中心で、
厳密に高齢者で効果を検討したデータは、
殆ど存在しません。
従って、高齢者は1回接種では、
不充分なのではないか、という疑問は、
現時点で解決されてはいないのです。

Q5;国産ワクチンと海外のワクチンで、その接種法に何か違いがあるのでしょうか?

A5;お答えします。
国産のワクチンは皮下注射という方法で注射しますが、
輸入ワクチンは筋肉注射で注射する、
という違いがあります。
要するに、国産ワクチンよりより深い位置に、
輸入ワクチンは注射をするのです。

一般論で言って、
殆どのワクチンは海外では筋肉注射で施行されています。
その意味では日本で殆どのワクチンが皮下注射されていることの方が、
ちょっと非常識なことなのです。
その理由は1970年代に主に抗生物質や解熱剤の、
お子さんに対する皮下注射で、
「筋短縮症」という重症の副作用が、
多く発生したことによるものです。

しかし、実際にはワクチンは筋肉注射の方が、
より効果があり、また打った場所が腫れたりするような、
副反応も少ないのです。

それなのに小さいお子さんばかりではなく、
大人も皮下注射を行なうという現行のやり方は、
行政の怠慢と言われても仕方のない性質のものです。
要するに臭い物に蓋をしただけなのです。

ただ、それはそれとして、
今回急に輸入ワクチンに限って、
殆ど何の議論もなくワクチンの筋肉注射が容認されたことは、
それまでの硬直した行政の対応を考えると、
如何にも唐突かつ一貫性を欠いたものだと、
僕は思います。

仮に本当に筋肉注射の危険性を慎重に考えて、
ワクチン皮下注射の方針が決められたのだとすれば、
今回見直されるに当たっても、
もっと慎重な議論がなされてしかるべきです。
しかし、実際には「海外では筋短縮症が問題になっていないから」
というだけの理由で、今回の決定は行なわれており、
それでは安全性のことなど、
はなから考えて皮下注射を選択していた訳ではなく、
「変えてまた騒がれると面倒だから」
という程度のことだったのかな、
という風にも思えます。

国産ワクチンも筋肉注射にするべきかどうかを含めて、
安全性に踏み込んだ議論をするべきだと、
僕は思います。

今回筋肉注射の部位は、肩の三角筋と、
腿の外側の筋肉、と定められ、
特に1歳未満のお子さんは腿に打つこと、
とされています。

実際にお子さんへの筋肉注射が開始された場合
(それは来シーズン以降になりそうですが)、
この接種部位はかなり混乱を招くことになりそうです。
実地の医療者にとって、
腿の外側への注射というのは、
あまり普段行なうことのない手技であるからです。

Q6;輸入ワクチンには水銀が多く含まれている、という話を聞きましたが、それは本当ですか?

A6;お答えします。
それは本当です。
1本のボトルから、複数回使用するワクチン製剤では、
中で細菌が繁殖したりしないように、
殺菌剤が添加されています。
その目的で、現在最も多く使用されているのが、
有機水銀を含む「チメロサール」という物質です。
アメリカでは日本より、
お子さんの時に打つワクチンの量が遥かに多いので、
チメロサールも日本とは比較にならないほど、
大量にお子さんの体内に入ります。
それが発達障害の原因なのでは、
という説がある学者によって唱えられ、
公式には否定されていますが、
まだ議論の中にあります。
日本ではその問題があってから、
ワクチンに含まれるチメロサールの量を減らしており、
チメロサールに代わる殺菌剤の開発も行なっています。
その結果、現在使用されている新型インフルエンザワクチンには、
チメロサールは大人1人1回での換算で、
0~4μg しか含まれていません。

その一方、ノバルティスのワクチンには、
大人1人1回分の換算で25μg(国内添付文書の記載による)、
グラクソのワクチンには、
5μgのチメロサールが含有されています。

つまり、ノバルティスのワクチンには、
他のワクチンより圧倒的に多い量の、
チメロサールが含まれているのです。
こうした問題点がありながら、
小児への適応もあっさりと決定した今回の審議には、
僕は非常に問題があると考えます。
また、国内メーカーのチメロサール減量への努力が、
あまり知られていないことも、
納得のいかない点ではあります。

以上輸入ワクチンQ&Aでした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 6

hikkabouya

 我が家にも高校生を頭に3人の子供がいて、今年に入って新型インフルエンザの予防接種を受けましたが、受けたことは知っていても、それが国内製なのか輸入のものなのかすら、注意を払ってませんでした。
 色々な問題をはらんでいることが先生の記述でよくわかりました。
 今後の参考にいたします。
by hikkabouya (2010-01-15 09:29) 

まみしゃん

相変わらず、インフルエンザ関連の報道は後を絶ちませんが・・・
安全性が確立されていない輸入ワクチンでも受けるメリットがあるのかということを明確にしてほしいものだと思います。
第1波の流行は終わった、新型インフルエンザが季節性を淘汰しているなどという報道がされたと思ったら、第2波の流行も見られ第1波とは違う年齢層の患者さんも増えている・・・と聞けば、リスクを負ってもワクチンをと思う人も増えるのではないでしょうか?
そういう自分も息子も、受けるつもりはありませんが^^;
by まみしゃん (2010-01-15 10:13) 

fujiki

hikkabouya さんへ
コメントありがとうございます。

少しでもご参考になれば幸いです。
これからもよろしくお願いします。
by fujiki (2010-01-15 21:21) 

fujiki

まみしゃんさんへ
コメントありがとうございます。

第1波とか第2波という表現は、
スペインかぜの事例からの引用だと思いますが、
そうした言い方が当て嵌まるような状況とは考え難く、
僕はあまり適切ではないという気がします。
どう考えても輸入ワクチンが必要ないのは明らかで、
「必要だ」という報道を大々的に流しつつ、
こっそり輸入量の削減交渉をしている、
というのは非常に姑息な気がします。
by fujiki (2010-01-15 21:34) 

あにゃ

「筋短縮症」というのですね!
病名が分かってすっきりしました!

1971年生まれの私は幼い頃、風邪のために
大腿部に打たれた注射の副作用で太腿の筋肉が萎縮しています。
(穴が開いたように大きくくぼんでいる)
物心ついたときからあったものなので、
自分の体の特徴くらいにしか思っていませんでしたが、
将来は走ることはできなくなるだろうといわれた両親は
とても心配したそうです。
(今でも外見はとても目立ちますが、動かすのには問題ありません。)

先生の記事は本当に何から何まですべて参考になります。
ありがとうございます!
by あにゃ (2010-01-16 01:20) 

fujiki

あにゃさんへ
コメントありがとうございます。

以前もう少し詳しくまとめた記事があるので、
もしよろしければお読み下さい。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2009-10-06

あにゃさんの症状は間違いなく、
筋肉注射の副作用による、
大腿四頭筋の短縮症ですね。
風邪で安易に抗生物質の筋肉注射が行なわれ、
それが実は筋肉注射には適さない薬品だったのです。
酷い話ですが、
同じような構図は別のことでは、
今も繰り返されているのが現実なのだと思います。
by fujiki (2010-01-16 08:22) 

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