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カンピロバクター腸炎のトピックス [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は水曜日なので、
診療は午前中で終わり、
午後は産業医の面談で調布の方へ、
遠征の予定です。

それでは今日の話題です。

以前カンピロバクターによる腸炎の記事を書きました。

今日はその補足的な話です。
前の記事を読まれていない方は、
まずこちらからお読み下さい。
http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2008-12-05
よろしいでしょうか。

カンピロバクターはらせん状の細菌で、
食中毒の原因菌です。
その発生件数は、
2003年以降の調査では、
細菌性の食中毒のうち、
最も頻度の多いものです。

診療所での検出頻度も圧倒的に多く、
今月ももう既に数名の患者さんから、
検出されています。
僕の感触としては、
ここ2~3年で増えている印象を持っているのですが、
全国的な統計は、
それ以前から急増しているようです。
地域による特性がある程度あるのではないか、
と考えていますが、
断定的なことは言えません。

カンピロバクターに次いで、
今診療所の便培養で、
多く検出されている細菌は、
病原性大腸菌で、
特にO7 やO13 の検出頻度が多くなっています。
数年前には結構腸炎ビブリオの事例があったのですが、
最近はあまり経験がありません。

前回の記事では、
血の混じった下痢は、
病原性大腸菌に特徴的、
と書きましたが、
今回文献など見てみると、
血性の下痢の50パーセントがカンピロバクターで、
大腸菌は20パーセント程度との統計がありました。
ただ、僕の経験では、
カンピロバクターで血性の下痢は、
前回ご紹介した1例だけで、
他の患者さんは、
茶色い下痢便が殆どでした。
まあ、診療所では軽症例を診ることが多く、
逆に病院では重症例を診ることが多いので、
その違いがあるのかも知れません。

現時点でのカンピロバクターに関するトピックは、
抗生物質への耐性菌の問題と、
合併症としての、
ギランバレー症候群についてのことの2つです。

これも前回の記事で、
カンピロバクターの腸炎に、
ニューキノロンというタイプの抗生物質を使用し、
著効した例をご紹介しました。

ただ、最近問題になっているのが、
このニューキノロンに対する耐性菌です。
カンピロバクターには幾つかの種類がありますが、
人間に感染するタイプの95パーセント以上は、
Campyrobacter jejuni というタイプである、
と言われています。
このタイプの菌は、
鳥、羊、牛などの腸の中に存在していて、
そのために牛の生肉やレバー、
鳥刺しや生焼けの鶏肉での感染が多いのです。
ところが、最近の統計では、
このタイプの菌の、
20~40パーセントはニューキノロンに耐性である、
と報告されているのです。

ただ、このデータも、
おそらくは結構地域差がありそうです。
診療所での検査では、
先月までの培養で、
100パーセントニューキノロンの効くタイプの菌が、
検出されています。
今月になって、
初めて1例、ニューキノロンに耐性の菌が、
検出されたのです。

従って現状では、
抗生物質の必要と思われる患者さんに対しては、
ニューキノロンを第一選択として使用しても、
それほど誤りではない、
と考えています。

ただ、いずれにしても、
抗生物質の効き難い菌が、
増えていることは確かです。
この原因として、
現時点で考えられているのは、
農家での家畜に対する、
飼育時の抗生物質使用の問題です。
抗生物質を使うことで、
薬に強い菌が動物の体内で培養され、
それがその動物を食料とする人間に逆襲する訳です。

鳥インフルエンザや狂牛病の事例でも明らかなように、
人間にとって危険性の高い病原体は、
ほぼ間違いなく動物に感染した病原体の、
変異が引き金となります。
ペットを飼われている方はお分かりのように、
人間に使われている薬は、
その殆どが動物にも使われています。
人間の食料として飼育される動物にも、
病気予防や成長促進など、
様々な名目で大量の薬剤が使われます。

抗生物質を乱用すれば、
薬の効かない凶悪な病原体を、
そのことによって作り出してしまうという事実は、
広く知られています。
しかし、同様のことが人為的に、
多くの動物や植物に対して行なわれ、
それが同様の、いや場合によっては尚悪い結果を、
生む可能性の高いことには、
鈍感な方が多いようです。

もう1つのカンピロバクターの感染の特徴は、
ギランバレー症候群、という合併症が、
非常に多い、という事実です。

ギランバレー症候群というのは、
末梢の運動神経が障害され、
動かなくなる病気で、
ウイルス感染などの後に起こりやすいことが知られています。
原因は完全には分かっていませんが、
病原体に対する身体の免疫の、
異常な反応によると言われています。
実はこの病気の原因として、
ダントツに多いのがカンピロバクターの感染です。
何と、全てのギランバレー症候群の、
30~50パーセントが、
カンピロバクターがきっかけになったものと、
報告されています。
おまけに重症例が多く、
ある統計では発症一年後の治癒率が、
60パーセント程度と報告されています。
要するに、4割の方は後遺症を残すのです。

怖いですね。

ですから、カンピロバクターの腸炎になったら、
下痢が治まっても安心してはいけません。
下痢が落ち着いて3週間くらいしてから、
足に力が入り難くなり、ふらついたり、
倒れたりしやすくなるのが、
典型的な症状の経過です。
こうした症状があれば、
必ず精密検査が必要です。

今日はカンピロバクターについての、
幾つかのトピックをお届けしました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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