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ミルクアルカリ症候群のメカニズム [医療のトピック]

こんにちは。
六号通り診療所の石原です。

今日は胃カメラの日なので、
カルテの整理をしていたら、
患者さんのご家族がお見えになって、
お話をしているうちに時間が経ちました。
本当は健診の整理も少し溜まっていたんですが、
それは手付かずになりました。
ご家族の方もお帰りになり、
今PCに向かっています。

さて、今日の話題です。

今日はちょっとマニアックな話です。
そのつもりで、お読み下さい。

ミルクアルカリ症候群、という病気があります。
(厳密には病気ではないですが、ややこしくなるので、病気と呼びます)
皆さん、お聞きになったことがありますか?

20世紀の初め頃に、
胃潰瘍の治療のために、
牛乳とマグネシウム製剤とを、
一緒に飲むという治療がありました。
マグネシウム製剤には、酸を抑える働きがあります。
牛乳は栄養を付け、粘膜を保護する、という目的ですね。

ところが、その治療を受けた人の中で、
嘔吐したり、意識障害を起こしたりする患者さんが複数現れたのです。
その患者さんの血液の中のカルシウムは、
異常に高い値を示しました。
要するに、高カルシウム血症が起こったのですね。

このように、牛乳やカルシウムの摂り過ぎと、
マグネシウムの服用が、
ミックスして起こるカルシウムの異常を、
「ミルクアルカリ症候群」と呼びます。

現在ではこうした治療は行なわれていません。

しかし、マグネシウム製剤は、
主に便秘薬として使われています。
MgO(酸化マグネシウム)というのが、それですね。
よく、「カマ」と言われています。
便秘薬としては、依存性がなく、
マイルドで安全な薬なので、よく使われます。

今でも稀なことではありますが、
この「カマ」を飲んでいて、
牛乳を沢山飲んでいたりとか、
サプリメントのカルシウムを飲んでいる人で、
この病気が起こることが報告されています。

物の本には、カルシウムとマグネシウムの相乗効果で、
状態が悪化するのだ、
と書かれています。

この病気について、
前から疑問に感じていたことがありました。
それは、
何故マグネシウム製剤でカルシウムが上がるのか、
ということです。

カルシウムを上げるホルモンは、
副甲状腺ホルモンと言います。
血の中のカルシウムが下がると、
このホルモンが刺激されて、
骨が壊され、カルシウムが上がるのですね。

一般的に言えば、このホルモンが高ければ、
カルシウムは上がるのです。

さて、マグネシウムが上がると、
この副甲状腺ホルモンは抑えられるのですね。
それなら、カルシウムは下がってもいい筈なのに、
何故上がるのでしょうか?

皆さん、分かりますか?

日本の教科書には、殆ど記載がないんです。

それで、「ハリソン内科学」を読むと、
さすがですね。
きちんと解説されていました。

以下簡単に回答を示します。

マグネシウムが身体に入ると、
副甲状腺ホルモンは低下します。
すると、腎臓からの重炭酸イオンの再吸収が増えるのです。
これで、血液はアルカリ性になります。
これを、アルカローシスと言いますね。
アルカローシスになると、
今度はそのためにカルシウムの再吸収が増えるのです。
カルシウムの吸収が増えれば、
当然血液のカルシウムが上がります。
これで悪循環になって、
カルシウムはどんどん上がり、
病気は進行する訳です。

分かりましたか?

現在は骨粗鬆症が必要以上にクローズアップされているので、
カルシウムのサプリメントを摂り、
牛乳も沢山飲み、
便秘薬も飲んでいたりすると、
この病気が起こる可能性があります。
カルシウムを摂ると便秘になるので、
この組み合わせはよくあるのです。
皆さんもご注意下さい。
厚生労働省の見解は、
1日2300mg 以上のカルシウムを摂らないと、
そんなことは起こらない、
というのですが、
以前書いたように僕はその見解には懐疑的です。
カルシウムの吸収率には、
かなりの幅のあることが考えられるからです。

実際1990年代に、通常量のカマと乳製品で、
高齢の方に高カルシウム血症が起こったことが、
報告されています。

従って、現実にはこうしたことは、
結構あるのではないか、
と僕は思っています。
お腹の風邪と、
見掛けの上では、変わりない症状ですからね。

今日はちょっとマニアックなカルシウムの話でした。

週も後半です。
お仕事の方は頑張りましょうね。
今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
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コメント 9

acco

石原先生、こんにちは。

この内容、20年前に教えて頂きたかったですぅ・・・
お腹に良いものと思って、小さい頃からミルクだけは
かなりの量、毎日せっせと飲んでいました。
ふと思い立って、一年位前から、嗜好品程度に減らした所、
寧ろ体調が良いんです。
他にも、色々思い当たるフシが・・・

とっても参考になりました。
ありがとうございます。

カルシウム吸収量の測定方法も、早く教えて下さい♪
by acco (2008-06-19 17:48) 

fujiki

accoさんへ
乳製品は、多分結構その人の体質を選ぶ食品だ、
と言う気がします。
カルシウムの吸収の話は、ちょっと事情があって、
もう少ししてから書くつもりです。
勿体ぶる訳ではないのですが、少しお待ち下さい。
by fujiki (2008-06-19 22:44) 

けろきち

こんにちは。恥ずかしながらお聞きします。

「マグネシウムが上がると、副甲状腺ホルモンは抑えられる」
この部分が、どうも理解できません。
教えていただけますと、うれしいです。

よろしくお願いいたします。

by けろきち (2009-01-28 10:28) 

fujiki

けろきち さんへ

カルシウムとマグネシウムは、
いずれも2価の陽イオンで、
よく似た性質を持っています。
従って、カルシウムと同じように、
マグネシウムが上がれば、
副甲状腺ホルモンは抑えられ、
マグネシウムが下がれば、
副甲状腺ホルモンは上がります。
ただ、通常はカルシウムの与える影響の方が、
ずっと大きいので、
マグネシウムの変化は無視出来る訳です。
(これはハリソン内科学の記述です。
僕自身はデータは持っていません)

しかし、例外的にマグネシウムの高度の欠乏があると、
細胞内のマグネシウムが不足することで、
(おそらくはアデニル酸シクラーゼの不活化)
副甲状腺ホルモンの分泌が止まってしまい、
高度の低カルシウム血症になることが、
知られています。
この場合、
マグネシウムを注射すると、
即座に副甲状腺ホルモンが、
上がるのです。

ただ、ちょっとこの記事を書いた時点では、
僕の頭にも混乱があって、
論旨が明確ではないですね。
読み直して見ると、
ちょっと恥ずかしい内容です。
後で書いた、
「続・ミルクアルカリ症候群マニアのための補足」、
の方が、もう少し正確な内容になっている、
と思います。
記事の意味合いは、
「アルカローシスと高カルシウム血症が、
相乗効果を示すのはどうしてか?」、
くらいのことです。
マグネシウムを持ち出したので、
話がややこしくなりました。

こんなところで、如何でしょうか?

by fujiki (2009-01-28 21:06) 

けろきち

こんばんは。

こんなに丁寧にご回答がいただけるとは、思いませんでした。
おかげで、理解できました。
本当にありがとうございました。

先生のブログは、本当に勉強になりますので、たくさん読ませて
いただきたいと思います。

ありがとうございました。
by けろきち (2009-01-28 22:13) 

マミィ

だいぶ前の記事ですが。。。
10キロの1歳の赤ちゃんが便秘でマグラックス細粒を飲んでます。フォローアップミルクも1日に800くらい飲んでいますが、ミルクアルカリ症候群は大丈夫でしょうか?
by マミィ (2015-03-17 10:23) 

fujiki

マミィさんへ
これはちょっと断定的に言えないのですが、
先天的なものを除けば、
乳児期の高カルシウム血症は稀で、
ミネラルの必要量は多いので、
ほぼ問題はないものと思います。
原因不明の嘔吐下痢などがなければ、
ご心配はされないで良いのではないでしょうか。
by fujiki (2015-03-17 13:09) 

マミィ

ありがとうございますm(__)m
安心しましたm(__)m
相談してみて良かったです[るんるん]
by マミィ (2015-03-18 14:23) 

松原隆

初めまして大阪からです
1週間前に寝違いが段々と酷くなりイワユル五十肩?になり病院へ
レントゲンの結果、腕と胴体の繋ぎ目に白い影が有り、先生は「石灰化」だと....?
「石灰化」で検索した結果カルシウムが「石灰化」の場所に付着したから痛みが発生
(石原先生のサイトも石灰化でたどり着きました)
*以前、痛風が出た時に好物の赤貝を過剰に食べた結果で出ましたので今回を照らし合わせたら、「豆乳」しか有りません
1リットルサイズを1日に2本、更に豆腐を2丁

あと、虫歯対策として砂糖類など糖類制限も重なったのだと推測してます

過剰カルシウムが判ったので中止して砂糖もアルカリ性を中和させる為に使用したら現在は強い凝りがあるだけで維持してます
勿論、鎮痛剤も服用時間を調整して服用した結果ですが

*何事も過剰摂取は程々ですが似た様な人達の参考に成ればとコメント致しました
by 松原隆 (2017-12-02 09:42) 

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