So-net無料ブログ作成
検索選択
前の5件 | -

吹奏楽器による過敏性肺炎の発症について [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
台風の影響で、
朝から雨が急に降ったり止んだりと、
不安定な天気になっています。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
バグパイプによる過敏性肺炎.jpg
今月のThorax誌に掲載された、
バグパイプの使用により誘発されたと思われる、
過敏性肺炎の症例報告の論文です。

内容が興味深いため、
ケースレポートに過ぎないものですが、
複数の医療ニュースなどに紹介されていました。

過敏性肺炎というのは、
一種のアレルギー反応により引き起こされる肺炎のことです。

カビや化学物質、
キノコの胞子や動物の糞便などに含まれる蛋白質などが、
アレルギー反応の原因となる抗原となり、
そうした物質を繰り返し吸入することにより、
身体が感作されると、
その後同じ抗原を吸い込むことにより、
肺にアレルギー性の炎症が起こります。

たとえば、カビが原因と言っても、
カビが肺の中で増殖して炎症を起こすのではないのです。
カビの抗原に対して、
身体が過剰反応を起こし、
免疫が過剰に反応することにより、
「アレルギー性の炎症」を起こすのです。

肺炎ですので、
肺のレントゲンやCTを撮ると、
すりガラス様と表現される淡い陰影が検出されます。

過敏性肺炎の原因抗原としては、
日本では「夏型過敏性肺炎」と言って、
古い日本家屋などでトリコスポロンというカビによるものが有名で、
鳩やインコなどの鳥の糞が原因で、
飼っているご家庭で発症するものもあります。

総じて、
原因となる抗原が判明して、
そこから離れる環境が維持されれば、
病状は改善しますが、
抗原と触れ続けるような環境では、
病状は悪化して呼吸困難が進行し、
別の感染などを併発して命に関わることもあります。

今回の論文で紹介されている事例は、
61歳のイギリスの男性で、
長年に渡り過敏性肺炎と診断されて、
ステロイドを主体とする治療を継続していましたが、
病状が悪化して、
結果的には亡くなられたケースです。

この方はバグパイプを趣味としていて、
毎日その演奏をしていました。
結果的には予後の改善には結び付かなかったのですが、
バグパイプの中の培養から、
複数のカビの抗原が同定されました。

これは推測ですが、
オーストラリアで生活していた時期に、
著名に症状が改善していて、
その時にはバグパイプは使用していなかったため、
バグパイプ内のカビの抗原による、
過敏性肺炎と診断されました。

バグパイプに起因する過敏性肺炎の報告は、
上気論文によればこの1例のみですが、
他にトロンボーンとサキソフォン奏者における、
同様の事例が報告されていて、
そのケースはどちらもステロイドの投与と、
当該の楽器の消毒と洗浄により、
病状は改善しています。

個人的な経験では、
尺八を趣味にしている男性で2例、
慢性の呼吸困難や咳嗽の事例を診たことがあり、
その当時は関連を意識していませんでしたが、
ひょっとしたら同様のケースであったかも知れません。
その方々も、
何故か尺八の演奏を繰り返している発表会の前などの時期に、
病状の悪化をみていたからです。

このように、
決して報告の多い訳ではないのですが、
楽器演奏と呼吸器症状というのは、
盲点の部分があり、
実際にはこうした事例はもっと多いのかも知れません。
通常吹奏楽器の演奏は、
むしろ肺活量を増し、
呼吸器疾患のある方では推奨されることなので、
それで実は悪化していても、
気づかないケースが多いのでは、
と考えられるからです。
また、間違いなく吹奏の楽器の内部は、
カビの繁殖には適している環境でもあるからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

「娼年」(作 石田衣良 脚本・演出 三浦大輔) [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日2本目の演劇の記事になります。

それがこちら。
娼年.jpg
石田衣良さんの「娼年」と「逝年」を、
ポツドールの三浦大輔さんが戯曲化して演出し、
松坂桃李さんと高岡早紀さんが主演した、
見てビックリの舞台が、
今池袋の芸術劇場プレイハウスで上演されています。

三浦大輔さんは最近は舞台から、
映画などに軸足を移していて、
ポツドールのような活動はもうされないようですが、
今回はまあ期待された過激さを演じている、
という感じはあるもの、
ほぼ全編セックス描写のみが連続する、
という作品を臆面もなく上演していて、
普段は裸にはまずならないような役者さんが、
ほぼ全裸で次々と絡みを演じ、
勿論偽物ではありますが、
実際にザーメンが飛び、女性が放尿し、
フェラチオの効果音まで流れるという、
空いた口が塞がらないような作品になっています。

ストーリーラインはそれでいて、
正攻法の純愛と難病と少年の成長物語として成立していて、
後味は決して悪くはありません。

それほど舞台は出ていない映像のスターに、
何もこんな芝居をさせなくてもいいじゃないか、
という気はしますし、
これを本当に三浦さんがやりたいのだとすれば、
もっと小さな劇場で、
名前のそれほど知られていない役者さんでやった方が、
より完成度の高い伝説的な芝居になったのではないか、
という気もします。
劇場は大きすぎ、立派過ぎて、
客席の雰囲気も含めて、
今回のような煽情的な芝居を上演するには、
かなりの違和感がありました。
僕は2階の最前列での鑑賞だったので、
全体像を観ることが出来ましたが、
客席によっては、
「何をしているのか分からない」
という感じもあったのではないかと思います。
隠すところは隠さないといけないので、
死角が多く、
観客に不親切な舞台ではあったと思います。

ただ、前例のない作品であることは間違いがなく、
小劇場の劇団の多くが、
性を主題にした作品をしばしば上演していながら、
レオタードや露出の少ない衣装で、
腰の引けた絡みを演じている中で、
プロの凄みを見せたと言っても良いと思います。

内容は意外にオーソドックスで、
セックスシーン以外の場面の芝居も、
極めて普通に演出されています。
これはポツドール時代の三浦さんとは違いのあるところで、
かつては新劇的な芝居を拒絶するようなところがあったのですが、
今回は絡み以外は極めてオーソドックスで教科書的です。
破天荒なようで、
その辺のバランス感覚はなかなか的確だ、
という印象を持ちました。

メインのセックスシーンが、
作品として成立しているかというと、
それはかなり微妙なところで、
役者さんもこうした芝居は初めての人が多く、
何かたどたどしくぎこちない感じはあります。
こちらが気恥ずかしくなるような感じもあります。
腹を括ってセックスを主題にするのであれば、
もっと別の方法論もあり得たのではないか、
という気もしますが、
この気恥ずかしさが、
三浦さんの持ち味である、
という思いもあります。

そんな訳でかなり趣味的な作品なので、
とても一般の方にお勧め出来るような芝居ではありませんが、
三浦さん以外では、
まず絶対になしえなかった作品であることは間違いがなく、
再演なども間違いなくされないと思いますので、
ご興味のある方は一見の価値はあると思います。

怪作です。

それでは今日はこのくらいで。

皆さんも良い休日をお過ごし下さい。

石原がお送りしました。

劇団☆新感線「ヴァン!・バン!・バーン!」 [演劇]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は日曜日でクリニックは休診です。

休みの日は趣味の話題です。

今日はこちら。
ヴァン・バン・バーン2.jpg
劇団☆新感線の新作秋興業が、
生田斗真さんをゲスト主役に迎え、
赤坂ACTシアターで賑々しく上演されています。

今回の脚本は宮藤官九郎さんで、
3回目の新感線への脚本提供になります。

前回は「蟷螂峠」という、
物凄く暗い時代劇で、
あまり新感線の世界にフィットしているとは思えませんでした。
その前に「犬顔家の一族の陰謀」という作品があり、
これはクドカンワールド全開という感じの、
楽しい作品でした。
交流は深いと思われるクドカンと新感線ですが、
意外にクドカン台本の新感線の舞台は、
多くはありません。

今回は内容的にはいのうえ歌舞伎の世界に近いもので、
平安時代のパートはもろそうなのですが、
その後現代が舞台になると、
ビジュアルバンドの演奏や夏フェスなどの歌物の世界になり、
またそこにヤクザの抗争劇などが絡み、
最後は得意の長大な立ち回りが待っています。

背景に複数の巨大なLEDパネルを交差させ、
ダンスや殺陣とバンド演奏、
ど派手な音響や照明効果が一体となり、
計算され尽くした演出は、
さすが新感線というクオリティです。

ただ、人間の移動などはあまりに計算され過ぎていて、
演劇というより、オリンピックの開会式のような、
大イベント的な演出でした。
手作り感はあまりなく、無機的な印象で、
役者さんも段取りの動きにとらわれている感じがありました。

内容は盛り込み過ぎで、
ディテールに面白みが乏しく、
人物が入り乱れて筋立てが複雑な割には、
ダラダラと長い場面が多い、
という印象でした。

主人公は初恋の人の生まれ変わりを、
1000年待ち続ける吸血鬼で、
ビジュアルバンドのボーカルという設定なのですが、
そこにエイリアンの侵略みたいなテーマを絡ませているので、
悲恋の切ない感じや、
死ぬことの出来ない吸血鬼の悲しみのようなものは、
何処かに消えてしまっています。

クドカンとしては珍しく、
ラストに伏線が回収されるようなところがなく、
中途半端に思いつきだけで終わってしまった、
という感じでした。
意外に新感線の世界とクドカンとは、
相性が悪いのかも知れません。

スタッフワークの完成度は高いので、
何となく見れてはしまうのですが、
今回は新感線としては、
消化不良に終わった1本であったように思います。
生田斗真さんは頑張っていましたが、
役柄がちょっと間抜けな感じなので、
損な役回りに終始していたのは残念に感じました。
概ね歌ものはそんな感じになりますね。

今日はもう1本演劇の記事があります。

引き続きそちらもどうぞ。

石原がお送りしました。

新海誠「君の名は。」 [映画]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は午前午後ともいつも通りの診療になります。
終日石原が外来を担当する予定です。

今日は土曜日なので趣味の話題です。

今日はこちら。
君の名は。.jpg
新海誠監督の新作アニメで注目度の高い、
「君の名は。」を初日に観て来ました。

これは確かに感動的で美しい力作で、
僕は1人で観に行って、
両側は女の子の2人連れだったので、
とても恥ずかしかったのですが、
物語の骨格が現れる中段から涙が止まらず、
最後までオイオイ泣いてしまいました。

「なにこのオヤジ泣いてやがる」
と思われるのは嫌だったので、
鼻を啜る音を必死で止めていました。
これは出来ればもう少し空いている時に、
両側は空席の映画館で、
思い切り泣きたかったと思いました。

これはテーマの勘所はネタバレをしていないので、
予告編だけを見ると、
都会の男子高校生と、
田舎の女子高校生が、
夢の中で何度も入れ替わる、
という話のように思えて、
「なんだい、時代遅れの転校生かい。随分古めかしいな」
と思ってしまうのですが、
それは実は導入に過ぎなくて、
○○テーマであったことが中段で分かります。
そこから先はもう、涙涙の展開なのです。

映像の美しさは勿論特筆もので、
かつ幻想的な場面では、
新しい試みが幾つもされています。

暗転というかブラックアウトを上手く活かしていて、
そのため映画館で観ないと、
その魅力が十全には伝わらない作品になっています。
この辺りは大林宜彦監督の「時をかける少女」にも似ています。

ラストは観終わって冷静になると、
大甘過ぎるという気もするのですが、
観ている間は心が震えているので、
そんなことは気になりません。

そして、ある意味こうした奇跡でもなければ、
今の世の中で生きていくことは出来ないようにも思います。

その意味でこの映画はまさに現代の日本の映画で、
今生きている若い世代にエールを送る映画です。
こうした希望という名前の奇跡を用意するために、
捨石になることが、
僕達の世代の使命であるのかも知れません。

どうか是非、先入観なく映画館に足をお運びください。

その価値は充分にあると思いますし、
少しだけ心が洗濯された気分で、
すれた中年も感動させてくれる映画であることは、
間違いがないからです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。

ピオグリタゾンと膀胱癌リスク(2016年ヨーロッパ4カ国疫学データ) [医療のトピック]

こんにちは。
北品川藤クリニックの石原です。

今日は金曜日でクリニックは休診ですが、
老人ホームの診療などには廻る予定です。

それでは今日の話題です。

今日はこちら。
ピオグリタゾンと膀胱がん(ヨーロッパ4カ国調査).jpg
今月のBritish Medical Journal誌に掲載された、
糖尿病の治療薬と膀胱癌との関連についての論文です。

この話題についてはこれまでも何度か記事にしています。

ピオグリタゾン(商品名アクトスなど)は、
インスリンの効きを良くする薬として、
むしろ国外でその評価が高く、
欧米のガイドラインにおいても、
メトホルミンに次ぐ第二選択くらいの位置にあります。

ただ、この薬の大きな問題は、
発売当初から、
膀胱癌のリスクを上昇させるのでは、
という危惧があったということです。

これはまず発売前の動物実験において、
オスのラットの膀胱癌の発症が増加した、
という知見から始まっています。
ただ、メスのラットではそうした結果はなく、
同じネズミの仲間であるマウスでも再現されませんでした。

2003年にアメリカのFDAは、
ピオグリタゾンによる膀胱癌の発症について、
発売後10年間の観察研究を指示しました。

その5年間の時点での中間解析の結果では、
トータルにはピオグリタゾンの使用と、
膀胱癌の発症との間には、
有意な関係は認められませんでした。
ただ、2年を超えて使用している患者さんに限ると、
1.4倍という若干ですが有意な、
膀胱癌リスクの増加が認められました。
この結果を受けてFDAは、
ピオグリタゾンのラベルに、
その点の記載を求めています。

その観察研究をより延長し、
平均で7.2年の解析を行なった結果が、
昨年のJAMA誌に発表されていて、
その時点で一度記事にしています。
ここでは膀胱癌のみではなく、
全部で10種類の癌のリスクが解析されています。

193099名の膀胱癌の患者さんが対象となり、
そのうちの18%に当たる34181名が、
ピオグリタゾンを使用していました。
平均の使用期間は2.8年です。
幾つかの別個の解析を行なった結果として、
ピオグリタゾンの使用者では、
若干膀胱癌の発症率が高い傾向がありましたが、
その差は有意なものではありませんでした。

従って、どうもこの問題は、
あまりクリアな形で結論には至っていないのです。

今年のBritish Medical Journal誌に、
イギリスのプライマリケアのデータベースを利用した、
この問題についての、
また新たな検証結果が報告されています。

ここでは、
新たに2型糖尿病の治療を開始した145806名を対象として、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌の発症との関連性を検証しています。
観察期間中に622名の膀胱癌の患者さんが新たに診断され、
その全体での発症率は年間10万人当たり90.2件であったのに対して、
ピオグリタゾンを使用している患者さんでは、
年間10万人当たり121.0件で、
それ以外の治療薬を使用している患者さんと比較して、
1.61倍(1.22から2.19)有意にそのリスクは増加していました。
同系統の別種の治療薬で、
現在アメリカ以外では殆ど使用されていないロシグリタゾンでは、
例数は少ないのですが、
有意な増加は認められませんでした。

つまり、このイギリスの統計では、
矢張り僅かながら膀胱癌リスクの増加が示唆されました。

さて、前置きが非常に長くなりましたが、
今回の論文の話になります。

今回はヨーロッパのフィンランド、オランダ、
スウェーデン、イギリスの4カ国の医療データを用いて、
再びこの問題についての大規模な解析を行なっています。

対象となっているのは2型糖尿病でピオグリタゾンを使用開始した、
56337名の患者と、
同じ糖尿病でピオグリタゾン以外の投薬を受けている、
トータル317109名の患者さんで、
条件を調整した幾つかの比較を行なっています。

その結果、
多数例の解析において、
ピオグリタゾンを使用している患者さんと、
未使用の糖尿病の患者さん、
そして以前ピオグリタゾンを使用していた患者さんの、
いずれにおいても、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌の発症との間には、
有意な関連は認められませんでした、
またピオグリタゾンの使用期間や累積の使用量と、
膀胱癌のリスクとの間にも、
有意な関連は認められませんでした。

今回のデータは、
これまでで最もクリアに、
ピオグリタゾンの使用と膀胱癌のリスクとの関連性を否定したもので、
最近のデータの傾向をみると、
少なくともピオグリタゾンを、
膀胱癌との関連をもって、
適応の患者さんでも使用を控える、
という判断は、
あまり根拠のないものになりつつあるようです。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。
前の5件 | -
メッセージを送る